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看破の勇者ゴウショウ

 エルフの隠れ里『ユグド』を強襲する作戦で、裏切り者の勇者オリガミ・タイガを相手に何も出来ず、ただ逃げることしか出来ないという大失態を晒したゴウショウたちは、その件以降、陣営内での立場を著しく落としていた。

 本来はタイガが転生した瞬間からであるが、それを知らない勇者や信者たちからすれば、『ユグド』での1件以降、ウルザ陣営の凋落が始まったと感じてしまうのだ。そのため、一層ゴウショウたちを白い目で見てくる者たちは多い。


 そんなゴウショウたちの下にウルザから神託が授けられる。しかも内容もタイガに関してであった。


「ゴウショウさん。ウルザ様はなんと?」

「……『ネクロ』近郊の魔境、『ノワール墓地』において、オリガミ・タイガが発見されたらしい。それの確認に向かえって内容だった」

「オリガミ・タイガ……ですか」

「……確認というのは? 発見されたのですよね? 偽物の可能性があるからゴウショウさんの『看破の魔眼』で確認するのですか?」

「いや、何でも発見されたオリガミ・タイガがウルザ様の勇者から女神シーラの勇者へ改宗しているらしい。その確認だ」

「え!?」


 ゴウショウから改宗という言葉が出てきた事で、聞いていた勇者たちは驚く。何故なら勇者10人を擁するこのメンバーたちがタイガに一方的な敗北を喫したのは、タイガが自分たちと同じウルザの勇者だったからであった。


「そうだ。つまりこの情報が真実だった場合、あのような『自爆』することしか出来ない勇者など恐るるに足りない」

「それなら早速、『ノワール墓地』に向かいましょう!」

「ああ。だがオリガミ・タイガ相手に油断は出来ない。実は改宗しておらず俺たちを誘い出すつもりなのかもしれない。だから『看破の魔眼』での確認が終わるまではお前たちは『誘爆の呪い』の範囲内には絶対に入るなよ!」

「分かってますよ!」


 仮に情報が正しくタイガがウルザの勇者ではなくなっていた場合、ゴウショウたちにとっては恨みを晴らす絶好の機会である。そのため彼らは意気揚々と『ノワール墓地』へと向かっていく。


 ゴウショウたちが『ノワール墓地』に到着すると、彼らの到着に気がついた発見者である空神イクタの勇者が近づいてくる。


「状況は?」

「……オリガミ・タイガは1人で何か作業をしている様子です。『ノワール墓地』にはアンデッドなどのモンスターはいますが、オリガミ・タイガを襲う様子はありません」

「……不死族と手を組んでるって話だからな。アンデッドたちも従えてるのか?」

「……そうかもしれません。ですので『生命感知』や『魔力感知』で他に人は居ないことは確認しておりますが……」

「不死族には『生命感知』に引っ掛からない秘法があるし、魔境だと『魔力感知』も難しいからな。分かった。なら俺たち全員で入ろう。アンタは……」

「私はここで『ネクロ』からの援軍を警戒しておきます」

「ああ、頼む……行くぞ!」

「「「はい!」」」


 情報としては1人であるらしい。とはいえ不死族の街『ネクロ』から程近い魔境であるため、不死族たちが潜んでいる場合も考えられる。

 不死族はその死にづらい身体を利用して身体を限界まで仮死状態に近づけることで『生命感知』を掻い潜る技法を有している。加えて魔力が充満している『魔境』では魔力の扱いに長けている相手を『魔力感知』で探すのはかなり難しい。

 そのため1人だと考え油断しない方が良いだろうと考えたゴウショウは、全員で『ノワール墓地』に突入する。


「……いました! 北東方向に300です」

「分かった。俺が確認する……もし俺が誘爆された場合は頼むぞ」

「はい!」


 一行は、『生命感知』にタイガの反応を捉える。その方向にゴウショウだけが走っていく。すると直ぐにタイガの姿が見える。


「レイアさんたちに頼まれてたのは……うん?」

「……いた」

「だ、誰だ!?」

「……気づかれたか。それなら『看破の魔眼』!」


 タイガもゴウショウの接近に気が付き驚いている様子であった。即座に『自爆』され確認が出来ないと困るので、ゴウショウは直ぐに『看破の魔眼』によってタイガのステータスを確認する。

 

名前:織上大河(オリガミタイガ)

種族:人族

クラス:勇者(女神シーラ)

年齢:18歳

レベル:4

状態:呪い

ユニークスキル

・自爆

弱き転生(弱くてニューゲーム)

スキル

・敬信


 そのステータスを見たゴウショウは確信する。オリガミ・タイガは女神シーラの勇者へと改宗したのだと。

 そしてタイガは、ゴウショウが『誘爆の呪い』の範囲内に入っているにも関わらず、『自爆』を発動しようともしない。これこそが一番の改宗した証かも知らない。ウルザからシーラへ自爆代の請求先が変化したことによって、『自爆』は気軽に発動できるスキルでは無くなったのだろう。


「……アンタは『ユグド』の時の」

「覚えていたんだな。あの時はいいようにやられちまったが、どうやら今回はそうはいかないようだな」

「どうかな?」

「ああ、そういう心理戦はいらないぜ。俺の魔眼がお前の改宗をバッチリ確認してるんだからな。多分今頃ウルザ様も俺が確認したステータスを確認してくださってる頃だろうよ」

「…………なるほど。ならせめて、『自爆』!」

「なっ!」


 そう思っていた矢先に放たれる『自爆』。しかしその爆発はゴウショウを巻き込むほどの範囲ではなかった。

 ウルザの名前が出た瞬間の発動であることから考えて、せめてウルザに視覚的なダメージを与えようとした動きなのかもしれないが、視覚共有の仕様をあまり理解していないゴウショウには意図は分からなかった。


「……びびった。ただ『誘爆の呪い』の範囲内だったのに誘爆されなかった。これは確定でいいな。なら、アイツらにも……」

「ゴウショウさん!」

「ああ、お前たち。俺は平気――」

「イージスです。『無敵要塞』イージスがここにやって来てます!」

「イージスだと!? どうして」

「分かりません。ですが既に空神の勇者がやられたようで!」


 爆発を心配してやってきたと思っていた部下たちが、爆発よりももっと恐ろしい勇者から逃げて来たことを知るゴウショウ。

 ウルザ陣営の精鋭たちを1人でなぎ倒した無敵の勇者イージス。数ではゴウショウたちが上回っているが、正面からぶつかれば被害は甚大だろう。


「なら、撤退だ。もう確認は済んだし、オリガミ・タイガも『自爆』済みだ。これ以上ここに留まる理由もない」

「はい!」


 折角任務を成功したのに、死亡によって評価を落とされたくないゴウショウたちは、撤退を選択する。

 そのため、タイガが立っていた場所の後ろをじっくりと観察すれば気づけたかもしれない、魔境の豊富な魔力に隠された結界を見流してしまうのであった。

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