爆発の幻想に
大河の読み通りルフェル陣営の魔獣たちが活発に動き出しているのを認識したウルザ陣営は、『イグドラシル』や『ベスティア』、『ネクロ』などへの侵攻を止め、対ルフェル陣営への動きを見せ始めた。
とはいえまったく兵力を割り振らなくなったかと言えばそういう訳ではなく、ルフェル陣営との戦いに水を差されない程度の牽制用の兵力は残していたが。
「ルフェル陣営もウルザ陣営と戦う前に『ネクロ』に潰しておこうとは考えていないようですね」
「タイガの新型『自爆』が効いてる。『偽りのウルザ陣営作戦』で魔界兵団にかなりの被害が出ているから、ウルザと戦う前にこれ以上の被害は許されないんだよ」
「ですね。信者たちは復活できませんからね。だからといって勇者たちだけの少数精鋭で攻めてもレイアさんやイージスさんがいますし。それなら敵を盾にして爆発を防いだ方が安全だと考えたのでしょう」
今後の事を考えればシーラの支配領域と『ネクロ』、二方向から攻撃されるのはルフェル陣営としても避けたい所である。しかしだからといって無闇に『ネクロ』を攻め、また新型『自爆』により多くの兵を失えば、それこそシーラ陣営の本隊からの侵攻に耐えられなくなってしまう。
ウルザと同様、ルフェルもポイントは有り余っているため勇者が死亡しても即座に復活させられるのだが、むしろ精鋭として育て上げた信者たちが1度に大量に倒されるという観点から新型『自爆』は脅威となってしまう。しかもルフェル目線では新型『自爆』はウルザの勇者が起点となり爆発する事以外は詳細が判明していない。
そのため『自爆』などの大規模攻撃に対するメジャーな対抗策である、範囲外にいることを意識し仮に範囲内に入ってしまったら攻撃が発動する前に潰すという方法がとれない。
ルフェル陣営としては、敵味方入り混じる乱戦によって爆発をさせない。仮に爆発されても此方と同じだけ敵側にも損害が出るようにするのが最善の対抗策となるのだ。
「まあ実際に1度でもルフェル陣営が新型『自爆』を発動する俺の姿を見れば脅威ではないと判断すると思いますが、警戒してくれている間は警戒しておいてもらいましょう」
「うん」
『道連れの呪い』を使い遠隔で『自爆』させているため、予備動作なども相手視点では認識できず全滅してしまった新型『自爆』であるが、実際は不死族による生命力譲渡など威力や爆発範囲相応の予備動作が必須の技である。
その事実をルフェルが知れば直ぐにでも『ネクロ』は攻め込まれる事になるので、今しばらくはクレア爆弾の幻想に囚われていて欲しいと思う大河。
そんな話をしつつ、ウルザ陣営とルフェル陣営の戦いが本格的に始まった後の動きについてレイアと会議をしていると、シーラが後ろから声を掛けてくる。
「なので、偽装と牽制の意味も込めて……」
[あのー、タイガさん。今少しいいですか?]
「あ、シーラ様。大丈夫ですよ。どうかなされましたか?」
[えーとですね。フィーが今後の戦力増強のために『神域』を止めて地上に降りてくるって言っているのですが……]
「エルフィード様が?」
エルフィードが『神域』を放棄する事を提案している、というシーラからの相談に驚く大河たち。基本的に『神域』とは維持できなくなりなくなく手放す事はあっても自ら手放す事などあり得ないような代物であるため、驚くのは当然であった。
[『神域』の維持費よりも複数の領域の設置費及び維持費の方が圧倒的に安いので、それならという事みたいなんです]
「まあ安いですしシーラ様のように主神が地上にいるからこそのメリットはあります。ポイント節約という観点から見れば一番節約できる箇所にも思えますね。ですがそれは止めた方が良いですね」
「……安全第一ってこと?」
「そうですね……エルフィード様もそうですがオリーバさんたち含めエルフの皆さんの安全も脅かされる結果になりますから」
[フィーだけじゃなくてですか?]
「はい。まあそこら辺も含めて説明して、思い留まるように説得してみます。ついでに頼みたい事もありますので」
[はい。お願いします]
『神域』を放棄し地上に降りるという行為は、シーラがそうであるようにメリットも多い。しかしそれ以上に圧倒的なデメリットが存在するのだ。
それは主神だけではなくその勇者や信者にも及ぶ可能性がある。それを伝えるべく大河はエルフィードと神通話をする事にするのであった。




