仲良しならば
『ノワール墓地』に突如として現れたゴウショウと対峙した大河は、『自爆』による緊急避難を図ったようにゴウショウの目からは見えていた。
しかし実際には大河は『自爆』などしていなかった。
「……行きましたかね?」
「……うん。行った。イージスから逃げるのに必死でここの結界には気が付かずだった」
「あと、レイアさんが起こしてくれた爆発の完成度が高かったお陰ですよ」
「いつもタイガの『自爆』見てるから」
「ありがとうございます」
ゴウショウが『自爆』だと勘違いするようにレイアが魔法によって引き起こした単なる爆発。それにゴウショウが気を取られている内に大河は後方に張っておいた隠蔽結界に飛び込んだのだ。
これによってあたかも大河は『自爆』によって消えたように見せ掛けたのだ。ただ一般的な鑑定スキルなら兎も角、ユニークスキルである『看破の魔眼』を持つゴウショウであれば、じっくりと周囲を観察すれば不死族秘蔵の隠蔽結界であろうと容易く見破る事ができる。
しかし今回、ゴウショウがそれを見破る事ができ無かったのは、大河を鑑定することを優先した事、誘爆というトラウマにより爆発を必要以上に警戒してしまった事、そしてイージスという後方からの刺客によって周囲を観察する暇が無かった事などが要因であった。
「取り敢えず第一段階は完了ですね。後はイージスさんがどのくらい勇者たちを倒すかですが……」
「本気のイージスで、相手が転移とか使わないならほぼ全員倒せると思う。けど今回は数人に留めるんだよね?」
「はい。一応騙せてますから。撃破ポイントが少ないよりも、全滅させてしまってもしかしたら罠だったのかもと思われる方が良くありませんので」
「うん」
現在、隠蔽結界の中で隠れている大河たちの代わりにゴウショウたちの相手をしているイージスには、『隠れ教徒』や隠蔽結界が相手にバレてしまった場合にのみ敵の殲滅をお願いしていた。
これまでの経験からウルザは、ある程度物事が上手くいっている場合は楽観的になることが分かっている。
目の上のたんこぶならぬ爆弾であった大河が改宗してくれたという吉報を確認したゴウショウたちが、運悪く突撃してきたイージスに倒されたとなれば、これまで何度も騙されてきたウルザの疑心暗鬼が顔を出しかねない。とはいえイージスの実力で誰も倒せず逃げられるとそれはそれで疑わしいので、テキトーに間引くように指示を出しているのであった。
「まあ、結果として空神イクタ様の勇者さんも犠牲にしてしまいましたが」
「魔境の外で警戒してた人が見逃されたらそれこそ疑われるから仕方がない。それにイクタ様の勇者トライデンとイージスは仲良しだから大丈夫」
「仲良し……そういえばイージスさんの主神の天神アマタ様と空神イクタ様って」
「うん、姉弟。だからアマタ様が『神域』を維持できなくなって『リュート遺跡』に落ちる前までは、イージスとトライデンは仲良しだった」
今回、ウルザに大河の改宗を伝えるという役割を担ったのは、空神イクタという神であった。大河は今回の作戦が行われるまで知らなかったのだが、空神イクタは、既にウルザ陣営の手によって滅ぼされたイージスの元主神である天神アマタの弟神であった。
その関係からイージスとイクタの勇者トライデンも親交が深かったようだ。
「……仲良し。なら余計に倒させてしまうのは申し訳なかったのですが」
「そう? 仲良しだから問題ないよ?」
「レグルスさんの時も思いましたが、俺とレイアさんたちで仲良しの意味合いが違う気がします……」
獣王レグルスに力による話し合いを仕掛けに行った際も大河は感じていたが、レイアたちの中では仲良しなら何をやっても構わないと思っているのかもしれない。
そんな話をしているとレイアの『生命感知』に反応があった。
「……イージスが止まった。逃げさせたみたい」
「そうですか。それならイージスさんが戻ってき次第『ネクロ』に帰還しましょう」
「うん」
イージスがゴウショウたちを追い払ってくれた。これで本当に作戦は終了したため、大河たちはイージスの帰還を待ち、『ネクロ』に戻ることにするのであった。




