第13話 「なかなか、エキサイティングな生配信でしたね」《はるるん》
※初心者ウォッチャー、はるるんの一人称です
私は小さく吐息をつき、タブレットを勉強机の上に置きました。
(なかなか、エキサイティングな生配信でしたね)
蒼凛空斗さん。
謎のスキル『出会い』
虹色に輝くモンスターと腕輪。
そして、異世界転移したらしきリルラさん。
最初はいつものように、初めてダンジョンに潜る配信者を、からかい半分に見てみようという気持ちでした。
特に、今日は国立ダンジョン探索者学園の卒業日。
気の逸った新人探索者が配信するかもしれないと考えました。
そう、本当にそれだけでした。
会話をして、空斗さんの人柄に好意を持ったのは事実です。
ソロで頑張っている姿を見て、動画タイトルとか少しアドバイスしたのも事実です。
でも、それ以上の興味はありませんでした。
これまで何人も見てきた初心者の1人でしかなかったのです。
最初に大きな興味を抱いたのは、スキル名が『出会い』だと聞いた時でした。
一体どんなスキルなのか、わくわくするじゃありませんか。
レインボースライムや虹武者なる、未発見のレアモンスターとの『出会い』を見せられて、私は興奮してしまいました。
一方で、空斗さんに対する好印象はどんどん上がっていきました。
それと同時に、このままレアモンスターと『出会い』続けたら、彼が死んでしまうのではないかと心配になりました。
はたしてその予感は現実のものとなりかけました。
トロールなんていう化け物が出現したのです。
しかも、トロールは幼い女の子を追いかけ回していました。
私は逃げるべきだと思いました。
そもそも、女の子もモンスターの可能性が高いと思ったからです。
だって、ダンジョン内で他の探索者と遭遇したなんていう報告聞いたこともありません。
ですが、空斗さんが選んだのは女の子を救う道でした。
女の子の名前はリルラさん。
なんと猫耳の少女です。
ちょっぴり猫耳を触ってみたかったですが、画面越しでは無理でした。残念。
おにぎり1つに大喜びする彼女は、とってもかわいらしかったです。
それと同時に、彼女の話からは悲惨な過去が漏れ聞こえ、少し心が痛くなりました。
このあたりでは、私はもう空斗さんやリルラさんのことが大好きになっていました。
初心者ウォッチャーなんて看板は下ろして、空斗さんウォッチャーになりたいと思いました。
それに、リルラさんとも是非お友達になりたいなと思います。
私は最後に、空斗さんとSNSアカウントの交換をしました。
今まで、他の生配信や動画を見ても配信者と連絡先を交換なんてしたことありません。
でも、空斗さんとはまたお話ししたいと心から思ったのです。
(私、空斗さんやリルラさんの仲間になりたいって思ってる?)
もちろん、それはかなわぬことです。
私は探索者免許なんて持っていません。
少なくとも、あと6年は絶対に無理です。
(そういう意味ではリルラさん、どうするのかしら?)
リルラさんもこちらの世界での探索者免許なんて持っていないはずです。
空斗さんは今後もソロで活動するのか、それとも……
リルラさんに特例で免許を?
でもそんなこと……
(おじいさまに相談してみるべきかしら?)
でも、それが良い方に転がるかどうか分かりません。
獣人という存在を、この国は、政府は、ダンジョン庁は、人々は、はたして受けいれてくれるのでしょうか?
などと考えていたら、30分以上経ってしまいました。
(算数の宿題しなくちゃいけないのに)
でも、あんな生配信をみたあとじゃ、興奮してお勉強なんてできません。
と、子供部屋の外から母の声がしました。
「晴美さん、宿題は進んでいますか?」
「はーい、大丈夫です」
「本当に? あなたももうすぐ中学受験なんですからね。宿題だけすればいいなんて思わないように。おじいさまの顔に泥を塗ったら許しませんよ」
「わかっています」
私がそう答えると、母はどうやら立ち去ったようです。
私は算数ドリルを開き、ため息をつきました。
(AIにやらせちゃおうかしら)
そんな誘惑に駆られますが、お勉強の大切さは理解できます。
私はシャープペンを手に取り、問題に挑み始めました。
結局、この日はお勉強に集中できず、宿題を終わらせることはできませんでした。
ここまでのお話、はるるんが小学生だと理解した上で読み返していただくと意外な味があるかなと思います。
次話より空斗とリルラの話に戻ります。探索翌日以降のお話。
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