第17話①、新しい任務へ
初任務から二か月ほどが経ち、私も騎士団での生活や日々の訓練に少しずつ慣れてきた。
あれから何度か魔の森への討伐任務に参加したけれど、初任務のようなイレギュラーな事態が起こることもなく、魔法師団との合同討伐もなかった。
そして、アルフォンス団長との個別稽古は、三日に一度のペースで続いていた。
「イリスさん。なかなか上達してきましたね」
「ほんとですか?!」
思わず顔を輝かせた、その瞬間。
カンッ!
「わっ?!」
アルフォンスの木剣が、私の木剣を鋭く弾いた。
突然の衝撃に耐えきれず、握っていた木剣が手から滑り落ちる。
カラン、と乾いた音が訓練場に響いた。
「あっ……!」
「ただ、まだ甘いですね。本番であれば、今の一瞬で命を落としていたかもしれませんよ」
「はい。すみません……」
しゅん、と肩を落とす。
褒められたのが嬉しくて、つい気が緩んでしまった。
「ふふっ。今日はここまでにしましょう。今日もお疲れさまでした」
「ありがとうございました!」
私は落としてしまった木剣を拾い、アルフォンスに頭を下げた。
アルフォンスは小さく頷くと、訓練を続けていた騎士たちに向き直った。
「皆さん。本日の訓練はここまでです」
「「「はい!」」」
団員たちは訓練の手を止め、素早く整列する。
「明日は早朝より、ヴィルヘルム総長から今後の任務について説明があります。
第1騎士団の会議室に集合してください。
また、今回は正式な任務に関する説明となりますので、正装で来るように」
「「「はい!」」」
「それでは、本日もお疲れさまでした」
団員たちは姿勢を正し、声をそろえた。
「「「ありがとうございました!」」」
こうして、一日の訓練が終了した。
「ノアー! おつかれさまー!」
訓練場の端にいたノアを見つけ、私は大きく手を振った。
「イリス! おつかれさま。今日もすごかったね」
「ほんと?! だんだん剣の扱いがうまくなってる気がして嬉しい!
まだまだ課題はあるんだけどね。
そういうノアも、剣術うまくなってるよね!」
「うん。そうなんだ。実は最近、エドガー副団長に稽古してもらってるんだ」
「エドガー副団長! いいねいいね!」
私は思わず満面の笑みを浮かべた。
エドガー副団長は、私が騎士団の入団試験を受けに来たとき、受付の場所を教えてくれた騎士だ。
面倒見がよくて、とても話しやすい。
副団長という立場なのに、いい意味で親しみやすく、まるで友人のように接してくれる人だった。
入団後は一か月ほど視察に出ていたため、再会できたのは初任務を終えた後だったけれど、今では訓練中にもよく声をかけてくれる。
「エドガー副団長って、教え方も上手そうだよね!」
「うん。分かりやすいし、苦手なところも丁寧に教えてくれるんだ」
「いいなぁ! 私も今度お願いしてみようかな!」
そんな話をしながら、私たちは訓練場を後にした。
「そういえば、明日の早朝からの話って何だろうね」
ふと思い出して、ノアに尋ねる。
「正装だからね。大事な話なんだろうけど」
「まさか?! 怒られる?!」
「ふふっ。どうだろうね」
「もー! ノアまでそんなこと言う!」
私が頬を膨らませると、ノアは楽しそうに笑った。
そんなノアを見ていると、私まで笑顔になってしまう。
騎士団に入ったばかりの頃は、毎日が初めてのことばかりで、緊張していた。
けれど、今は違う。
訓練は大変だし、任務では怖い思いをすることもある。
それでも、こうしてノアと一緒に寮まで歩く時間が、私にとってかけがえのないものになっていた。




