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ハズレと笑われたスキル『出会い』~ダンジョン配信中、異世界から猫耳少女が現れた~  作者: ななくさ ゆう


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第10話 金酔再び!「まさか、ダンジョンに行こうっていうんじゃないだろうね?」「もう踏破したけど?」

 新宿ダンジョンを踏破し、地下50階の部屋に戻ってきた俺たち。

 あたりには誰もいない。

 俺はエレベーターへと向かった。


「行くぞ、リルラ」

「行くって、その扉の向こうにかニャ?」

「えーっと、まあ、そうだけど。あ、ひょっとしてエレベーターって知らない?」

「知らないニャ」



「えーっと、ここは地下50階で、エレベーターに乗って地上まで運んでもらう必要があるんだ」

「????? まだダンジョンから出られてないってことかニャ?」

「いや、そういうわけじゃないんだけど……」


 これは説明するよりも、実際に乗った方がはやいヤツだな。

 俺はエレベーターのボタンを押した。

 エレベーターが1階から降りてくる。


 扉が開く。

 俺は目を見開いた。


「金酔!」


 なんと、扉の先にはイヤミ金持ち金酔と、屈強な男たちが3人いた。

 金酔は相変わらずのニヤニヤ顔で言った。


「おやおや、『出会い』くんじゃないか。こんなところで何をしているんだね? まさか、ダンジョンに行こうっていうんじゃないだろうね? やめときたまえ。キミのスキルじゃゴブリンに殴り殺されるのがオチさ」


 うわぁ、相変わらずの上から目線だ。


「あいにくと、もうダンジョンを踏破してきたところだよ」

「なに?」


 金酔は疑わしげに俺の目をのぞき込んだ。


「本当かい? 君ごときがもうダンジョンを踏破したなど、とても信じられないな」

「本当さ。これを見ろよ」


 俺は右腕に装備した虹色の腕輪を、金酔につきつけた。


「なんだい、それは?」

「レインボースライムの落とし物(ドロツプ品)さ」


 金酔はすこしだけ驚いた顔をしてから、すぐにまた笑い出した。


「はっははは。これは面白いことを言うな。レインボースライムなんてモンスターは聞いたこともない。嘘を言うならもう少しましなことを言いたまえ。どうせならゴールドメタルスライムを倒したとかさ。ま、それも十分嘘くさすぎるが」


 こいつ!

 とはいえ、たしかにいきなり未確認レアモンスターを倒したなどと言われても、信じられないと考えるのは普通か。

 などと思っていると、リルラが叫んだ。


「お前、なんなんだニャ! クートに向けてなんて口をきくニャ!」


 リルラは今にも飛びかからんばかりだ。

 金酔はリルラをじろっと見た。


「ううん? なんだね、キミは? なぜ子どもがこんなところにいるんだい?」

「誰が子どもだニャ!?」


 いや、子どもというのは間違ってないだろ。

 金酔はリルラの猫耳を引っ張った。


「そんな猫耳のカチューシャをつけて、ニャニャニャって。コスプレのつもりかい?」


 リルラが悲鳴を上げる。


「ニャ、やめるニャ! いたた、痛いニャ!」


 俺は金酔をにらむ。


「やめろ、金酔!」


 俺がとめても、金酔はリルラの猫耳を触って遊ぶ。


「なんだこれ、カチューシャじゃないのか? どうなっている?」

「ニャニャ、ダメニャ。耳はダメなんだニャン!」


 リルラは我慢の限界とばかりに叫んだ。


「いい加減にするニャン!」


 飛び上がり、金酔の顎をジャンプキック。

 見事に決まった!


 ダンジョン外なので『素早さUP』も『瞬発爆蹴拳』も発動していないが、それでもリルラは強かった。


 っていうか、素で1メートルくらい飛び上がらなかった!?

 この子、スキルとかなくても普通に強いんじゃ……


「ぐがぁ……」


 金酔はそのまま倒れ込んで気絶してしまった。

 男たちが慌てた様子で金酔を介抱する。


「坊ちゃん!」

「大丈夫ですか!?」

「くそ、ダンジョンに入る前にこんな」

「金酔副大臣になんと弁解すれば……」


 どうやら、男たちは金酔の父親の部下らしい。

 男たちは金酔を抱えて、エレベーターに乗り込んだ。


 金酔のヤツ、大丈夫かな?

 さすがに死にはしないと思うが……

 ま、いいか。俺もムカついたのは事実だし。

 エレベーターの扉が閉まり、金酔たちを乗せて1階へと向かった。

 リルラが俺に言った。


「よかったのかニャ?」

「何が?」

「扉しまっちゃったニャ」


 ああ、たしかに。


「いいさ。あいつらと一緒にエレベーターに乗りたくもないし」


 俺はもう一度エレベーターのボタンを押した。




 エレベーターの中に入ると、リルラは物珍しげに辺りを見回した。


「なんだか、すんごい狭い部屋だニャ、これからどうするニャ?」


 1階のボタンを押すだけだ。

 エレベーターが動き出すと、リルラがおびえて俺の体にしがみついた。


「な、なんだニャ!? 部屋が揺れてるニャ!? 体が押し潰されそうだニャ。なにかの罠かニャ!?」


 ふむ。中々にテンプレなカルチャーショック反応だ。

 猫耳までシュンとちぢまって、なんともかわいい。


「心配するなって。地上まで運んでくれる乗り物だから」

「の、乗り物?」

「そ、もうすぐ着くぞ」


 エレベーターが止まり扉が開くと、新宿区役所の1階に到着した。


「な、なんだニャ!? 転移したのかニャ!? 扉の向こうが全然違う世界ニャ!?」


 エレベーターだけでこの様子。

 リルラにとっては見るもの聞くもの、初めてづくしの世界だろうからなぁ。

 ここから先のカルチャーショックに耐えられるのだろうか。

 今さらだが、色々心配になってきたぞ。


「行くぞ、リルラ」

「う、うんニャ。ここ、本当にクートの世界なのかニャ?」

「もちろんだとも」


 俺はあたりを見回す。

 金酔たちはいないようだ。

 なんとなくホッとする。

 もう一度あいつらと顔を合わせるのは、なんとも気まずいからなぁ。


 ついでにいえば、他の客もいない。

 時計を見れば午後9時を回っている。

 役所はとっくに閉所した時間だ。


 ダンジョンへのエレベーターのみ使える状況らしい。

 1階からエレベーターに乗るには、探索者免許をかざす必要があるから問題ないということだろう。


 俺も夜に来れば良かったかな。

 そうすれば、例の『ですが……』ばかりの受付係とうざったい会話をする必要もなかった。




 さてどうするか。

 できれば魔石の換金をしておきたいが、この時間じゃ無理か。

 虹の魔石を鑑定してもらうためには、それなりの店に行く必要があるかもしれない。


「クート」

「なんだ?」

「これから、ボクどうしたらいいニャ?」

「え、どうしたらって……」

「この世界にボクの住むところあるのかニャ?」


 ああ、たしかにそれは問題だよなぁ。

 冷静に考えれば、日本ではリルラは無国籍児だ。

 不法入国者扱いされても仕方がない。

 いや、不法入世界者というべきか。


 しかも猫耳の獣人だ……ついでにいえば人間の耳はない。

 金酔はカチューシャかと思ったらしいが、よく見れば違うと気づかれるだろう。


 あと、服装もな。

 ぼろきれを巻き付けたような服で、女の子が外をうろつくのもまずい。


(さて、どうしたものか)


「住む場所は心配するな。俺の家に住めばいい」


 立川にある死んだばあちゃんの家は俺が受け継いでいる。

 相続税を払うだけで大変だったが、ばあちゃんはそこも俺が困らないようにへそくりを遺してくれていた。


「わかったニャ」

「それよりも……」


 猫耳をどうするかだな。


 俺はリュックからマホレットを取り出し、MAPアプリを開く。

 近くの服屋は……さすが新宿、すぐ近くに古着屋がある。

 俺は区役所を出て、古着屋に行くことにした。


 夜とはいえ、区役所の外は人通りが多い。

 役所からちょっといけば歌舞伎町の飲み屋街だ。

 リルラはキョロキョロと辺りを見回す。


「うニャ、人がいっぱいだニャ。クンクン、なんか良い匂いと酒の臭いがするニャ」

「リルラ、俺から離れるなよ」

「うんニャ、絶対に離れないニャ」


 リルラは俺の手を握った。

 ちょっと震えている。

 見たこともない世界にやってきたのだから当然か。


「この道、どうなってるニャ? 石畳とも違うニャ。真っ平らだニャ」


 どうやらアスファルトも珍しいらしい。


「騒ぐなって。アスファルトだよ」

「あすふぁると?」

「目立つから静かにしてような」

「……わかったニャ」


 いくら眠らない街新宿とは言え、昼間よりは夜のほうが暗い。

 人通りはあるが、酔っ払いも多くリルラの猫耳はバレていないようだ。

 だが、新宿駅近辺に行ったり、まして電車に乗ったりすればそうもいかないだろう。


「えっと……古着屋は……あったあった、ここだ」


 よかった。

 この時間でも営業していた。


「ここ、服屋さんかニャ?」

「そうだよ。厳密には古着屋」

「へぇ……なんでこんなところに来たニャ?」

「リルラの服を買うために決まってるだろ?」

「え、ボクに服を? 本当かニャ?」


 リルラは大喜びだ。


「さすがにそのボロ着で街は歩けないからな。あと、猫耳を隠さないと」

「うんニャ? 猫耳はまずいのかニャ?」

「この世界に獣人はいないからな」


 今、この瞬間も店員に見とがめられる可能性もあった。

 だが、この店には客がおらず、店員は1人で暇そうにレジ横に座ってスマホを眺めている。ひどい接客態度だが、俺たちにとってはラッキーだった。


 しかし、この店は大人用の服ばかりだな。

 リルラの背丈には合いそうもないが……まあ、リルラも幼児じゃないし、少し大きめでも大丈夫か。


 俺はフード付きの黄色い洋服を手に取った。

 これでいいか。

 俺はレジに洋服を持っていった。

 店員はめんどくさそうにしながら、バーコードをスキャンした。


「2200円っす」


 リルラの姿も店員の目に入ったはずだ。だが金酔と同じく猫耳はカチューシャかなにかだと思ったようだ。人間の耳がないのは気づかなかったか。


 俺はリルラを店の外に連れ出した。


「じゃあ、リルラ、これ着て」

「ボクがこんな立派な服を着てもいいのかニャ?」


 いや、2200円の古着なんだけどな。


「いいから。早く。フードもかぶって」


 リルラは服を着て、フードをかぶった。


「なんだか耳が変なかんじニャ。フードはとっちゃダメかニャ?」

「ダメ。何度も言うようだけど、この世界でその耳はまずいから」


 正直、異世界からやってきた獣人が、この国でどう受け入れられるか俺にも分からない。

 案外あっさり受け入れられるかもしれないし、あるいはモンスター扱いされるかもしれない。

 少なくとも今日のところは猫耳を隠しておいた方が良いだろう。


……と、そこまで考えて気づいた。


 俺、世界一の配信者になりたいんだよなぁ。

 でも、今日撮影した映像、再配信できなくね?

 だって、配信したらリルラの正体とか、異世界転移とかそんなことも全世界にばれちまう。

 っていうか、今日の同接がはるるんさん1人だけだったの、むしろラッキーだったんじゃね?


 いずれにしても、今後のダンジョン探索配信にリルラを連れていくのは無理だろう。

 彼女は探索者免許を持っていない。

 それに、俺のスキル『出会い』の問題もある。

 もし、本当にスキル効果の1つが、強力なレアモンスターを呼び出すことだったら。

 リルラを連れてダンジョンに行ったら彼女を危険な目にあわせかねない。


 それにリルラの年齢的には小学校か中学校に通わせるべきでは?

 いや、さすがにそれは無理か。

 このまま大人になったらリルラはこの世界でどうやって生きていくんだ?

 無国籍児のままというわけにはいかないだろうし……


……と、まあそんなことをグルグルと考えていたのだが。

 リルラが言った。


「どうしたニャ、クート。なんか怖い顔して立ち止まっちゃって」

「何でもないよ。とりあえず、耳は隠すようにしておいて」

「わかったニャ」


 今はあまり深く考えても仕方がないだろう。

 あとではるるんさんに相談してみよう。

 もっとも、はるるんさんにもリルラの戸籍なんてどうにもできないと思うが。




 大通りに出るなり、リルラが叫んだ。


「な、なんだニャァァ!? 鉄の塊がすごいスピードで走ってるニャァァァ」

「アレは自動車だよ。魔石のエネルギーを電力に変えて走るんだ」


 ダンジョンから魔石が取れるようになる前、自動車はガソリンとかいう液体で走っていたらしい。

 だが、今の自動車は魔石のエネルギーを電気に変換して走る。

……といったようなことを考えると、ちょっと気になることもあるな。


「リルラの世界では魔石をどう利用していたんだ?」


 どうも、話を聞いている限り、俺たちの世界ほど文明が発達していない様子だが。


「知らないニャ。ボクらは魔石を集めてこいって言われただけニャ。けっこうな金額で売れるみたいだけど、ボクにはよくわからないニャ」


 ふむぅ。

 まあいいか。

 このあたりは人通りも多い。

 誰も聞いていないだろうが、異世界云々の話をあまりしない方が良いかもしれない。


 その時。


 ぐぅぅぅ……


 俺とリルラのお腹が同時に鳴った。


「とりあえず、飯にするか」

「え、ご飯食べられるのかニャ?」

「ああ、あんまり高いのは無理だけど、あそこのファミレスに入ろうか」

「ふぁみれす?」

「レストラン、食堂って言えば分かる?」

「うん、わかるニャ。でもリルラお金ないニャ。食い逃げするのかニャ?」


 いやいやいや。

 さらっと犯罪に誘わないで!


「金なら俺が持っているから大丈夫だよ」


 といいつつ、実はかなり厳しいんだよなぁ。

 今夜の食事代くらいはなんとかなるが。

 今日手に入れた魔石――とくに虹色の魔石が高く売れると良いなぁ。


 そんなことを思いつつ、俺はリルラの手を引き、商業ビル2階のファミレスへと向かった。

拙著をお読みいただきありがとうございます。

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本作はカクヨムにて先行配信中です。続きが気になる方はカクヨムにも是非おいでください。

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