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ハズレと笑われたスキル『出会い』~ダンジョン配信中、異世界から猫耳少女が現れた~  作者: ななくさ ゆう


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第5話 エルバランスの女神「何百年も前に私たちは出会いました」

 女神はにっこりとほほ笑みながら言った。


「ようやく出会えましたね。クート様」


 クート様とは俺のことか?


「ええ、その通りです」


 !?

 心を読まれた?


「はい、私には人の心を読む力があります」


 貴女は一体?

 うん? 声が出ないな。

 俺の方は心の声で対話するしかないのか?


「申し訳ありませんが、そうなります」


 それで、貴女は一体?


「今のクート様にはわからないでしょう」


『今の俺』とはどういう意味だ?

 未来の俺には分かる?

 あるいは過去の?

 しかし、俺には、虹色の腕輪の記憶も、目の前の女神の記憶もない。


「そうですね……まずは私の名前からお伝えしましょう。私はエルバランスの女神。貴方と再び出会う時を、ずっと待っていた者です」


 再び……その言い方はまるで過去に出会ったことがあるかのようだ。

 俺がそう考えると、エルバランスの女神はスッと寂しそうに視線を下に向けた。


「ええ、そうですよね。今のクート様が私を覚えているはずがありません」


 俺は貴女と会ったことがあると?


「そう、その通りです。ずっと昔、何百年も前に私たちは出会いました」


 そう言われてもな。

 そもそも俺は18歳の誕生日を迎えたばかりだ。

 何百年も前のことなんて知らん。


 エルバランスの女神は寂しそうに言った。


「今はそれでかまいません。とても寂しいですが、それこそ私たちが選んだ運命なのですから」


 うーん、運命ね。

 と、そこまで話して気がついた。


 そういえばはるるんさんはどうしたんだ?

 こんな超常現象が起きているのに何も言わないなんてあの人らしくない。


 それから別のことにも気づいた。

 エルバランスの女神に気を取られて油断しまくっていた。

 ここはダンジョンの中。いつモンスターが現れてもおかしくないのに。


「今は時間を止めていますから、私以外とのお話はできません。モンスターが出現することもありません」


 時間を止めている!?


 俺は慌てて辺りを見回した。

 ここは間違いなく、レインボースライムを倒した洞窟の中のままだ。


 だが何か変だ。

 たとえば、そうマホメラが全く動いていない。

 俺が立ち止まっても、マホメラはゆらゆら空中で揺れているはずなのだが。


 マホメラが揺れないのも、はるるんさんが話しかけてこないのも、新たなモンスターが現れないのも、エルバランスの女神が時間を止めているからということか?


「そういう認識で間違っていません」


 とんでもない話だな。

 それで、俺の前に現れた貴女は何がしたいんだ?


「まずはクート様。貴方に祝福を」


 エルバランスの女神がそう言うと、俺の額に唇を近づけた。

 って、おい、なにを!?


「ご安心ください」


 いや、何を安心しろと!?

 俺がよける間もなく、エルバランスの女神は俺の額に接吻した。


 その瞬間、俺の全身が熱くなる。

 いや、美女にキスされてほてったとかいう意味じゃなくて。

 何か、力がわいてくるような不思議な感覚だった。


 それだけじゃない。

 レインボースライムの『豪炎』で焼かれた手足の傷が癒えていく。


 一体これは?


「傷を癒やすと同時に、クート様本来の力の一端を解放しました」


 本来の力?

 

「ああ、ごめんなさい。もうこれ以上時間を止めていられません。ですが、これだけはお伝えしておきます。クート様、貴方はこの後様々な『出会い』を体験するでしょう」


『出会い』はレアモンスターで出会うスキルじゃないのか?


「それはスキルの効果のほんの一端。これからもっと、もっと大切な出会いがあるでしょう」


 そこまで言ったとき、エルバランスの女神の姿が薄く透明になっていく。

 女神の瞳から涙が流れる。


「ああ、今はこれが限界です。ですがクート様、貴方と再び出会えて良かった」


 そこまで言うと、エルバランスの女神の姿は完全に消えた。

 そして……




 マホレットから聞こえる機械声が俺を現実に呼び戻した。


『空斗さん! 空斗さん! 大丈夫ですか!?』

「あ、はるるんさん。どうしました?」

『「どうしました?」はこっちのセリフです。その腕輪を装備したと思ったら、ボーッとつっ立ったままになって』


 なるほど。

 はるるんさんから見るとそうなるのか。


「俺は何分くらいボーッとしていましたか?」

『ほんの数秒ですけど』


 そうか、時間を止めたと言っていたもんな。

 それにしては、むしろ数秒経っている方が妙な気もするが……そこら辺は何らかのタイムラグがあるのだろうか。


『それで、大丈夫なんですか?』

「ええ、まあ」

『その腕輪、なんなんでしょうか? レアモンスターが落としたくらいですから、ただの装飾品ではなく、何らかの効果がありそうなものですが』

「どうでしょうね」


 俺は曖昧に答えるしかなかった。

 腕輪の力で女神様に会ったなどと言っても信じてもらえないだろう。

 エルバランスの女神の姿は、マホメラごしには見えなかったようだし。


「とりあえず、先に進もうかと思います」

『ですが、火傷もひどそうですし、いったん女神の間に戻ることも検討された方が良いかと』


 はるるんさんは俺を心配してくれているようだ。

 だが、問題はない。


「大丈夫、火傷は治りました」

『え、回復薬系(ポーシヨン)のアイテムでも使ったんですか? いつの間に?』


 俺はそれには答えなかった。

 答えようがなかったとも言うが。

 女神様に接吻されたら治ったなどと言っても、信じてもらえるわけがない。


『ですが、再びレアモンスターが現れるかもしれません。気をつけてください』

「はい、もちろんです」


 俺はうなずいて、次の通路へと進んだ。

 しばらく歩くと、ガシャン、ガシャンと音がした。

 目の前に現れたのは鎧のモンスター。

 だがただの鎧武者ではないことは一目瞭然だった。


『虹色の鎧武者!?』


 そう、鎧が虹色に輝いていた。

 通常の鎧武者はもちろん、上位種でもこんなヤツは聞いたことがない。


『まさか、またしても未確認のレアモンスター!?』


 俺はロングソードを構えた。


(やっぱりか)


 ロングソードがやたらと軽く感じる。

 エルバランスの女神の祝福を受けてから、ずっと感じていたことだが俺の力が何倍にもなっている。


(大丈夫、これなら……)


 虹色の鎧武者……虹武者と名付けるか……が一気に距離を詰めてきた。


 速い!

 目算だが人間の短距離走世界一よりも速いかもしれない。

 武者系のモンスターは上位種でも動きはのろいと決まっているのに。


 だが、そのスピードすら、今の俺には遅いと感じる。


(大丈夫。今の俺なら……)


 虹武者は俺の脳天へと斬りかかる。

 だが、俺は余裕を持って、鎧武者の剣をロングソードで受け止めた。


 たしかにこいつはめちゃくちゃ強い。

 間違いなくレアモンスターだ。

 スピードもパワーも、さっきまでの俺では勝てなかった。


「だがな!」


 俺は虹武者の腹を蹴飛ばす。

 それで、虹武者は仰向けに床に転がった。


 虹武者は再び立ち上がろうとするが、俺はそれを許さない。

 ヤツの腹を右足で踏み、動きを封じた。


「悪いな」


 俺は虹武者の顔面にロングソードを叩き込んだ。

 虹武者はそれで、黒い霧となって消えた。

 後に残されたのは拳くらいの大きさの、虹色の魔石のみだった。


『……あまり強くなかった……いいえ違う。空斗さんの強さがさっきまでとは……その腕輪、強化系(バフ)の効果があるんでしょうか?』

「たぶんそうですよ」


 俺は適当に笑っておいた。

 必ずしも間違いとまでは言えないしな。


『それにしても、空斗さんの『出会い』は本当にレアモンスターと出会うスキルなんですね。ものすごい効果ですが、危険ですよ。次はどんなレアモンスターが現れるか……』


 たしかにその通りだ。

 だが、相手が虹武者ならば、負けはしない自信がある。

 レインボースライムだって『豪炎』を使わせる前に叩き切れるだろう。

 そう確信できるほどに、俺はパワーアップしていた。


(本来の力か……何百年も前の出会い。エルバランスの女神とは一体?)


 疑問はつきないが、俺は通路を歩き次の部屋へと向かった。

 その道中、俺ははるるんさんに言った。


「正直、複雑な気分ですよ」

『何がですか?』

「これでも俺は剣術訓練で人一倍努力してきた自負があります」

『ええ、それはわかります』

「それを、スキルだけであっさり追い抜かれたり、腕輪の効果であっさりパワーアップしたり……これまでの修行は何だったんだろうとも思います」


 実際には腕輪の効果ではなく、女神の祝福だが、それは同じようなものだ。

 自分の5歳の時にダンジョン配信者を志して以来、13年間のの努力を否定されたような気になってしまう。


『何を言ってるんですか。ゴブリンの群れやレインボースライムを倒したのは間違いなく、空斗さんの努力のたまものじゃないですか』

「それはそうですけど」


 はるるんさんは俺を励まし続けてくれた。


『私は初心者ウォッチャーです。これまで何組もの初心者パーティを見守ってきました。ですが、スキルも無しに空斗さんほど剣術を身につけている探索者なんて見たことがありません』

「ありがとうございます」


 これ以上はるるんさんに愚痴を言っても仕方がない。

 さらに歩くと、次の部屋に着いた。

 その中央には青いオーブが浮かんでいた。

拙著をお読みいただきありがとうございます。

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本作はカクヨムにて先行配信中です。続きが気になる方はカクヨムにも是非おいでください。

https://kakuyomu.jp/works/2912051599701581010

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