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ハズレと笑われたスキル『出会い』~ダンジョン配信中、異世界から猫耳少女が現れた~  作者: ななくさ ゆう


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第9話 ダンジョン踏破!「ボク、クートと一緒がいいニャ」

 女神の間を出て、俺たちは探索を再開した。

 トロールやリルラと出会った広間を抜け、さらに先へ。


『気をつけてくださいね。またレアモンスターやトロールが出てくるかも』


 はるるんさんの忠告に、リルラは気楽に笑った。


「ハハハニャ。レアモンスターなんてそんなに何匹も出るもんじゃないニャ。むしろ出てきたらラッキーニャ」


 たしかに本来はそうなんだけどな。

 しまったな。女神の間で、俺のスキルでレアモンスターが次々出現したことを話してなかった。


「リルラ、はるるんさんの懸念は本当なんだ」


 俺はリルラに自分のスキルについて説明した。


「なるほどニャ。もしレアモンスターが出てきたら、ボクがボコボコにやっつけてやるニャ」


 どうやら危機意識よりもワクワクが勝っているらしい。

 たしかにリルラは強いが、レインボースライムや虹武者に勝てるかというと微妙だろうなぁ。

 話していると、次の広間に到着した。

 その中央には青色のオーブが浮かんでいる。


 ふう、レアモンスターに襲われる前に見つけられて良かった。


「リルラ、念のため手を繋いで触ろう」

「わかったニャ」


 ダンジョンにパーティで入るときは、入り口のオーブに全員手を繋いで触れる。

 それがパーティであるという証になるのだ。


 今回、俺とリルラは極めて異例なことに、ダンジョン内で出会った。

 この場合、次の階層に一緒に行けるのか不安だ。

 少しでも一緒に行ける可能性が高いよう、ここは手を繋いでおいた方が良いと判断した。


 俺の右手をリルラの左手が握る。


「いくぞ、リルラ。もしはぐれたら自力でオーブを探してくれ。新宿ダンジョンは次が最終階層だから」

「わかったニャ。でも、手を繋いでいればクートと一緒に行ける気がするニャ」


 俺はうなずいて、オーブに手を触れた。


 そして……

 俺たちは手を握ったまま、はぐれることなく第3階層にワープした。

 第3階層は、第1階層と同じく洞窟型だった。

 ワープしたのは四角い部屋の真ん中。

 そして、俺のすぐ横に棍棒を持ったゴブリンがいた。


「グォ?」


 ゴブリンは一瞬動揺したそぶりを見せる。

 だが、動揺したのは俺も同じ。

 思わず棒立ちのまま腰のロングソードを抜こうとしてしまった。


 これは致命的なミス。

 相手はすでに武器を構えているのだから、剣を抜くよりもいったん距離を取るべきだった。

 ゴブリンの棍棒が俺を襲う。


「くっ」


 せっかく、レアモンスターやらトロールやらを倒したのに、こんな油断でゴブリンなんかにやられるのか!?


 だがその時、リルラがその素早さで動いた。

 ゴブリンに飛びかかり、その頭蓋骨をぶん殴る。


「ぐ、ゴォ?」


 それだけでゴブリンは黒い霧となって、小さな赤い魔石を残して消えた。


「大丈夫かニャ、クート?」


 俺はリルラのスピードを甘く見ていたかもしれない。

 女神の間まで追いかけっこした時は、本気じゃなかったんじゃないか?


「あ、ああ、助かったよリルラ」


 助かったのは本当だ。

 ゴブリンは雑魚モンスターと言われるが、それでも力任せの棍棒の一撃を喰らえば、人間の体は無事ではいられない。

 肋骨の1本や2本持っていかれたかもしれない。


「やっと1つ借りを返せたニャ」

「ああ、リルラ、強いな」


 リルラはちょっと得意げな顔になった。


「えへへへ、クートほどじゃないニャ」

「いやいや、俺よりスピードが速かったよ。それに、無手でその威力だし」

「ニャハハ。ボクは武器を使うの苦手ニャ。剣術ならクートには勝てないニャ」


 その後、俺たちは第3階層を探索した。

 途中、ゴブリンの群れに出くわしたり、ブルースライムが20匹同時に襲いかかってきたりしたが、俺とリルラの敵ではなかった。

 幸いと言うべきか、強敵やレアモンスターに会うこともなく、俺たちは緑色のオーブを見つけることができた。

 緑のオーブはダンジョン最深部のオーブ。つまり、これに触ればダンジョン踏破だ。


 俺がオーブに触れようとすると、はるるんさんが待ったをかけた。


『ちょっと待ってください』

「なんですか?」

『このままダンジョンを踏破したら、リルラさんはどうなるのかなと思って』


 言われて俺は気づく。


「新宿ダンジョンの出口に行くのか、それともチロルロの谷とかいう場所に戻るのかってことですか?」

『はい』


 正直、それは判断できない。

 それどころか……


「実は異世界転移したのは、俺の方だったなんてことはないですよね?」


 可能性は低いが、このオーブに触れたら、リルラだけでなく俺まで異世界に行ってしまうのではないか。


『それはありえないです』


 はるるんさんが断言した。


「なぜですか?」

『私とこうして話せているからです。さすがにマホメラやマホレットを通じて異世界のダンジョンと交信できるとは思えません』


 なるほど。

 そうなると、やはり問題はリルラの方。


「ボク、これに触ったら元の世界に戻っちゃうのかニャ?」

『その可能性もあるかと』


 リルラは俺にしがみついた。


「いやニャ、いやニャ、いやニャ! ボク、クートと一緒がいいニャ」


 そう言われてもな。

 こればっかりはやってみないと分からない。

 というか、そもそも……


「リルラ、元の世界に戻れなくて良いのか?」

「奴隷でいるより、クートと一緒がいいニャ」


 たしかに、元の世界に戻ったらまた奴隷生活だもんな。


 とはいえ、いつまでもこうしてはいられない。

 食料はそこまで豊富に持ち込んではいないのだ。

 1日ならともかく、それ以上は無理だ。

 それに、またいつ強力なモンスターに襲われるかも分からない。


「リルラ、きっと大丈夫。一緒に新宿に行けるさ」

「本当かニャ?」

「分からないけど、そう願って一緒にダンジョンをクリアしよう」


 リルラはこくんとうなずいた。


「わかったニャ。クートを信じるニャ」


 そして、俺とリルラはオーブに触れた。

 目の前が白い光に包まれる。

 その時、はるるんさんの声がした。


『あ、ちょっと待ってください。ダンジョンから出るならもう一つ問題が……』


 その言葉は、途中でかすれて消えた。




 目を開けると、そこは新宿ダンジョンの入り口がある地下50階の部屋だった。

 他に人はいない。


 そんなことよりリルラは!?

 横を向くと、はたしてそこにはかわいい猫耳少女がいた。

 よかった、一緒に戻って来られたんだ。


 リルラ側も、俺が隣にいることを確認したらしい。

 飛び上がって俺の胸に抱きついてきた。


「クート、よかったニャ、一緒だニャ」

「ああ、良かったな」


 俺はリルラの頭をなでなでしてやった。

 リルラの猫耳に初めて触ったが、柔らかくて気持ちいいなぁ。


 だが。


「ダメだニャ。耳は触っちゃいやニャ」

「え、そうなのか?」

「ボク、耳は弱いニャ。あ、ああぁん、くすぐらないでほしいニャ」


 別にくすぐったつもりはないんだが。

 そんなことをしていると、はるるんさんの声がした。


『リルラさん、ダンジョンの外でも言葉が通じるんですか?』

「なにかおかしいかニャ?」

『だって、スキルはダンジョンの外では無効のはずでは』


 あっ。

 たしかにそうだ。

 リルラの『自動翻訳』も普通に考えれば効果がないはずだ。


「うニャァ、そういえば……」

「どういうことだろうな」


 3人でうんうん悩んだが、結局リルラの一言で収まった。


「ま、便利だからいいニャ」


 たしかにその通り。 

 エルバランスの女神がくれた特別なスキルだからということにしておこう。


 ともあれ、これにてダンジョン初制覇だ!

 色々とイレギュラーがありまくったが、めでたいことに変わりはない。


『空斗さん、おめでとうございます』

「はい、ありがとうございます。はるるんさんのおかげです」

『私は何もしていませんよ。空斗さんとリルラさんのお力です』


 たしかにはるるんさんが戦ったわけでも、探索したわけでもない。

 だが、有用なアドバイスをたくさんしてもらえた。

 感謝してもしきれない。


『すみません。私、そろそろ宿題をしないと』


 宿題ってことは、はるるんさんは学生なんだろうか。


「わかりました。今日はありがとうございました」

『いえいえ。あとで私のSNSアカウント送りますから、よかったらご連絡ください』

「もちろんです。そちらからもご連絡いただけると嬉しいです」

『はい!』


 こうして、はるるんさんとの通信が切れた。

 俺は宙に浮かんだマホメラを回収した。


(ダンジョンから出たし、これもはずすか)


 俺は虹色の腕輪をはずそうとしたが、どうやっても無理だった。

 ひょっとして、ガチで呪いのアイテムなんじゃと一瞬思ったが、まあ害はないようなので、よしとしておこう。ちょっと目立つけど。

拙著をお読みいただきありがとうございます。

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本作はカクヨムにて先行配信中です。続きが気になる方はカクヨムにも是非おいでください。

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