閑話 女神シーラ
女神シーラ。少し前まで勇者も1人しかおらず、神にとっての命と言っても過言ではない『神域』も維持できないほどの零細神であった。
その原因はこの世界の二大勢力の1柱である女神ウルザに目を付けられた結果、勇者や支配領域を根こそぎ奪われてしまったからであった。
「シーラ様。取り敢えず私は『イグドラシル』に向かいますのでエルフィード様に転移の許可を取っていただけますか?」
[あ、レイア。分かったわ]
そんなシーラをこれまで支えてくれたのが勇者レイアである。
元々ウルザの勇者であったレイアは、不死族という種族から、捨て駒としてこき使われていた。そんなレイアを見かねたシーラの勇者たちがシーラの元にレイアを連れて来たことが2人の出会いであった。
レイアがいなければシーラは『神域』を失い地上に落とされた時点でどこかの陣営に滅ぼされていただろう。
[……フィーには連絡したからいつでも転移可能よ。今すぐに行く?]
「そうですね。エルフたちにタイガ考案のウルザ陣営の対策を早めに伝授しておきたいので今すぐ行きます」
[タイガさん考案の……凄そうね。分かったわ。じゃあ送るわね]
「よろしくお願いいたします」
ここまでレイアが献身的にシーラを支えている要因は、一番は当然シーラへの忠誠心故なのだが、レイアをシーラの勇者に改宗したことが原因でシーラがウルザから目をつけられてしまったと負い目を感じている事も1つあることをシーラは知っている。
そんなことは無いと、どうせウルザであれば自分と同じ女神だからなどという些細なイチャモンで攻撃してきたと、シーラたちが何度言ったとしてもレイアは自責を止めなかった。
不死族の特性である死にづらさを活用しウルザの勇者時代よりも危険な任務を幾つも行いシーラを守ってくれていた。
そんなレイアであるが最近は、自責の念に苛まれる事が減ってきたように思える。過去の後悔よりも、未来の希望に目を向けるようになった。そのようにレイアを、そしてシーラすら救ってくれた救世主こそ、シーラ陣営の勇者でありながらシーラの勇者ではないという不思議な立場を今も貫いているオリガミ・タイガであった。
「レイアさんは出発したんですね」
[あ、はい。タイガさんの女神ウルザ陣営対策を携えて今、出発しました]
「ウルザ対策って……別にそんな大層なものじゃ無いですよ。今回ようやく俺というお荷物から解放されたウルザにとって一番避けたいのは、自分の勇者が呪いを受け、第2第3の俺が生み出されてしまう事ですからね。他陣営よりも極端に呪いなどを避けた動きをしてくると思いますので、その心理を利用した作戦を幾つか用意しただけですよ」
[十分大層だと思いますよ]
「そうですか?」
元々はウルザの勇者としてこの世界に転生したタイガであるが、『自爆』という主神の足を引っ張る事しかできないスキルを授けられたためウルザに捨てられてしまった。
そして捨てられた地でシーラ陣営に拾われたのだ。
普通ならば『自爆』などという外れスキルを活用することなど出来ないのだが、タイガは類い稀なる嫌がらせの才能を見せ、主神であるウルザを限界寸前まで追い詰めて見せたのだ。
タイガ本人は自身の能力について謙遜しているが、彼の能力はシーラ陣営だけでなく、二大勢力のウルザや魔神ルフェルですら一目を置いているのである。
「まあ本当なら領域からじゃなくて俺が外で指示を出せればもう少し細かい部分まで詰められるんですが……」
[駄目です]
「ですよね……なので基本的な部分だけ決めて、後はレイアさんたちにおまかせしています」
[それでいいです。タイガさんはレイア以上に放っておいたら直ぐに無茶するので心配です]
「無茶はしませんよ。今は『自爆』も出来ませんから」
[死ななかったら無茶に入らない訳ではありませんよ。タイガさんは私と一緒にレイアたちの応援ですよ!]
「……分かりました。一緒に応援、頑張ります」
そんなタイガであるが、スキル『自爆』によって死になれてしまっているからか、自身の安全を省みない作戦を平気で実行する事が多い。
現在タイガは呪いとスキルのコンボによって主神による蘇生を受けられない状態であるにも関わらず、何かあれば現場に出ようとしてしまいそうである。
謙虚な姿勢は美徳なのだが、シーラたちに取ってタイガがどれ程大きな存在であるかをタイガは十分理解していないのだ。
そのためシーラは普段よりも少し厳しめな口調でタイガを注意をする。
しかし生来の朗らかさが抜けていないシーラのため、それを聞いたタイガは和んでしまうのであった




