第27話 決闘!? リルラVSドリナ
リルラとドリナが拳を構えて向かい合った。
(どうしてこうなるんだ?)
なぜだか知らないが、リルラが決闘だといいだし、ドリナが受けた。
全く意味が分からない。
リルラはなぜあそこまでドリナに反発するのか。
子ども扱いされて腹が立ったのはわかるが、それにしてもいきなり決闘だなんて話がぶっ飛びすぎている。
ドリナもドリナだ。
リルラを子どもだというなら、子どもの戯れ言くらい聞き流せと言いたい。
はるるんさんが不安そうに言った。
『あの、大丈夫なんでしょうか?』
「しりませんよ。止めても無駄みたいですし気が済むまでやらせましょう」
さすがに2人とも相手の命を奪ったりはしないだろう。
回復薬はまだある。大けがしても大丈夫だ。
『そんな投げやりな』
「だって、子どもの喧嘩じゃないですか」
ドリナはリルラのことを子どもだというが、ドリナはドリナで子どもっぽい。
子どもの喧嘩に口を挟む方が野暮だ。
できれば無理やりにでも引き離したいが、2人ともかなり強いのでそれも無理。
「クート、決闘の審判してくれニャ」
「いや、決闘のルールとかしらんし」
ボクシングか空手みたいなもんか?
その2つのルールも詳しくないけど。
「簡単ニャ。先に参ったというか、気絶するか、死ぬかしたほうが負けニャ」
なるほど、分かりやすい。
だがな。
「それ、1つだけ変えてくれ。相手を殺したら負けにしろ」
「なんでニャ、意味が分からないニャ」
いや、分かるだろ。
こんな諍いで死人なんて出せるかっ。
「アタイはそれでいいぞ。子どもを殺すなど寝覚めが悪いからな」
「むぅ、わかったニャ」
さて、それじゃあ合図くらいはやってやるか。
「始め!」
俺がそう言うと、ドリナが走った。
「さあ、リルラちゃん。アタイがお尻ペンペンのお仕置きをしてやるよ」
そう言って、リルラの肩をつかもうとする。
だが、リルラにとってそんな攻撃を避けるのは造作もなかった。
「なにがお仕置きだニャ!」
左に飛び退きざまに、『一閃』も使ったたパンチを繰り出す。
「何!?」
「お前みたいな鈍足の攻撃、くらうわけないニャ」
言いながら、リルラは次々とパンチやキックをドリナに決めていく。
「なに? うぉ、うぉぉ? この攻撃は……」
ドリナは力だけでなく耐久力もあるらしい。
『一閃』を使ったリルラの攻撃を何発も受けてなお、崩れることはなかった。
「なかなか丈夫だニャ。でも、ゴーレムとは違うニャ!」
その通り。
ドリナの耐久力は大した物だが、とはいえ岩の怪物というわけでもないのだ。
リルラの攻撃を一方的に受け続ければいつかは倒れるだろう。
一方ドリナの攻撃がリルラに当たればかなりのダメージだろうが、そもそも当たる見込みは少ない。
この勝負、リルラのほうが有利か?
「ふん、この程度の攻撃どうということはない。これでも喰らえ! 『土竜爆撃』」
ドリナは両手を地面に叩きつけた。
「ニャ、ニャンと!?」
地面が爆発したかのように砂煙が舞い上がる。
ドリナはスキルを2つ身につけていたらしい。
『土竜爆撃』そのものに強力な攻撃力はない。
せいぜい目くらましと言ったところ。
とはいえ、部屋の中が砂煙でほとんど見えない。
「ど、どこに行ったニャ!? 卑怯ニャ! でてくるニャ!!」
いや、リルラ、この状況で声を出すのは悪手だろ。
ドリナに自分の居場所を教えているだけだ。
「な、放すニャ!」
『土竜爆撃』の砂煙が落ち着き、俺にも状況が見えた。
リルラは腰のあたりを持ち上げられ、ジタバタすることしかできないでいる。
「ふんむ!」
ドリナがリルラを壁に向けて投げ飛ばした。
「ふ、ふニャァ」
「降参したらどうだ? これ以上子どもを虐める趣味はないが」
「ふ、ふざけるニャ!」
リルラはピョコンと立ち上がり、再び攻撃に転じる。
「おりゃおりゃおりゃニャァァァ」
リルラの拳の連発。
やはりドリナは避けることも受け身を取ることもできない。
だが、ドリナが倒れることもない。
(この2人、やっぱり戦い方が真逆だな)
「ならばっ」
ドリナがもう一度 『土竜爆撃』を使おうとしたが。
「そんなこと、2度も許すわけないニャ!」
リルラが強烈なキックでドリナを蹴飛ばす。
さすがのドリナも、ダメージの蓄積があったのだろう。
「ぐふっ」
その場に倒れ込んだ。
「ニャはははは。さっきの言葉をそのまま返すニャ。とっとと降参するがいいニャ。ボクもオバサンを虐めて喜ぶ趣味はないニャ」
「誰がオバサンだ! アタイはこれでもまだ16歳だ!」
「なんにせよ勝負はついたニャ」
リルラはこっちを振り返り、ピースまでしてみせる。
「どうニャ、クート。やっぱりボクの方が頼りになるニャ」
だが、まだ決闘は終わっていなかった。
ドリナは立ち上がり、リルラの両肩をつかんだ。
「捕まえたぞ」
「ドリナ! まだやるつもりかニャ?」
「当然だぁぁぁ」
まあもう、その後は無茶苦茶だった。
2人は転がりながら殴り合ったりお互いの頬を引っ張り合ったり蹴飛ばし合ったり…… なんつーか、決闘というよりもキャットファイトみたいになってきた。
はるるんさんもあきれたようだ。
『たしかに子どもの喧嘩ですね』
まったくである。
やがて、リルラもドリナも体力が尽きたのか、天井を見上げて大の字に横たわった。
体中傷だらけなのに、なぜか2人とも笑い出した。
「ドリナもなかなか強いニャ」
「ふん、リルラもな」
「もう子どもって言わないニャ?」
「戦士に子どもというのは失礼だからな。リルラこそ『お前』といわないのか?」
「仲間なら名前を呼びあうニャ」
「なるほどな」
それから、2人で楽しそうに笑う。
え、え、え? これ何? 結局どういうこと!?
『えーっと、決闘の決着は?』
戸惑うはるるんさんの声に、リルラが言った。
「引き分けでいいニャ」
「アタイもそれでいい。リルラ、すまなかった。無礼を謝罪しよう」
「ボクも言い過ぎたニャ。これから仲良くするニャ」
ええええええ!?
さっぱり意味がわからん。
なにこれ?
強敵と書いて「とも」と読むみたいな話なのか?
それともやるだけやって気分すっきりってこと?
まあ仲直りしたならどうでもいいけど。
「あー、もう。とりあえず2人とも回復薬使うから」
俺はリュックのなかから2本回復薬を取り出した。
「ありがとうニャ」
「感謝する」
やれやれ。さて、次に解決すべきことは……




