今後について
現在、大河たちはシーラの結界内で会議をしていた。内容は『自爆』と『不死の呪い』のコンボによって大損失を与えた女神ウルザについてと、今後、どのように動くべきかについてであった。
[私たちの元に入っている撃破ポイントのおよそ倍とすると5万近いポイントをタイガさんを転生させてからの数日でウルザは失ったことになります]
「……ウルザの総ポイント的に5万という数字は大きそうですか?」
[総ポイントという観点ではそこまででしょう。ただ強化を重ねた勇者でも撃破ポイントは1万程度。さらに広大な支配領域を誇るウルザでも、そこから得られる固定収入は1月で数千といったところです]
「……中々ポイントを獲得しにくいってことですね。ということは、ここ数日での収入ならウルザよりもシーラ様の方が上って事ですね!」
[タイガさんのお陰ですよ。ただ無理だけはなさらないでくださいね]
「ありがとうございます! 俺も『弱き転生』を獲得出来る程度のポイントを稼げたらペースを落としていく予定です」
『神々の聖戦』は、勇者の抽選や強化などに多くのポイントが必要な反面、多くのポイントを獲得するのが難しい構造となっている。そんな中、数日で莫大な収益を得た『自爆』戦法は本当の意味でのチートと言えるだろう。
シーラはハイペースで『自爆』を繰り返す大河の身を案じて言葉を掛けてくれる。大河としては『自爆』を使用すると、勝手に爆発し気が付いたら復活しているため、肉体的にも精神的にも負担は無い。そのためこれからも『自爆』による嫌がらせは継続していくつもりである。
ただ、ペースは徐々に落としていこうとは考えていた。その大河の考えに疑わしそうな視線を浮かべるのはここ数日間、大河のハイペースな『自爆』に散々付き合わされたレイアであった。
「本当に?」
「はい。今後の事を考えれば」
「今後?」
「仮にこのペースで『自爆』を続ければ、ウルザのポイントを全損させることも夢じゃないかもしれません」
「うん」
「ですが、その前に必ずウルザは対策を練って来るでしょう。……シーラ様、ポイントを使うことで自分の勇者の視界を共有したり、『神域』外にいる勇者に神託を下したり出来るのですよね?」
[はい。そうですよ。他神の領域内など不可能な場所があったり反対にそのような事ができなくさせるデバフがあったりもしますが]
ウルザは大河を自分の支配領域外でランダムに転生させた。しかしポイントを使えば大河が現在どこで誰と一緒に居るのかなどを制限はあれど知ることが可能である。
「ポイントが大損失が俺のせいだと分かればウルザはここに勇者を派遣する筈です」
「あの女の勇者程度なら私が撃退できる」
「はい。そうだと思います。ですが、ウルザの勇者たちが全員、魔族たちとの戦争やら、支配領域の防衛をかなぐり捨ててここに突撃してきたら流石のレイアさんでも厳しいでしょう」
「そんなこと」
「現在、女神ウルザに唯一対抗できている魔神ですら五分です。しかし『自爆』戦法を使えば一方的にポイントを奪うことができます。脅威度はこちらの方が上だと思います」
そして場所が分かれば大河を殺すべく、ウルザは自身の勇者を派遣して来るだろう。仮に現在のハイペースを続け、ウルザが追い込まれれば追い込まれるほど、派遣する勇者の数は増えることになる。
『自爆』と『不死の呪い』のコンボは嫌いな主神からポイントを奪い取るという点では有用であるが、決して強い訳ではない。純粋に強化された勇者を相手にすれば簡単に殺されてしまうだろう。
「ですので、ウルザの勇者がここに来たタイミングでペースを落として行こうと思います。ウルザが勇者を派遣した事で自爆のペースが落ちたと錯覚するように」
「…なるほど」
「ペースが落ちれば他の神々に攻め込まれるリスクを取ってまで俺を殺しには来ないと思います。派遣された勇者を撃退できれば尚更」
「でも、シーラ様が大量にポイントを稼がれてるのを危惧して勇者を大量に送り込むかも?」
現在『神々の聖戦』は女神ウルザと魔神ルフェルのほぼ一騎討ちの状況であるが、ウルザから奪ったポイントでシーラが対等してくることを危惧して早い内に対応してくる可能性もあるのではないかとレイアは考えた。
しかし大河の意見は異なる。
「それは…大丈夫じゃないですか?」
「なんで?」
「シーラ様やレイアさんですら『自爆』の詳細の仕組みについては知らなかったですよね? 『不死の呪い』が攻撃判定となって撃破ポイントが入るっていうのも」
「確かに」
「『自爆』を見た瞬間、ゴミ扱いして俺を捨てたウルザがそれを分かっているとは思いません。となると端から見れば『自爆』戦法はウルザのポイントを一方的に削る単なる嫌がらせに見える筈です」
『神々の聖戦』において圧倒的外れスキルである『自爆』を活用しようと考えると者がいないため、その詳細な仕組みなども知られていない。
つまり殆どの神々は『自爆』戦法を知ったところで、嫌がらせとしては画期的である程度の評価しかできないということである。それはウルザも同様である。
[『自爆』戦法の真価を半分も理解できていないからこそ、私たちの想定の半分以下しか戦力を投入してこないということてすね?]
「なるほど」
「奪われていることに気が付いていない今はチャンスです。だからこそ今ハイペースでやり過ぎると短期的にはプラスでも長期的にはマイナスになると思います。生かさず殺さずが嫌がらせの基本ですから」
「……どっちが悪者か分かんないね」
大河の悪い顔を見て肩を竦めるレイアであるが、その表情は笑っているのであった。




