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偽りが露呈すると

 大河たちが危険を冒して実行した改宗偽装は見事ウルザを騙すことに成功したようであり、少し前までの疑心暗鬼に陥り縮こまっていたのが嘘のようにウルザは調子を取り戻したようであった。


 大河は、シーラと共に『イグドラシル』近郊でウルザ陣営と戦闘を行っているレイアと神託通話をして情報共有を行っていた。


「空神イクタ様の話を聞く限りかなり調子に乗ってるみたいですね」

「うん。想像以上に調子に乗っている。昨日撃退した筈なのに性懲りもなく今日も仕掛けてきた。私も見たら直ぐに引いていったけど」

[それだけレイアを警戒しているということね]


 大河が改宗したと信じ込んでいるウルザにとって、シーラ陣営など本来戦力差で押し切れるような勢力でしかない。

 しかし『呪怨導師(カースマスター)』となり更に高位の呪いを扱えるようになったレイアの存在が、ウルザ陣営に力押しを許さない。強引な攻めをした結果、多額の賠償金などを請求されることを恐れているのだろう。


 そうなればある程度頭を使っての戦略勝ちを狙ってくるウルザ陣営であるが、大河の改宗偽装をウルザに知らせた事で一気に信頼を勝ち取ることに成功したシーラ陣営からの刺客空神イクタからの情報などによって情報戦でもこちら側が優位を取っている。

 今のところウルザ陣営からの攻撃は十分抗える範囲内であった。 


「タイガ。他の場所はどんな感じ?」

「……『イグドラシル』にレイアさんがいるので、『ネクロ』や『ベスティア』は力押しが多い印象ですね。まあ『ネクロ』は搦め手の得意な不死族の皆さんとイージスさんですから問題ありませんし、『ベスティア』も元々ウルザ陣営に抗ってましたからね。今回の侵攻程度びくともしてませんね」

「そう」


 ウルザ陣営の侵攻は『イグドラシル』以外にも向けられた。

 ただ数々の勇者を返り討ちにした『無敵要塞』イージスと、頭数は少なくとも1人1人が強靭かつ多彩な術を使いこなす不死族たちが守る『ネクロ』も、そして元々内通者を抱えた状態ですらウルザ陣営からの侵攻に抗えていた『ベスティア』も今のところは問題は無さそうである。


「それに、そろそろウルザ陣営も俺たちばかりに構ってられなくなりそうですしね」

「うん。ウルザ陣営との戦いを始めて以降、ルフェル陣営から派遣されてきた魔獣がそこら中で見掛けるようになった。それにはウルザ陣営も気づいていると思う」

「ウルザも現状水を開けられている宿敵を放置して憂さ晴らしを優先するほどは愚かでは無いと思いますから」


 加えてウルザは、ルフェルを放置できない。ただでさえ大河に足を引っ張られた影響でルフェルに遅れを取っているウルザとしては、優先順位を間違える訳にはいかないだろう。

 今回の侵攻も憂さ晴らしという面はあるが、どちらかというと後に控えたルフェル陣営との戦いに集中するための牽制的な意味合いもあるのだ。

  

 ただ、もうそろそろウルザ陣営からの侵攻は収まるだろうと考え安心している大河とは反対にレイアは別の懸念がある様子であった。


「……ウルザはいいけど、私たちとウルザ陣営がそれなりにやりあっている光景をルフェル陣営に見せちゃったとなると、偽りのウルザ陣営の効果が薄れない?」


 レイアの懸念とは少し前の作戦によってルフェル陣営に植え付けた偽りのウルザ陣営が、今回の小競り合いで疑われるのでは無いかということであった。

 シーラ陣営のバックにウルザ陣営がいると思わせる事でルフェル陣営から無闇に攻められる事を防ごうとしていた『偽りのウルザ陣営作戦』である。しかし今回、シーラ陣営とウルザ陣営は小競り合いとはいえがっつりと戦っている。これを見られたとなれば、ルフェル陣営が偽りであると気づいてしまうのでは無いかとレイアは心配になったのだ。


「前にタイガが私たちとウルザ陣営が接触しているのを見れば、何かしらの作戦の準備かもってルフェル陣営が勘繰るって言ってた」

「はい。言いましたね」

「でも、あの小競り合いを見たら流石に同じ陣営だとは思われないと思う」

「……でも確証は持てませんよね。仲違い、若しくは元々敵対関係であり騙されていたかもしれないと疑念は抱くと思いますが、ウルザの行動を完全に信じ込む事は、ウルザをよく知っている者なら尚更出来ませんよね?」

「……そうだね」

「なので問題ありません。ルフェルのような情報収集を行い万全を期して動くタイプなら、むしろ疑念を抱いてくれた方がありがたいくらいです」


 レイアが言ったように、今回の小競り合いを目撃したルフェル陣営の中で『偽りのウルザ陣営作戦』の効果は薄れるだろうが、それでも幾つもの疑念が残る。

 そしてこれまでの行動から推測するにルフェルは、その疑念を放置して足元を掬われる事を嫌い慎重に動いてくるだろう。

 改宗偽装を行い、しばらくは表立って活動せず影でこそこそと動きたいと考えている大河たちとしては、抱いた疑念から慎重に動いてくれた方が都合が良いのだ。


「どうせ改宗偽装をバラすタイミングで、偽りのウルザ陣営もバレると思いますので、それほど気にしなくても良いと思います」

「なるほど」

「ということでもう少しだけ続くであろうウルザ陣営からの侵攻の対応、よろしくお願いします」

「うん。分かった」


 その大河の言葉によって安心した様子のレイアなのであった。

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