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ハズレと笑われたスキル『出会い』~ダンジョン配信中、異世界から猫耳少女が現れた~  作者: ななくさ ゆう


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第12話 クートとリルラの新生活!「水洗トイレはむずかしいニャ」

 ばあちゃんの家の前で、俺はリルラに言った。


「ここが、俺んちだ」


 リルラはまたしても目を見開いた。


「す、すごいニャ。こんなでかくて立派な家にすんでいるニャ?」

「死んだばあちゃんの家だけどな。今は俺の家」


 リルラは目を丸くしているが、2階建てのごく普通の一軒家だ。


「クートは昔からここに住んでいるのかニャ?」

「学園の寮入るまではな」


「ふーん」


 リルラはたぶんよく分かってない様子だ。

 そもそも、学園のこと話してないしな。

 今、その説明をすると大変そうなのでやめておくが。


 俺はリルラと一緒に家の中に入った。

 とりあえず、居間へ。

 ばあちゃんが生きていた頃のことが頭に浮かぶ。

 この家で、俺は育った。


(ばあちゃん、ありがとう)


 母1人子1人どころか、祖母1人子1人の生活。

 決して楽じゃなかったはずだ。

 それなのに、ばあちゃんは弱音1つ吐かずに俺を育ててくれた。


 そんな思い出に浸っていると、リルラがブルブル震えながら言った。


「それで、その、クート、その……ずっと我慢していたニャ」


 なにやら言い出しにくそうにしている。

 我慢って、なんだ?


「なんだ?」

「その、トイレ……」


 あ、そうだよな。

 リルラは出会ってから1回もしてない。

 俺はファミレスですましたけど。


「トイレは廊下の向こうだけど」

「ありがとうだニャ」

「でも、使い方分かる?」


 トイレの扉を開いてやると、リルラは洋式水洗トイレの前で固まった。


「え、えーっと?」


 そういう反応になるよな。

 リルラの世界のトイレ事情は知らないが、洋式水洗トイレはなさそうだもんな。


「これは、この蓋を開けて、ここに座って……」


 俺はトイレの使い方を解説した。


「で、終わったらこのつまみをひねって水を流すと」


 俺が試しに水を流してやると、リルラはまたまた目を見開いて驚いた。


「なんとニャァ。どういう仕組みニャ。っていうか、こんな綺麗な水をこんなもったいない使い方して、いいニャ?」


 あー、リルラ的にはそうなるんだ。

 たしかに水の貴重な地域の人からみたら、日本の水洗トイレはもったいないと思えるのかも。


「大丈夫大丈夫、この国は水が豊富だから。水道代はかかるから無駄にはしてほしくないけど」

「わかったニャ、ありがとうニャ」


 どうやらトイレ問題は解決したようなので、俺はホッとした。


(これから1つずつ日本の常識を教えていかないとなぁ)


 ファミレスと電車とトイレだけでこの大騒ぎ。

 先が思いやられるというものだ。


「あー、さすがにつかれたなぁ」


 思わずそんな声を出してしまうくらい、今日はハードだった。

 もう24時を過ぎているし、早く寝よう。

 幸い、予備の布団はある。

 

 あ、でも寝る前に風呂が先か。

 今からお湯張りをするのもあれだし、シャワーで済ませるか。


 トイレから水を流す音がした。

 リルラがトイレから出てきた。


「あー、すっきりしたニャ。もう少しで電車の中で漏らしちゃうところだったニャ」


 いや、それは本当に勘弁して。

 リルラが我慢していることに気がつかなかった俺も悪いけど。


「じゃ、シャワー浴びようか。リルラから入って良いぞ」

「ふニャ? 入るってなににニャ?」

「だからシャワー」


 どうもピンときていない様子だ。

 俺は浴室にリルラを連れて行った。


「ほら、これをひねるとお湯が出るから」

「う、うんニャァァ。暖かいニャ、どこで火をたいているニャ?」


 家の中でも、カルチャーショックが止まらないらしい。


「とにかく、体洗って。ボディーソープはこれで、シャンプーはこっち……」

「ぼでぃ……なんニャ?」

「えっと、液体状の石けんっていえば良いのかな?」

「石けんって……なんだニャ?」


 あ、石けんも知らないんだ。

 困ったなぁ。


 男の子か、あるいは女の子でも幼児ならともかく、リルラの年齢の女の子を裸にひんむいて洗ってやるわけにもいかない。


「えっと、とりあえず手だけ洗ってみようか」


 ボディーソープをちょっとだけつけて、リルラの手を洗ってあげた。


「な、なんと……リルラの手がつるっつるになったニャ。すごいニャ」

「こんなかんじで、体全体を洗って」

「分かったニャ、でもフードとってもいいニャ?」

「家の中では大丈夫」

「やったニャ」


 リルラはその場で服を脱ぎだした。


「お、おい、待て、俺は出て行くから……」

「うニャ? そんなに恥ずかしがらなくてもいいニャ」


 いや、お前はもう少し恥ずかしがれ。


「男に裸を見られるなんて、どうってことないニャ。奴隷のご主人様とは……」

「それ以上は言うな」


 なんとなく、リルラが言いたいことをさっし、俺は止めた。

 そんな記憶、早く忘れたほうがいい。


「とにかく、俺は向こうの部屋で待っているから、体を洗ってくれ」

「分かったニャ」


 リルラは明るい子だ。

 だが、言葉の端々から、異世界でつらい思いをしていたのが伝わってくる。

 当然だ。何しろ奴隷という身分だったのだ。

 それでも、彼女は天真爛漫に生きている。


(すごいよなぁ)


 と、思ったその時だった。

 風呂場からリルラの悲鳴が聞こえた。


「ニャニャニャニャニャニャァァァァ」


 ただ事ではない声だ。

 トロールに襲われたときですら、あそこまでの悲鳴は上げていなかった。


「どうしたリルラ!?」


 慌てて廊下に出てみると、浴室からリルラが飛び出してきた。

 びしょ濡れの全裸で。

 俺は瞬間的に天井を向いて、リルラの体から目をそらした。


「な、リルラ、なにしてんだよ!?」

「あっちぃニャ、リルラ、焼け死ぬニャ」


 ええ?

 あ、ひょっとして。


 俺はとりあえずリルラの体をバスタオルで巻いてから、浴室を覗いてみた。

 シャワーの温度が最高温度になっていた。


「なんで、ここイジったんだよ?」

「ニャァ、ごめんなさいニャ」

「いや、ちゃんと説明しなかった俺が悪かった。リルラ、大丈夫か?」

「うんニャァ、驚いたニャァ」


 どうやら大丈夫そうだ。

 焼け死ぬなどと言っていたが、そんなわけはない。

 このシャワーの最大温度はせいぜい50℃ちょっと。

 ビックリはしただろうが、やけどにもなっていないだろう。


 そんなドッキリハプニングもありつつ、俺たちはようやく寝ることになった。

 リルラに布団で寝るように言うと、またまた大騒ぎ。


「この布団、すっごいふかふかニャ。貴族様用かニャ?」

「ああ、もう、そういう大げさ反応はいいから」


 いちいち色々感動するリルラの反応はかわいいが、さすがにもう寝たい。


「俺は隣の部屋で寝るから」

「えー、なんでニャ? 一緒に寝るニャ」

「男女一緒に同じ部屋で寝るなんてできるか」

「そうかニャ? 奴隷部屋では男も女も一緒だったニャ」

「ここは奴隷部屋じゃないからな。じゃあ、電気消すぞ」


 そこまで言って、ふと思う。


「そういえば、電気にはあまり驚かないんだな?」

「魔石で光る仕掛けなら、ボクらの世界にもあったニャ。新宿ほどたくさんはなかったけど」


 あ、そうなんだ。

 しかし、新生活第1日目から、女の子を連れ込むことになるとはなぁ。

 まあ、リルラにそういう感情をむけるつもりはないけどね。


 しかし、リルラは本当にこのままで良いんだろうか?


「リルラ、本当に元の世界に戻らなくていいのか?」

「絶対に戻りたくないニャ。クートと一緒がいいニャ」

「そっか。奴隷には戻りたくないよなぁ」

「それもそうだけど、クートと別れるのはイヤだニャ」


 大げさだなぁ。

 まだ出会って半日ちょっとなのに。


 苦笑しつつ、俺は自分の布団に潜って目をつぶった。


 こうして、長かった1日が終わった。

 いろいろあって興奮していたが、疲れも大きかったのだろう。

 俺はほどなくして眠りについたのだった。

といったわけで、長かった1日も終わりです。

空斗とリルラの冒険はまだまだ始まったばかり。

是非最後までお楽しみください。


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本作はカクヨムにて先行配信中です。続きが気になる方はカクヨムにも是非おいでください。

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