第4話 レアモンスターとの遭遇!スキル『出会い』はチートで呪い!?
虹色のスライムにロングソードを向けながら、俺は自分が興奮するのを抑えられなかった。
(未確認のレアモンスターか)
ゴールドメタルスライムですら、100回ダンジョンに来て1回見つかればラッキーとされる。
ましてや、未発見のレアスライムとは!
ともあれ、本当に未発見なら発見者に名付けの権利がある。
「そうだな……レインボースライムとでも名付けるか」
などと言っている場合じゃなかった!
レインボースライムはすさまじいスピードでこちらに襲いかかってきた。
(まずい! よけられない!)
レインボースライムは飛び上がり、俺の顔面を強打する。
「ぐ、ぐふぁ!!」
俺の鼻血がダンジョンの床に飛び散る。
不意打ちとは言え、この強打。
油断できる相手じゃない!
『空斗さん、逃げてください!』
「いやです!」
ここで逃げ出すようじゃ、世界一のダンジョン配信者になんてなれない!
逃げ惑うだけの配信者なんて誰も見たくないだろう。
レインボースライムはこちらとの間合いを計るようにいったん後ろに下がった。
『ですが空斗さん、レアモンスターというのは……』
言われなくても分かっている。
レアモンスターを倒せば報酬は大きい。
魔石もそうだし、レアアイテムを落とすこともある。
だが、それだけにレアモンスターは強い。
今の一撃だけでも分かる。
ブルースライムやゴブリンなんかとは比べものにならない。
だが。
「そもそも、逃げられませんよ」
あのスピードだからな。
背を向けたら、それこそ終わりだ。
『それはそうかもしれませんが、しかしっ!』
と。
その時だった。
レインボースライムの口が開き、赤く輝いた。
(ヤバイ!)
反射的に、俺は横に飛び退いた。
理屈じゃない。
本能が体を動かした。
真っ赤な光と、強力な熱が渦巻く。
(なんだ?)
直前まで俺がいた場所をチラっと振り返る。
床が溶岩のように真っ赤に溶けていた。
「うそだろ……」
『多分、『火炎』……いえ『豪炎』の魔法です。それも極めて高レベルな』
「ばかなっ」
そもそも、魔法を使えるスライムなんて聞いたこともない。
ゴールドメタルスライムですら、攻撃方法は体当たりだけのはずだ。
(まずい、こちらに遠距離攻撃はない)
『油断できる相手じゃない』なんてレベルじゃなかった!
俺の力じゃ勝てるかどうか。
今は魔法を使った直後でおとなしいが、すぐに動き出すだろう。
離れて戦っていたら、ジリ貧……いや、そもそも次の一撃をよけられる自信もない!
俺はレインボースライムにかけよった。
(動き出す前に倒す!)
だが、一瞬遅かった。
ロングソードを叩きつけようとしたが、素早い動きで躱されてしまう。
「くっ!」
レインボースライムの反撃。
俺の腹に体当たり!
「ぐ、ふっ」
マジでキツイ。何発も食らったら、あばら骨の1本や2本折れてもおかしくない威力だ。
いったん距離を取りたいが、魔法を使わせるわけにもいかない。
(どうする?)
そもそも攻撃が当たったとしても、スライムに物理攻撃は効きにくい。
中心部にあるコアを叩かない限り、スライムのアメーバ状の体は攻撃を無効化してしまうのだ。
とはいえ、一般的にスライム系はそれほど怖い相手ではない。
グリーンスライムもブルースライムも、動きは鈍いし、体の中の赤いコアが透けてみえるからだ。
ゴールドメタルスライムになると、すさまじいスピードで動くためになかなかの強敵だが。
(その上、強力な魔法を使われては……)
やはり、俺なんかがソロでダンジョンに潜るのは無茶だったのか?
スキル鑑定士や担任教師が言ったとおりなのか?
金酔のあざ笑う顔が頭の中に浮かんだ。
アイツに笑われたまま、こんなところで朽ち果てて良いのか?
いや。
だめだ。
諦めるもんか。
俺はまだ何も成してないんだぞ。
(負けてたまるか!)
実は、スライム系統には明確な弱点が存在する。
一応、アレはもってきてる。
スライム相手の必殺武器。
お値段めちゃ安、近所のコンビニかスーパーマーケットでも買えるモノだ。
『空斗さん、お塩を持ってこなかったんですか!?』
そう、物理のみでスライムを楽に倒すならその一択だ。
一握りの塩をぶっかければ、ブルースライムはもちろん、ゴールドメタルスライムだって水分を失って干からびる。
あとは残ったコアを潰すだけの簡単なお仕事だ。
「持ってきたけど、リュックから取り出すスキがないんです」
バカバカしい話だが、それが事実だ。
本来新宿ダンジョンにでるスライムはブルースライムとグリーンスライムのみ。
それなら、剣だけで倒す自信があった。
塩を持ってきたのはあくまで念のため。
リュックの奥にしまい込んでしまったのだ。
相手のスピードがこれじゃあ、リュックの中を探る暇すらない!
かといって、距離を取ればさっきの『豪炎』で焼き殺されるだろう。
(どうする? どうしたらいい?)
塩を取り出すのは無理。
ならばコアを叩くしかない。
ヤツのコアはどこだ?
虹色に輝くレインボースライムは、コアの場所が分かりにくい。
だが、それでもよく見れば中心部に赤いコアがあった。
(ただ、斬るんじゃダメだ)
それではまた躱されてしまう。
(なら、やるしかないか)
リスクは高いが、このままジリ貧よりはマシだ。
俺は後ろにジャンプして距離を取った。
『空斗さん!? 距離を取ったら……』
分かっている。ヤツはまた『豪炎』を使ってくるだろう。
事実、ヤツの口が開き、赤く輝く。
(今だ!)
俺はロングソードの切っ先をレインボースライムに向けた。
レインボースライムは再び『豪炎』を放ってくる。
『空斗さん!』
俺は左に飛び退く。
右腕と右足が焼ける。
だが、他は無事だ。
俺はロングソードをレインボースライムに向け投擲!
レインボースライムのコアを叩き潰した。
ヤツは黒い霧となって消えた。
「ふう、上手くいった」
俺はへたり込んだ。
右足と右手がめちゃくちゃ痛い。
重傷とまではいかないが、結構な火傷を負ってしまったようだ。
レインボースライムは魔法を使ったあと、わずかだが動きを止めるようだった。
なので、そのスキを狙ったわけだが。
やっぱり『豪炎』をよけきれなかったか。
とはいえ、他に手段が思いつかなかったのだから仕方がない。
ロングソードがはずれて武器無しになるとか、もっと単純に『豪炎』が直撃するとかしてもおかしくなかったのだから、この結果は上々なのだろう。
だが。
俺はゆっくり立ち上がった。
「痛っ!」
『大丈夫ですか、空斗さん!?』
「はははっ、痛いです」
『無茶ですよ』
「無茶しないと勝てそうもなかったので」
『そこ、本当に新宿ダンジョンの第一層なんですか?』
「はい。まちがいありません。まさかあんな超レアモンスターに出会うとは思いませんでしたよ」
受付係にはああ言われたが、俺だってバカでも自殺志願者でもない。
新宿ダンジョンに出現するモンスターはちゃんと調べてきた。
その結果、俺の剣術で対処できる相手しかいないと判断して来たのだ。
……スキル鑑定結果や金酔のこともあり、ヤケクソだったのは否めないが。
『空斗さん、今なんて言いましたか?』
「え、ですからここは新宿ダンジョンの第一階層に間違いないと言いましたが」
『そこじゃありません、そのあとです』
そのあと?
「超レアモンスターと出会うとは思いませんでした、と」
『それです!』
「うん? 何がですか?」
『きっとそれが、空斗さんのスキルですよ』
俺のスキル?
『出会い』とかいうハズレスキルがどうしたと……
……
…………
「あっ」
初めての探索で、早々に超レアモンスターと『出会った』
それも、低難度ダンジョンの第一階層で。
「俺のスキルが、レアモンスターと『出会う』効果だと?」
『断言はできません。ですがもしそうなら、ハズレスキルどころか、とてつもなく有用なスキルですよ!』
そうかもしれないが、同時に。
「ですが、呪いに近いスキルでもありますよね」
担任教師はモンスターと『出会い』やすくなるスキルかもしれないと言っていた。
だが、もしもレアモンスターと『出会い』やすくなるのだとしたら……
どう考えても危険すぎるスキルだ。
レインボースライムも強かったが、レアモンスターにはもっともっと強力なモンスターがいる。
はっきりいって、俺1人では勝てないようなモンスターも。
『1度女神の間に戻った方が良いかもしれません』
はるるんさんの言葉ももっともだった。
何しろ、右手右足の火傷はまだまだ痛む。
強敵相手に戦える状況じゃない。
「分かりました。ですが、探索者としてレインボースライムのドロップを見過ごすことはできません」
『それはそうですね。手早く確認しちゃいましょう』
「はい」
(その前に、念のため塩を取り出しておくか)
まさか2匹連続出てくるとも思えないが、もう1匹レインボースライムが現れたらやっかいだ。
俺はリュックの中から塩の入った袋を取りだし、ポケットに突っ込んだ。
確認すると、レインボースライムは2つのアイテムを残していた。
「これは……」
1つは魔石なのか?
虹色の拳大くらいの大きさの石だ。
『まさか、虹の魔石!? しかもその大きさ!』
「虹の魔石? そんなの聞いたことがありませんが」
『私も噂というか都市伝説レベルで聞いた話です。虹の魔石の存在は国家機密レベルだと』
なんだ、そりゃ?
国家機密?
都市伝説っていわれてもなぁ。
しかし、現に目の前に虹色の魔石があるわけだし、悩んでも仕方がない。
後で役所で鑑定してもらおう。
俺はリュックに虹色の魔石を入れた。
それより、問題はもう一つのアイテムだ。
『それは腕輪……でしょうか?』
「みたいですね」
細かい文様が彫られた、虹色の腕輪だ。
持ち上げてみると、金属でも石でもない。
あえて言うなら象牙に近い感触だが、それとも違うようだ。
「これは……」
俺は無意識のうちに、その腕輪を右腕にはめようとしていた。
『空斗さん! 待ってください。未鑑定の装飾系のアイテムを、うかつに装備してはまずいです』
分かっている。
ダンジョン内で手に入った装備品には呪いがかけられている可能性がある。
武器防具ならそこまでひどいことにはならないが、腕輪や指輪、首輪などは鑑定せずに装備するのは危険だ。
だが。
「大丈夫ですよ」
『何を根拠に言っているんですか?』
「俺には分かります。こいつは俺との出会いを待っていたんです」
我ながら何を言っているんだろうか。
論理的な説明には全くなっていなかった。
それでも、俺はその時確信していた。
この腕輪は、俺と出会うのを待っていたのだと。
はるるんさんの警告を無視し、俺は腕輪を右腕をはめた。
その瞬間だった。
俺の目の前に、金髪の美しい女性が現れた。
(ああ、そうだ、俺はこの女神と出会う運命だったんだ)
そういう確信が、なぜか俺の中にあった。
(なんで目の前の女性が『女神』だなんて思ったんだ?)
俺は彼女のことなんて知らない。
だが、知っている。
何を考えているんだ、俺は?
矛盾しているぞ。
やはり、はるるんさんが警告したとおりこの腕輪には呪いが付与されていて、俺は混乱しているのか?
だとしたらまずい。
ソロ攻略で混乱は致命傷だ。
そこまで考えたとき、目の前の『女神』が話しかけてきた。
拙著をお読みいただきありがとうございます。
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