メッセージ性
大河の多種多様な嫌がらせ戦術に欠かせないのが、レイアが掛けてくれる呪いである。最初は毎回『不死の呪い』をシーラに頼んで授けてもらっていた。
しかき安全面、時間的効率を考えて当時のシーラ陣営にとっては多額ともいえるポイントを消費して『呪術師』という所有者の魔力消費のみで好きに呪いを掛けられるスキルを獲得してくれたのだ。
その時からシーラ陣営の躍進は始まったと言っても過言ではない。そんなレイアの『呪術師』がユニークスキルに覚醒した。
「レイアさん。どうですか『呪怨導師』の使い心地は?」
「うん。良い感じ。上位の呪いが使えるようになったこともだけど、呪いの同時発動回数も上がった」
「それは良かったです」
『呪怨導師』は『呪術師』では掛けられなかった、より上位の呪いも掛けられるようになるだけでなく、同時に掛けられる呪いの数の上限も引き上げられているようだ。
基本的に勇者でありながら、蘇生を神ではなく呪いに頼っている大河。そのため『不死の呪い』や『孤独の呪い』など常時呪いの枠を2、3個潰してしまっている。しかし、今回の覚醒によってその枠も拡張したため、よりレイアが活躍しやすくなったといえる。
そんなレイアの強化に喜びつつ、スキルを覚醒させた目的をそろそろ確かめる事にする。
「それではレイアさん、『孤独の呪い』の上位版は掛けていただいてもよろしいですか?」
「うん。掛ける。『孤高の呪い』」
『孤独の呪い』の上位の呪いと目されるのが、『孤高の呪い』である。神々のスキル一覧で説明分を見た限り主神との繋がりの一切を遮断するとの記載があり、まさに大河たちが求めていた呪いであった。
レイアから『孤高の呪い』を掛けられた大河自身は、特にこれまでとの変化は感じなかった。しかし、横から見ていたオリーバにはその変化が感じ取れたようだ。
「『孤独の呪い』では微かにあった女神ウルザとの繋がりが、『孤高の呪い』では消失しました。これなら大丈夫だと思います……一応私にも『孤高の呪い』を掛けて、確認しておきましょう」
「うん、そうだね」
「お願いします」
ただオリーバの五感にのみ頼って判断するのは、楽観的である。そのためオリーバにも掛け、オリーバがエルフィードの勇者一覧から見れなくなるのかを確認してもらうことにした。
「はい。分かりましたエルフィード様……無事一覧から消えていたそうです」
「ありがとうございます!」
「よかった」
その結果、『孤高の呪い』によって完全に主神からの繋がりを切る事が出来ることが証明された。これならば仮に疑われたとしても騙しきる事が出来るだろう。
「……孤独では単に自分がそう思ってるだけで、実は主神の助けを借りている。しかし孤高となり真に主神から自立する。そんなメッセージ性を感じますね」
「感じる?」
「いえ、私はあまり」
「だって。タイガの考えすぎ。スキル作った人もそこまで考えてない」
「そうですか……俺が新たに得たステータス偽装のスキル『隠れ教徒』とか、スキル1つ1つにメッセージがある気もするんですけどね」
レイアが『呪怨導師』を獲得したように大河も新たに『隠れ教徒』というクラスの主神の表示のみを変更するスキルを獲得していた。
この『隠れ教徒』は並の鑑定系のユニークスキルでは看破されず、最上位クラスのユニークスキルなどならば辛うじて看破できる可能性がある程度の、効果を超限定的にした事により隠蔽能力自体は強力なスキルとなっている。
ただこの『隠れ教徒』のみに対抗するスキルが存在する。それが『踏み絵』という、対象者の主神や信仰している神が分かるスキルであった。
信者を装い別の神を信仰している裏切り者を発見できる中々面白い性能はしているが、限定的過ぎるため存在すら知られていないようなスキルであった。
このような地味なスキル1つ1つを用意し、尚且つそんな地味スキルの対抗スキルまで用意する。しかも名前も拘っている。
ここまで多種多様なスキルがあるとなると、大河としては悪用しているつもりであったデメリットスキルも、ある程度想定されているのでは無いかと勘繰ってしまう。
「まあもし、『自爆』戦法の諸々が想定内だとしたら、もっともっと悪辣な嫌がらせを考えないといけませんね!」
「もっともっと悪辣な……」
ただそれで自信を失くす大河ではない。仮にここまでの作戦がスキル考案者の想定内であったのならば、これまで以上のクオリティの高い嫌がらせを産み出せば良いのだ。
そんなやる気を大河が漲らせていると、レイアが真剣な表情で忠告してくる。
「やる気があるのはいい。けど、『孤高の呪い』と『不死の呪い』、それに『弱き転生』を持つタイガは無宗教状態と同じ。だから気を付ける」
大河はユニークスキル『弱き転生』によって死亡時のペナルティであってもデバフが消えないようになっている。
そんな状態で『孤高の呪い』により主神からのポイントが使えず、『不死の呪い』により魂は主神の下に還らない。つまりは主神を失った無宗教状態の勇者と同じ状況であるのだ。
「……はい。安全性なども含めて作戦は考えます」
「うん」
「じゃあ、取り敢えず検証は終了ということで、他の方々も交えて作戦の最終打ち合わせを行いましょうか」
こうして、『改宗偽装作戦』の検証と事前準備を終えた大河たちは、決行のための打ち合わせを行うべく、領域に戻っていくのであった。




