因縁の発端
大河が考えている案にシーラもレイアも呆れつつも賛成してくれた。そのため『自爆』戦法でこちら側がポイントを獲得しているという事は隠しながらウルザのポイントを限界まで搾り取ることに決定した。
そうして会議が終わる。
「さてと、レイアさん。魔力って回復しましたか? もうひと自爆したいんですが」
「……いいよ。やろう」
[まだやるのですか!]
「はい。いつ勇者が来るか分かりませんから。稼げる内にポイントを稼いでおきたいので」
[そ、そうですか……あ、そうだ。さっきちょうどクッキーを作って寝かせていたの。そろそろ良いタイミングだと思いますので、少し待っていてください]
「あ、シーラ様……気を遣わせてしまった」
「まあ、ここはシーラ様の好意に甘える」
会議が終わると直ぐに『自爆』を始めそうになる大河。理論的に『自爆』の正当性を訴えてくるため止める事はできないが、少しでも大河を癒そうと結界内にポツンと立っている小屋の台所でクッキーを焼いてくれたようだ。
流石にそんなシーラの好意を無下にはできないため、その場に座り直す。
クッキーを取りに行ったシーラを待つ2人。そういえばこの結界内でレイアと2人きりになった事は無かったため、ふと聞きたかった質問をレイアにしてみることにした。
「そういえばなんですけど…レイアさんって勇者としてどれくらい強いんですか?」
「急に何? 『自爆』する前に試してみる?」
不躾な質問にレイアは腰に差した剣に手を掛ける。すると大河は慌てた様子で手を振り誤解であることを伝える。
「いや、疑ってるとかじゃないです。レイアさんが強いのは魔獣の相手をしている様子とかで分かってます。ただ今回の策ってウルザに勇者を投入した事により『自爆』のペースが落ちたと思わせる必要があるので。ウルザにレイアさんの強さが認識されていると作戦がバレかねないかなと」
「そういうこと…」
「はい」
一応勇者として最低限の身体能力を持つ大河が魔獣から獲物としてしか見られていなかったのに対して、レイアが出没する範囲には魔獣が近付かないようにしていたり、腐っても勢力的にはトップクラスの神から派遣される勇者を恐れる様子がなかったりと、レイアが強力な勇者であることを大河は理解している。
しかしそれがウルザにも知られていた場合、少数の勇者を派遣しただけで『自爆』のペースが落ちた事に違和感を覚えられてしまう恐れがあると大河は考えたのだ。
大河の考えを聞いたレイアは納得したような言葉を呟くも、表情は複雑そうであった。
「えーと、何か聞いたらマズイ事だったですか? それなら別に……」
「ううん。タイガには話しておく。……私も大河と同じなの」
「同じですか?」
「私は元々女神ウルザの勇者だった。……弱いユニークスキルだったから途中で捨て駒にされたけど」
「え!」
レイアの告白に大河は驚く。レイアと大河は本当に境遇が同じであったようだ。
「捨て駒にされたときにシーラ様の勇者の1人に助けられて、その縁で改宗したの」
「そうだったんですね。でもレイアさんもユニークスキルは外れだったんですか?」
「……私のユニークスキルは成長型のスキルだった。今は育って『剣王』になってるけど、元々は数百ポイントで獲得できる『剣士』だった」
「成長型……なるほど」
勇者を大切に育てる発想など無いウルザの元では、育てるのにコストが掛かる大器晩成な成長型スキルは花開かないだろう。
「だからあの女は私を雑魚スキルを持った弱い勇者だと認識している筈」
「そうですか。なら大丈夫です。すみません変なことを聞いてしまって…」
「気にしないで。タイガには知ってて欲しかった。……シーラ様の勇者が騙されて改宗させられたのも、元々は私の改宗によってシーラ様があの女に目を付けられたのが発端だから」
「そんなこと……」
女神ウルザとの因縁。その発端は自分であると言うレイアにそんなことは無いと言いたかったが、その当時を知らない大河は安易に否定の言葉を掛けることができない。
しかし大河の思いは伝わったのか、先程までの複雑そうな表情から一変し、レイアの瞳には決意が現れていた。
「だから、私がシーラ様の勇者をあの女から取り返す。だから力を貸して欲しい」
「も、もちろんです!」
そんなレイアの決意の瞳に圧倒されながらも、大河はしっかりと頷くのであった。




