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ハズレと笑われたスキル『出会い』~ダンジョン配信中、異世界から猫耳少女が現れた~  作者: ななくさ ゆう


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第25話 2番目の転移者「アタイに任せろ!」

 目を開けていられないほどの虹色の光。


(くそ、何が起きている!? ゴーレムは? リルラはどうなった?」


 無理やり目を開けると、虹色の光は徐々に収まっていく。

 そして部屋の中央――俺たちとゴーレムとのちょうど真ん中に人影があった。


 4頭身で、燃えるような長い赤髪だ。

 赤い髭を生やし、背中に大きな戦斧を背負っている。

 背丈は低いが、子どもではないだろう。


 おそらくは……ドワーフ。ラボックと同じような体型に見える。

 もっとも、こちらは若い。

 そして、これもおそらくだが女性だ。

 彼女も異世界転移してきたのだろうか。


 彼女は辺りを見回して言う。


「ああん? なんだ、どうなったんだ?」


 それから、今にも暴れ出しそうなゴーレムと向き合う。


「ほう、これは大物だな……おい、お前ら」


 後半は背中越しに俺たちに向けた言葉のようだった。


「なんニャ!?」

「コイツはアタイに任せろ」

「なにを言っているニャ! そいつはゴーレムだニャ。攻撃が効かないニャ」


 リルラがそう警告するが、彼女は「ふんっ」と鼻息荒い。


「こんな岩の塊、この"戦斧のドリナ"にとっては何ほどでもない!」


 戦斧のドリナ……ドリナというのが彼女の名前か。


「いくぞっ!」


 ドリナは叫び、背中の戦斧を握りゴーレムに正面から挑む!

……って、ちょっと待て!?


 ゴーレムがいくら動きが遅いといっても、それは俺やリルラと比べての話。

 ぶっちゃければドリナは俺たちやゴーレムよりもずっと遅い。

 中学生の徒競走の平均速度より遅いくらいだ。


 ゴーレムの狙いは俺のようだが、それでもこうも真正面から挑んでこられれば反応するようで。

 ゴーレムは右腕を振りかぶって、拳を眼下のドリナに叩きつけた。


『きゃぁぁぁ』

「まずいニャ」


 突然現れたドワーフの女性が、哀れにもあっけなくゴーレムの拳に潰された。

 俺もリルラもはるるんさんもそう思った。


 だが。

 ゴーレムの拳の下から声がする。


「ぬぉぉぉぉぉ!! この戦斧のドリナをなめるなぁぁぁ!!」


 その声と共に、ゴーレムの腕が持ち上がっていく。

 ゴーレムも、まるで当惑したかのようなうなり声を上げた。


「グ、ゴオォォォ?」 


 ゴーレムの腕を持ち上げたのは、当然ドリナ。その傍らには彼女の戦斧が転がっていた。


「うぉぉぉぉりゃぁぁぁっ!!」


 叫び声と共に、ドリナはゴーレムを投げ飛ばす。

 俺達は思わず叫んだ。


「うそだっ!?」

『信じられません』

「なんとニャ!?」


 ゴーレムは尻餅をつくように倒れた。


「グガガァァ!?」


 ドリナは床に転がった戦斧を持ち上げ、倒れたゴーレムに言った。


「ふん、岩っころ風情にしてはやるじゃないか。だがアタイを敵に回すには足りんな」

「グゴォォォ」

「これで終わりだ!」


 ドリナは言って、戦斧をゴーレムの脳天に叩きつけた。

 ゴーレムの顔が半分えぐれ落ちる。

 だが、それでもゴーレムは倒れない。


「グゴォォゥ」

「まだ死なんか。ならば!」


ドリナは戦斧を振り回す。


「とどめだ! 『回転戦斧』」


 回転戦斧。斧系のスキルだったか。

 超高速で体ごと斧を回転させる技。

 威力だけなら物理系でもかなり上位に入る。

 斧使いなんてほとんどいないし、この技は特にスキが大きいので、そこまで好まれるスキルではないのだが。


 しかし、動きを止めたゴーレムに対しては有効だった。

 ドリナの戦斧はゴーレムの首を見事に切断した。

 さすがに首を落とされてはゴーレムも生きてはいられなかった。

 赤い大きめの魔石をその場に残し、ゴーレムは霧となって消えた。


 ドリナは魔石を拾った。


「ふむ、それなりに上質な魔石だな。スカラトースのダンジョンにゴーレムが出るとは聞いていないが……それ以上にわからんのは……」


 ドリナは戦斧を俺たちに向けた。


「なぜ、ダンジョンで他の探索者と出会う?」


 リルラが身構える。


「なんだニャ? やろうっていうのかニャ!?」


 俺も身構える。剣を向けるつもりはないが、油断はできない。

 このパターン。以前リルラと出会ったときと同じだ。

 ダンジョン内ではパーティメンバー以外の探索者に出会うことは原則ない。

 もしかするとドリナは俺たちをモンスターだと疑っているのかもしれない。


「待ってくれ。俺たちはモンスターじゃない」


 だが、ドリナは「ふん」と鼻を鳴らした。


「そんなことは匂いで分かる。人間の若者と猫の獣人の子どもだろう?」


 匂いか。

 そういえばラボックも似たようなことを言っていたな。


「アタイはドリナ。人呼んで戦斧のドリナだ。お前達は?」

「俺は蒼凛空斗。クートでいい。こっちは……ほら、リルラも自己紹介して」


 リルラはブスッとした表情のまま言った。


「獣人のリルラニャ。でも、ボクは子どもじゃないニャ」

「ふん。子どもじゃないなどと主張すること自体、子どもだと白状しているようなものだな」


 ともあれ、俺はいうべきことを言った。


「いずれにしても、助かったよ、ドリナ」


 俺がそう言うと、ドリナはようやく警戒を解いたのか、戦斧を背中に背負い直した。


「なに気にするな。ドワーフの戦士の誇りにかけて、弱者を救うのは当然の役目だ」


 リルラが再び言う。


「誰が弱者だニャ!」


 ドリナに飛びかからんばかりのリルラを、俺は必死に抑えた。


「リルラ、俺たちは助けられた立場なんだぞ」

「そんなことは分かってるニャ。だから蹴飛ばしてはいないニャ」


 今にも蹴飛ばさんばかりの勢いだっただろうが。


「それともクートは、ボクよりそいつの方が強いと思っているニャ?」


 いや、そんなことを聞かれてもな。


「うーん、たしかにゴーレム相手ならドリナの方が相性がいいかもな」


 俺が思わずそう言うと、リルラが悔しそうな、悲しそうな、なんとも言えない顔をした。


「あ、いや、でもリルラも強いぞ、うん、2人とも強い。それでいいじゃないか」


 実際のところ、リルラとドリナのどちらが強いかなど俺にはわからん。

 リルラはスピードファイターでドリナはパワーファイターだろう。

 比べること自体間違っている。


 リルラが(そして俺が)ゴーレムに勝てなかったのは相性の問題が大きい。

 例えば、レインボースライム相手にしたら、ドリナの鈍足ではどうにもならないだろうが、リルラの素早さなら『豪炎』を使わせる前に倒せるかもしれない。


 ドリナが俺をにらむ。


「ずいぶんと曖昧な表現だな。そもそもお前はどうなんだ? 子どもを助けてやることもできんで、情けない」


 くっ。

 それはたしかにその通りだ。反論の余地がない。


「クートは強いニャ! ボクを何度も助けてくれたニャ! お前なんかよりずーっと強いんだニャ!!」


 リルラがまた、場を険悪にしそうなことを言い出した。


「ふん。子どもに何を言われてもな」

「子ども子どもうるさいニャ! ボクはリルラだニャ!!」

「なるほど、ではリルラちゃん。大人の話に入ってこないようにな」

「ウニャャャ!」


 ああ、ダメだ。

 どうにもリルラとドリナは相性がよろしくない。

 リルラが突っかかっているようにも見えるが、ドリナの態度もそれこそ『大人げない』だろう。


 どうしたもんかなぁ……と思っていると、リュックの中のマホレットからはるるんさんの声がした。


『皆さん。色々とお話もあるかと思いますが、そこは女神の間ではありません。いったん安全を確保されてからにされてはいかがですか?』


 たしかに。

 今すぐに通路からモンスターが現れてもおかしくない。


「ああ? 今の声どこから聞こえてきた?」

「今のははるるんだニャ。マホレットの向こうにいるニャ」


 ドリナは首をひねった。


「はるるん? まほれっと? なんだそれは?」

「このマホメラでボクらのことを見ているニャ」

「む、なんだこの空を飛んでいるのは……新手の魔物か。いや、そういう匂いではないな」

「ふっふん、なーんにも知らないニャ! お前こそお子様ニャ」


 リルラもこの前知ったばかりだろうに。

 とにかく、これ以上ここで2人に言い争いさせるのは百害あって一利なしだ。

 俺は強引に話を打ち切った。


「ああ、もう。とにかく女神の間をさがすぞ。話はそれからだ。

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