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第19話①、旅路の魔物

馬車が王都を離れてから、しばらくが経った。

窓の外には、見慣れた街並みに代わって、広々とした草原が広がっている。

遠くには山々が連なり、青い空の下を白い雲がゆっくりと流れていた。


「わぁ……!」


思わず声を上げると、向かい側に座っていたアルフォンス様がこちらに視線を向けた。


「どうしました?」

「見てください、アルフォンス団長! すごく綺麗ですよ!」

「……そうですね」


アルフォンス団長は窓の外を一瞥すると、再び手元の書類へと視線を戻した。

……反応が薄い。

こんなに綺麗なのに。


けれど、せっかくの景色を見逃すのはもったいない。

私は気を取り直して、再び窓の外を眺めた。

王都の外へ出ること自体は初めてではない。

それでも、こうして遠くまで旅をするのは初めてだった。


これから向かうのは、リュミエール王国。

私たちが暮らすアルセリア王国とは、文化も街並みも違うという。

どんな人たちが暮らしているのだろう。

どんな食べ物があるのだろう。

そして、どんな騎士たちがいるのだろう。

考えるだけで、胸が弾んだ。


「……イリスさん」

「はい!」

「窓から身を乗り出さないでくださいね」

「えっ。まだ何もしてませんよ?」

「今にも乗り出しそうな顔をしていました」

「そんなぁ!」


私は思わず頬を膨らませた。

アルフォンスは小さく息を吐く。


「先ほども説明しましたが、今回は外交任務です。観光に来たわけではありません」

「分かってます!」

「本当に?」

「……分かってます」


少しだけ声が小さくなる。

アルフォンスはそれ以上追及せず、書類へと視線を戻した。

私はそんな様子を見て、こっそりと笑った。

厳しい人だけれど、意地悪なわけではない。

むしろ、私のことを気にかけてくれているのだと分かっていた。

だからこそ、心配をかけないようにしなければ。


(よーし! 今回は絶対に怒られないようにしよう!)


私は心の中で、そう決意した。


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