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孤独の限界

 今回の作戦である改宗偽装をするにあたって重要なのは、ウルザの勇者が行うであろう、他者のステータスを見るスキルである『鑑定』などの結果を偽装する事。そして『鑑定』をした勇者の目の前で『自爆』し、魂、そしてポイントの請求がウルザの下にいかないと見せ付ける事である。


 ただそれらの点をクリアするのは想像以上に難しく、大河は検証を手伝ってくれているエルフィードの勇者オリーバと共に頭を悩ませていた。


「最初はウルザの勇者を精神系スキルや魔法で操っててのが確実かなと思ったんですが……少し難しそうですね」

「そうですね。女神ウルザが確認のためにどの勇者を派遣するか分かりませんからね」

「近くにいる勇者が来ると決めうちするのは危険ですし、改宗をウルザに伝える役の従属神に誘導してもらうって方法もリスクが高いですからね。となると俺のステータスを偽装するのが安定か」


 当初は視覚共有役のウルザの勇者もこちらで用意するつもりであった。そうすれば鑑定結果を偽装するだけでなく、大河が『自爆』したと見せ掛ける事も簡単にできるためである。

 ただクレアの『精神傀儡』と異なり一般的な精神系魔法はそこまでお手軽に人を操れる訳ではないようであり、不測の事態を想定すると大河がステータスを偽装する方が良いだろうと判断する。


「不死族の皆さんが扱う結界術の1つにステータスを偽装する類いのものもあった筈です。ただ上位鑑定スキルなどに抗うほどの性能では無いですし、結界などは見る者が見れば張られている事に気が付きますので、万全を期すのであればスキルを得ても良いかと」

「……そのレベルの鑑定を誤魔化すとなると相当ポイントを消費しますよね。それこそユニークレベルの……いやでも今回偽装する箇所はクラスの欄だけだからそこだけ誤魔化す系のスキルを探して……少し考えます」


 ステータスを偽装する手段はそれなりにあるのだが、それこそユニークスキルなどの『鑑定』を誤魔化すには、それ相応のスキルが必要である。

 ただステータスを偽装する場合、全てを偽装するか、若しくは戦闘関連のスキルやレベルなどのみ偽装するのが主流であろう。

 大河のようにクラスの『勇者(女神ウルザ)』のカッコ内のみ偽装したいと考える者は殆んどいないだろう。

 なんでそんなピンポイントなスキルがと思うようなスキルも豊富に取り揃えられているのが神々のスキル一覧である。しかも需要が少ないスキルほどポイント消費も抑えられるため、大河は探して見ることにする。


「他に気が付いた事はありますでしょうか?」

「……もう1つ。今回の肝である女神ウルザにタイガ様が改宗していると思わせる部分なのですが」

「はい」

「……ステータス偽造と『自爆』偽装だけでは、タイガ様が改宗したと騙せない可能性がございます」

「え? 本当ですか?」

「はい。『神々の聖戦(サンクトゥス)』のシステムに、ポイントを使うメリットが無いため殆んど使われない機能として自身の勇者を一覧に表示する機能がございますよね」

「え……あ、はい。ありましたね、そんな機能。それなら『孤独の呪い』で」

「……『孤独の呪い』では、あの勇者一覧から名前は消えない可能性が高いです」

「え!?」


 主神には自身の勇者に干渉する権能が備わっている。しかしその権能を無効化するのが『孤独の呪い』である。

 その呪いにこれまで助けられていた大河は、オリーバの言葉に驚いてしまう。しかし考えてみれば当然の事であった。


「……『孤独の呪い』は主神からの能動的な干渉を防いでしまう呪いです。主神との繋がりを全て拒絶する呪いではありません。仮に全てを拒絶するのであれば、ポイントの消費なども行われませんよね」

「あ! なるほど。言われてみればそうですね……」

「と偉そうに講釈を垂れましたが、私も『孤独の呪い』が掛かったタイガ様をよくよく観察してみて初めて気が付いたのですが……」


 神々の干渉を知覚できるオリーバが隣で目を凝らさなければ気が付かないほどの細い細い繋がり。それが『孤独の呪い』を受けた大河にも存在している事が分かった。

 基本的に呪いなどは掛けられてもすぐに解呪するものであるため、細かい仕様と殆んど使われない機能が組合わさると、かなり仕様の検証に詳しい大河であっても見逃してしまうことがある。

 実際に一覧に載るかどうかは実験してみないと分からないが、ポイントの不正使用が出来ているのである現状を踏まえれば一覧に載らないと考えるほど大河は楽観的ではない。


「……となるとその一覧に載らない方法を模索するか、作戦自体を変更する必要がありますね」

「一覧に載らないとなるとより強力な呪いやスキルですか?」

「『孤独の呪い』よりも更にデメリットの重いものとして『天涯孤独』というデメリット系ユニークスキルなどもあります。ですが、それを獲得するとこの作戦が終了した後が困るんですよね」


 一覧に載らないレベルとなると、ポイントの不正使用などすらできなくなってしまう可能性が高い。

 一応、転生した最初期に持っていたユニークスキル以外は、ユニークスキルもポイントを使って取り外す事も可能ではある。しかし外すには授けるよりも大量のポイントが必要であったりする。

 そのため大河としては悩みどころである。


「……でしたら呪いを強化するのはどうでしょうか?」

「呪いというと……レイアさんの『呪術師』ですか?」

「はい。『呪術師』をユニークスキルに覚醒させるのです。元となるスキルがあれば……10万ポイントくらいあれば可能なのでは?」

「10万か……『偽りのウルザ陣営作戦』の収益を考えても足が出てしまいますね」


 レイアの呪いを強化するということは、結果として大河も強化する事になる。とはいえこれからしばらくの間『自爆』戦法などによって稼ぐのは難しいかもしれないとなると、大河が即決できる金額では無かった。

 そのため大河が悩んでいると、そんな大河たちの会話を領域から聞いていたエルフィードの信託がオリーバに届けられる。


「え、はい。分かりました。タイガ様にお伝えします。タイガ様」

「はい?」

「エルフィード様からの御言葉を伝えさせていただきます。[その10万はフィーとライカが出すよ……あ、ライカからもオッケーってきたよ。だから大丈夫。ってことをこのまま伝えてね。今、伝えてね!] だそうです」

「はい? え、出すって……流石に10万ポイントは……」

「タイガ様をはじめ、シーラ様陣営の皆様には大変お世話になっております故、この間の作戦でもポイントを分配された事を、エルフィード様は少し気にしていらっしゃいました。ですのでエルフィード様のわがままを汲んでくださると嬉しいのですが……」

「……分かりました。レイアさんに連絡してみます」


 こうして、エルフィードたちの好意を受けつつ、検証を続けることにする大河たちであった。

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