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ハズレと笑われたスキル『出会い』~ダンジョン配信中、異世界から猫耳少女が現れた~  作者: ななくさ ゆう


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第28話 記憶の濁流(前編)

 ドリナ側の話を聞き、こちらも伝えるべきことを伝えた。

 もちろん、お互いの事情を何もかも理解できたわけではないが、最低限の情報交換はできたはずだ。

 ドリナは俺たちの話を聞き終え、「ふむぅ」とうなった。


「なるほどな、異世界転移、動画配信、マホメラにマホレット……なんとも面白い」


 いや、面白いですませていいの!?


「正直なところ、ドリナたちを元の世界に戻す方法は分からない。リルラはこっちの世界に住みたいらしいが、あんたはどうする?」

「さてな。こちらの世界がどんな場所かまだわからん。だが、まあどうでもいいか」


 いやいやいや、どうでもよくはないでしょ!?


「アタイは常に一人で旅をしてきた。世界各地の情景、技術、人、武具、道具、食い物……そういった物を知り楽しむのがアタイの生き方だ。異世界に来たというなら、楽しみが増えただけとも言える。別段、向こうに家族がいるわけでもないしな。親しい者はいるがそいつも風来坊みたいなものだ」


 ふ、ふむぅ。

 かなり開き直ったというか、ドライな考え方だ。

 たしかに俺も家族はいないから、わからんではないが。


「むしろ、そのマホメラとかマホレットとかいう道具にも興味があるな」


 マホレットは俺のリュックに、マホメラは未だ空中に浮いている。

 配信は()めたとはいえ、マホメラを回収してしまうとはるるんさんがこちらの状況を把握できなくなるからな。


「そのマホメラ、分解してみたいな。どのような機構なのか」


 おい!?


「はっはっは。冗談だ。ま、故障したら分解させてくれ」


 本当か? 本当に冗談か!?

 というか、故障しても嫌だぞ。

 メーカー保証効かなくなりそうだしっ!


「それはそれとして、さっきから持っているその虹の腕輪は何だ?」

「そうだニャ。ボクも気になっていたニャ」

『以前手に入れた腕輪と同じですよね。やっぱりバフがかかるんでしょうか?』


 ああ、そういえばはるるんさんにはバフがかかる腕輪って説明していたんだっけか。


「いえ、この腕輪は……ともあれ、はめてみます」


 ドリナが「なに?」と目を剥く。


「未鑑定の装飾品をうかつに身につけるのは感心せんぞ」

「大丈夫。これは俺との出会いを待っていたはずだから」

「意味がわからん」


 そういや、俺のスキルの話はまだしていなかったか。

 いや、したとしても危険だと思うだろうな。

 実際、俺だって論理的には危険だと思う。


 だが、それでもこの腕輪は俺のために用意された物だと、なぜか確信できるのだ。

 理屈ではなく、本能的なものだ。

 俺は左腕に虹の腕輪を身につけた。


 その瞬間だった。

 俺の中に見知らぬ……いや、失っていた記憶が濁流のように流れ込んできた。


----------------------


 どこかの大部屋。

 地面には巨大な魔方陣。

 大人たちが俺を囲む。

 髭の生えた杖を持つ老人や、王冠をかぶった人など。

 まるでファンタジー世界の魔法使いと王様だ。


「おお、勇者様を呼び出せたのか」

「だがこれは……」

「この幼子が勇者様だというのか?」

「何かの間違いではないのか」

「いえ、国王陛下、間違いではございません。この者は間違いなく勇者。ダンジョンの、そしてこの世界のバランスを修正する使命を帯びた存在」


 その次の瞬間、俺は。


「うぇぇぇぇ~ん、ここどこ~、おばあちゃぁぁぁん」


 ボーイソプラノの声でそう泣きじゃくった。

 当然だ。あの頃俺はまだ12歳だったのだから。

 いきなり異世界転移……いや、異世界に召喚されて知らない大人に囲まれればそうもなるだろう。


----------------------


 そうだ。そうだった。

 12歳の誕生日、俺は異世界召喚されたのだ。

 何で忘れていたんだ、こんな大切なこと……


----------------------


 少し時間が跳ぶ。

 王座の間で、俺は王様と話をしている。


「クートよ。幼き其方(そなた)にこのような過酷な運命を背負わせてすまぬ。だがこの世界の存続のため何卒力を貸してほしい」


 王様はそう言って、俺に深々と頭を下げた。

 幼い俺にも、王様が偉い人だということや、この世界と自分たちの世界がピンチで、それを救えるのが自分だけだということは理解できた。

 だから、俺はこう言った。


「わかりました。ぼく、何をすればいいの?」


----------


 そういえば、まだこのころ、俺は自分のことを「ぼく」って言っていたんだな。

 大人の人たちに頼まれて、お城の兵士らとともに、長い旅に出たんだった。

 異世界の街を馬車で移動したり、歩いて移動したり、船に乗ったり。

 過酷な旅だったような気もするし、楽しくてたまらない冒険だったような気もする。


----------


 やがて、俺は獣人の里へとやってくる。


「この方が勇者様」

「うん、ぼくが勇者なんだって」

「なんと幼きことか」

「ごめんね。でもぼく、頑張るから力を貸して」

「わかりました。そのお覚悟を信じましょう」


 こうして、獣人の英雄の血をひく者、ボルグテを仲間にした。

 ボルグテには生まれたばかりの娘がいた。


「勇者様、この子がワシの娘です」

「ふーん、かわいいねぇ」


 幼い俺は赤ちゃんの猫耳をつっついた。

 すると、赤ちゃんは「うぇぇぇぇん」と泣き出してしまった。


「勇者様、獣人の耳は敏感なんです。特に幼いうちは触られるのが苦手です」

「あ、ごめんなさい。ぼくしらなくて……」

「いえ、大丈夫です。ほーら、リルラ、たかいたかい~」


 リルラと呼ばれた赤ちゃんの機嫌はすぐに直った。


----------------------


 リルラ!

 そうだ。俺は赤ちゃんだったリルラにも会っていたんだ!


----------------------


 それからまた長い旅をして。

 俺たちはダンジョンに挑戦することに。

 そのダンジョンには勇者の剣を作るための材料オリハルコンがあると伝えられていた。


 幼い俺は内心おびえていたけど。

 それでも頑張った。

 5歳の頃から毎日木の枝で素振りしていたけど、それだけじゃない。

 俺は驚くほど戦えた。


 ボルグテや兵士たちは『さすがは勇者様!』と褒めてくれた。

 俺は調子に乗って、どんどんモンスターを倒した。

 最深部で現れたのはドラゴン。

 兵士たちもよく戦ったけど、最後まで立っていたのは、俺とボルグテ。

 俺たちは命がけで戦って、ドラゴンを倒し、オリハルコンを手に入れた。


----------------------


 そうだ。幼いあの日、俺はドラゴンと戦ったんだ。

 もちろん、素振りで修行した程度の小学生にできることじゃない。

 それでも戦えた理由。

 俺の本当の先天スキル。

 その名は『勇者』


 あらゆる身体能力の強化はもちろん、『剣神』を超えるほどの剣術、『魔道士』を超えるほどの攻撃魔法、『超ヒーリング』を超えるほどの回復魔法、『自動翻訳』などの非戦闘系スキルまで、ありとあらゆるスキルの効果を使いこなすチート級の能力。

 しかも、このスキル『勇者』は12歳の誕生日から使いこなせる。普通よりも6年も早くだ。この点もチートだと言える。


 俺が『一閃』のスキルを覚えられなかったのも当然だ。

 封印された勇者スキルは『一閃』に相当する力も含まれていた。

 すでに身につけているスキルと同じ効果のスキルを、後天的に覚えることはできないのだから。


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 オリハルコンを入手した俺たちは、ドワーフの里を訪れた。

 ドワーフの職人はオリハルコンを勇者の剣に加工してくれると言った。


「すまんな。ワシの技術じゃ20日はかかる。アイツがいてくれればな」


 兵士がたずねた。


「アイツとは?」

「ふん、ワシの幼なじみ。天才鍛冶屋のラボック。冒険者でもないのにダンジョン探索に向かい、戻ってこなかったバカな男だ」


 ダンジョン探索で戻ってこないということは攻略に失敗して死んだと見なされる。それはこちらの世界でも向こうの世界でも同じだった。


 一方で、ドワーフの英雄の血をひく者、ドドルガも仲間にできた。

 ドドルガは豪快な男で、傍らには小さな女の子がいた。


「ほら、ドリナ。勇者様だぞ。ちゃんとご挨拶しなさい」


 だが、ドリナと呼ばれた少女はパッと逃げ出してしまった。


「すまんな、勇者様。どうにもあの子は人見知りだ。もっと鍛えてやらねばならん」


----------------------


 そうだった。

 俺はドリナにも会っていたじゃないか。

 それどころか、ラボックの名前も聞いていたんだ。


 なんでだ?

 本当にどうして、こんなにも大切なことを全部忘れていたんだ?


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 記憶はまだまだ濁流のようによみがえっていく。

 次はエルフの里でのことだ。

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