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ハズレと笑われたスキル『出会い』~ダンジョン配信中、異世界から猫耳少女が現れた~  作者: ななくさ ゆう


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19/22

第19話 次なる冒険へ!「えっへん! どうニャ? ボク強いニャ!!」

 スキルブックを買った翌日。

 渋谷の武器防具屋で、俺は鉄の鎧を試着してみた。


「ニャハ! クート、かっこいいニャ」


 リルラはそう言って拍手してくれたが。


「いや、これは動きにくいな」


 鎧は結構な重量だ。

 しかも関節を曲げたり伸ばしたりするにも邪魔っぽい。

 正直、防御力は上がっても素早さとかが下がりすぎだ。


 店員が残念そうに言う。


「さようでございますが、ご要望があれば多少のサイズ調整はできますが」

「いや、そもそも俺の戦闘スタイルに鎧は合わないと思います」

「なるほど……ではこちらはいかがでしょうか?」


 店員が示したのは緑色の服。一見防具ではなく、ちょっとおしゃれな長袖長ズボンにしか見えないが。


「こちらは対魔の服でございます。ダンジョン内でしか手に入らない特殊な繊維で編まれており、魔法攻撃のダメージを軽減する効果があります」

「なるほど」


 またレインボースライムに出会ったら有効かもしれない。


「ちなみに、軽減ってどれくらい?」

「20%くらいの軽減でしょうか」


 つまり、80%は喰らうってことじゃないか。

 微妙な顔をした俺に、店員が言った。


「もっと軽減率の高い服もありますが、それなりのお値段になりますよ」


 今見せてもらった服は45万円。

 もう少し予算はある。


「かまいません」

「ほう?」


 店員の目がキラリと光った。

 これは良客だと思われたのかもしれない。


「では、大対魔の服はいかがでしょうか? 131万円と高価ですが、対魔軽減50%、さらに物理攻撃にも強いお品です」


 なるほど……


「わかりました。そちらを2着お願いします」

「2着?」


 怪訝そうな顔をする店員に、俺は「この子の分も」とリルラを指し示した。


「え、そちらの方も探索者なのですか?」


 探索者免許を取得できるのは18歳から。

 当然リルラの免許にも18歳と書かれている。

 ありえないとは言わないが、18歳にしては低身長といぶかしんだのだろう。


「そうニャ! リルラも免許持ってるニャ!!」


 リルラは自慢げに探索者免許(偽)を見せる。

 ああ、もう。偽物の免許をそう簡単に人に見せないでほしい。

 ラボックの腕前は信用しているが、それでも心臓に悪い。


「申し訳ありません。失礼いたしました」


 店員としては商品が売れれば問題ないのだろう。

 そもそも、他人の身長についてこれ以上とやかく言うのは失礼だろうしな。


「それでは、サイズを測りますのでこちらへ……」




 大対魔の服のサイズ直しをお願いしている間、俺たちは武器売り場へとやってきた。


「さて、どうするかな」


 現在、俺が装備している武器は初心者向けのロングソードのみ。

 リルラにいたっては何も装備していない。


「ボク、剣とかはいらないニャ」


 たしかに、へたに剣とか持たせても、リルラの戦闘スタイルには合わなさそうだが……


「じゃあ、爪とかナックルとか……」

「うーん、いらないニャ。どっちもかえって怪我しそうニャ」


 そうなのかなぁ。正直、武闘家系の武器はあんまりわからん。

 本人がそう言うなら、無理に装備させない方が良いのかもしれない。


 などと思っていると、1つの武器が見つかった。

 武器というか防具というか微妙だが。


「手袋かニャ?」


 店員曰く、素手で戦う武闘家向けのアイテム。

 これも魔法の繊維でつくられており、見た目以上に両手を保護する効果があるという。

 そのわりに、敵に与えるダメージはむしろ上がるらしい。


「これなら、リルラも使えるだろ?」

「でも……いいのかニャ?」

「何が?」

「昨日も『一閃』のスキルもらったし、さっきも大対魔の服を買ってもらったし、おいしいご飯もたくさん食べさせてもらったし……ボクなんかがこんなに色々もらって、本当にいいニャか?」


 ふむぅ。

 たしかに調子に乗って少しお金を使い過ぎている感はあるのだが。


「リルラ、『ボクなんかが』なんていうなよ」

「でも、ボクは元々は奴隷ニャ」

「今は俺の仲間だろ? それに、リルラに強くなってもらうと俺も助かるんだ」

「本当かニャ?」

「ああ、これからの探索や配信で、リルラに頑張ってもらわないとな」




 正直に言えば。

 今となってもリルラを連れて、ダンジョンに行ってもいいのかという躊躇はあった。

 探索者免許が偽物という問題をさておいても、俺のスキル『出会い』によって、また強力なモンスターが現れる可能性があるのだ。

 リルラを巻き込んでいいのかという気持ちはある。


 だが、先日そのことを正直に言ったら、リルラはこう言った。


「だったらなおさらボクも一緒に行くニャ。クート1人でダンジョンに行かせるのは不安ニャ」


 俺はそれ以上説得できなかった。

 何しろ、俺が1人でダンジョンに行って、万が一のことがあったらリルラは見知らぬ世界で一人きりだ。家で暮らしていくこともできまい。

 彼女が頼れるのは俺だけだ。はるるんさんかラボックに相談くらいはできるかもしれないが、2人にリルラのことをおしつけるわけにもいかない。


 リルラのためにも探索を成功させねばならない。

 そう考えれば、貴重な戦力たるリルラはむしろ連れて行った方が良い。

 本人がその気になっているなら、断ることはできなかった。




「で、クートはどの武器にするニャ?」

「うーん、俺は……」


 武器屋なので剣はたくさんある。

 強力な威力がある剣や、魔法剣のたぐいもあるのだが。


(防具と同じだよな)


 俺はライトソードを選んだ。

 総合的な攻撃力はロングソードと大差ない。

 だが、コイツにはある種の魔法がかかっている。


「おお、軽い!」


 その場でライトソードを持たせてもらうと、軽さに驚いた。

 そう。ライトソードにかかっている魔法とは、重さの軽量化。

 それだけなら、武器としての威力が下がりそうだし、実際叩きつけるような使い方ではロングソードよりも攻撃力は下がる。

 だが、切れ味という意味ではこちらの方が遙かに上だ。

 しかも、魔法の力で丈夫さではロングソード以上。


 ふむ、虹の魔石で得た収入もかなり使ってしまったが、回復薬(ポーシヨン)に『一閃』、武器防具となかなか充実した買い物をできた。




 俺たちは、次に攻略するのを高尾山ダンジョンと決めていた。

 全3階層で新宿ダンジョンより少しだけ難易度が高い。

 とはいえ、分類としては低難度だ。

 新宿ダンジョンに出現しないモンスターも生息しているが、どれも弱い。

 俺とリルラなら問題なく攻略できる範囲……


……そのはずだ。


 だが、俺のスキル『出会い』がある。

 またレアモンスターが出現する可能性もあるし、気を引き締めないとな。


 俺はダンジョン入り口の青いオーブの前で、リルラに確認した。


「リルラ、準備はいいか?」

「大丈夫ニャ。っていうか、特に準備もないニャ」


 そりゃまあそうか。

 ほとんどの道具は俺のリュックの中だ。

 リルラの荷物は回復薬(ポーシヨン)を1つだけ。


 武闘家系の彼女には重い荷物を持たせない方がいいと判断した。

 今回、荷物はかなり厳選した。

 マホレットからはるるんさんの声がした。


『お2人とも気をつけてくださいね』


 スマホはダンジョン内では電波が届かない。

 はるるんさんとの通信は、マホメラとマホレットを通してしかできない。


「もちろんです」

「ボクも頑張るニャ。クートのことはボクが護るのニャ」


 やれやれ、俺は守られる側か。

 もちろん、俺だってリルラの強さは認めているが、もちろん彼女に頼り切りになるつもりはない。


「じゃ、行くぞ」


 俺はリルラと手を繋ぎ、オーブに触れた。

 こうやって手を繋いでダンジョンに侵入すると、今回俺とリルラはパーティを組んだと見なされる。

 毎回姿を変えるダンジョンだが、2人で一緒に入れるのだ。


 第1階層は洞窟型だった。

 付近にモンスターの気配はない。広間の中央に俺たちはワープしたようだ。

 左右に1つずつ、2つの通路が延びている。

 女神の間ではないので、いつモンスターが現れてもおかしくない。

 今のうちにマホメラを起動しちゃうか。


 ちなみにマホメラは最新型を購入した。

 これも結構なお値段がしたが、少しでも良い映像を撮りたい。


「リルラ、幻の指輪を使ってみて」

「うんニャ……これ、どうやって使うんだっけニャ?」

「見せたい姿を念じるとか言っていたけど……とりあえず、耳だけでも変えてみたら?」「わかったニャ」


 ふむ、なんの変化もないな。

 いや、そもそもマホメラをごまかすためのアイテムなんだから、俺から見て変化がないのは当然か。


「はるるんさん、どうですか?」

『驚きました。リルラさんの耳が完全に普通……失礼、私たちと同じように見えます』


 なんとか上手くいったらしい。


「それじゃあ、改めて生配信を始めようか」


 俺はマホメラに向かって挨拶した。


「蒼凛空斗だ。今日は高尾山ダンジョンを攻略するぜ。今回から参加する新たな仲間を紹介するな。武闘家のリルラだ」


 俺がそう言うと、リルラがマホメラに向けてピースした。


「ニャハ。ボクがリルラニャ。ちょっと背は低いけど、18歳なのニャ。クートと一緒にがんばるニャ。よろしくなのニャ」


 あらかじめ他の配信者の動画を見せておいたからか、リルラもきちんと挨拶してくれた。

 幻の指輪で背丈はごまかしていない。ラボックにも体格を変えるのは不自然になるって言われたからな。

 リルラの背丈で18歳は若干無理があるが、無免許の子どもをダンジョンに連れてきたと喧伝するわけにはいかない。


「それと、参謀役としてはるるんさんにも参加してもらうぞ」

『私、はるるんです。よろしくお願いします』

「前回の動画を見てくれた人は分かると思うけど、俺のスキル『出会い』はレアモンスターを呼び出すらしい。今回もレアなモンスターが出現するかもしれないから、期待していてくれよ」


 ……と、まあ、ここまではあらかじめ決めていた台本通りのセリフ。

 我ながら、緊張してちょっと棒読みだったかもしれない。

 

 その時、リルラが警告の声を上げた。


「クート、来たニャ!」


 言われ、リルラの指さす方を見ると、通路から赤鬼が現れた。

 赤鬼は肌が赤く、角が生えている。虎柄のパンツ1枚を身につけたモンスターだ。

 高位の青鬼や黄鬼になると金棒などの武器を使うが、赤鬼は殴りかかってくるだけだ。

 強さはゴブリンと大差ない。


「よーし、ボクがやっつけちゃうのニャ!」


 リルラはマホメラにむかってそう宣言し、赤鬼に突撃!

 赤鬼の頭蓋骨を殴りとばす。


 その瞬間、俺にはリルラの拳が見えなかった。


(これが『一閃』の効果か)


 リルラは元々、先天スキルの『瞬発爆蹴拳』に加えて、エルバランスの女神から『素早さUP』のスキルまでもらっていた。

 そこに『一閃』のスキルが加わったことで、文字通り目にもとまらぬ速さと威力の拳を手にしたらしい。


 実際、リルラの攻撃は強烈だったらしく、赤鬼の頭蓋骨が破壊され、ヤツは黒い霧になった。

 女の子が頭蓋骨破壊って、絵面的にどうなんだと思わなくもないが。


 リルラは赤鬼が残した小さな赤い魔石を回収すると、マホメラにむけてピースサインをした。


「えっへん! どうだニャ? ボク強いニャ!!」


 ふむぅ、なかなかの自己主張っぷりだ。

 いや、動画配信としてはこれが正しい気もする。

 それにしても、ピースサインなんていつの間に覚えたんだ?


『リルラさん、かっこいいです。動画対応もバッチリです!』

「へへへっ、クートの家でいっぱいダンジョン配信動画見たのニャ! みんなのまねっこニャ」


 うう。

 なんか、配信者としてすでにリルラに負けてる気がしてきた。

 俺も頑張ろう。


 などと思っていたときだった。


「クート、今度はそっちニャ」


 さっき赤鬼が現れたのとは反対側の通路から、虹色のゴブリンが現れた。


『また虹色のレアモンスター!?』


 はるるんさんの言うとおり、虹色のゴブリンなんて聞いたこともない。

 やはり、コイツもスキル『出会い』の効果で現れたのか。

 俺はライトソードを抜いて構えた。


「レインボーゴブリンとでも命名するか」


 だが。


『空斗さん、逆側からも!』


 え?

 俺はレインボーゴブリンを警戒しながら、先ほど赤鬼が現れた通路を見る。

 そこから現れたのは……


「虹武者!?」


 虹色の鎧武者だった。

拙著をお読みいただきありがとうございます。

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本作はカクヨムにて先行配信中です。続きが気になる方はカクヨムにも是非おいでください。

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