ポイント収支
今回の『偽りのウルザ陣営作戦』は幸いにもクレア陽動隊以外の損失は無かったが、逆にこちらも大河の大爆発以外では相手に大した損害は与えられなかった。
そのため今作戦で転移や神託などを多用したシーラ陣営は、レイアたちが撃破した勇者たちから得られるポイントでどうにか赤字を免れる程度であった。本来ならば。
「いやー、クレア陽動隊とルフェル陣営のカーミラ部隊でしたっけ? あれが『道連れの呪い』によって倒された判定になってよかったですね。お陰で15万ポイントほどの黒字ですよ」
[はい。ただ、ライカとフィーと山分けしたので、私たちの取り分は5万ポイントですね。それでも大金です]
本来、大河はウルザの勇者であるため、『自爆』の爆発で敵勇者を討伐した場合、撃破ポイントはウルザが獲得する。
しかし今回の場合、大河の新型『自爆』では誰も倒していない。大河が新型『自爆』を発動した事により起動した『道連れの呪い』による遠隔『自爆』によってクレア陽動隊やカーミラ部隊を殲滅したのだ。
そのため撃破したのは大河に呪いを施したレイアという判定が下され、2つの部隊にいた勇者たちの撃破ポイントがシーラの元に加算されたのだ。
ただ、『神々の聖戦』の経験が大河より長く、ある程度肌感覚で勇者ごとの撃破ポイントなどを推測できるレイアたちは少し残念そうにしていた。
「……クレアとカーミラの撃破ポイントを1万、他を7千くらいと見積もるとだいたい15万強。ということは、不死族に生命力を譲渡されてもタイガの撃破ポイントが増えることはなさそう」
「そうだな。まあ、強化スキルを発動したら撃破ポイントが増えるなんて仕様は無いからな。妥当だろう。逆に自爆代を多くウルザに請求できるだけ御の字だと思った方が良いな」
他の主神のポイントを消費して使用するユニークスキルと同様、『自爆』もその威力を上げれば上げるだけ消費するポイントも上がる仕様である。それを利用したのが今回の新型『自爆』である。
本来スキルの威力を上げるには自身を鍛えるしかなく、鍛えればその分撃破ポイントも増えるのだが、今回は不死族の生命力譲渡という裏技を使い『自爆』の威力を上げたため、撃破ポイントは加算されなかったようだ。
ただ、残念がるレイアたちを横に、シーラは申し訳なさそうにしつつも安堵している様子であった。
[……いつも頑張ってポイントを稼いでくれているレイアたちには申し訳ないですが、もし仮に新型『自爆』でポイントが得られるとなれば、タイガさんと不死族の皆さんは無理をしてしまいますから、よかったかもしれません]
「……凄い。流石はシーラ様です。俺ですら最早気にしていない『自爆』のし過ぎを心配してくださるとは」
「最早というか、タイガは最初から気にしてない」
転生したばかりなのに、『自爆』と『不死の呪い』のコンボを思いつき即座に実行していた頃から、大河が『自爆』を恐れていると感じたことは無いレイアは呆れ気味に呟く。
「喉元過ぎればといいますか、『自爆』による衝撃は一瞬なのでまあ大したこと無いかなと」
「……『誘爆の呪い』で倒されてた人たちとかの反応を見るにそうは思えないけど。まあでもタイガに流されて私たちもあまり気にしなくなってるから、シーラ様は凄いです」
[レイア、それは褒めているんですか?]
実際どれ程なのかは『自爆』をしている本人にしか分からない部分ではあるが、『誘爆の呪い』で大河の『自爆』を追体験した者たちの恐れようから見るに、その衝撃は相当なものであろう。
そう考えると転生したばかりで、日に数十回も『自爆』していた大河の精神力は当時から異常であったのだろう。
そしてそんな異常さにレイアたちは段々と慣れてしまったが、シーラは未だ大河の『自爆』による消耗を気遣っている。このシーラの性格こそ、大河がこの陣営最大の武器だと称した部分そのものである。
ただ、シーラに心配されようが『自爆』は続けるのだが。
「まあ無い物ねだりしても意味はないので。新型『自爆』の仕様が分かってよかったと思っておきましょう」
「それに今後次第ではあるが、今の段階では作戦成功だからな」
シーラ陣営の収支はプラス。ルフェル陣営は勇者の育成し直しと替えのきかない魔界兵団等が消滅したのでかなりの損害を被っている。そしてウルザ陣営は従属神に損害が大きく、ウルザもクレアの処遇を決めあぐねているが、どちらにしても大損害といっても良い。
今後の布石を打つための作戦でここまで他陣営を引っ掻き回し、自分たちはちゃっかりと稼いでいるのだ。現時点では成功と言って良いだろう。
「……取り敢えずは相手の反応を待ちます。無いとは思いますが、ルフェル陣営が『ネクロ』に攻め込む決定をしたらレイアさんとイージスさんに出てもらうことになります」
「分かった」
「ルフェル陣営ってことは、ウルザ陣営の場合は?」
「その場合は、新型『自爆』と『道連れの呪い』の恐ろしさを体験させてあげますよ。ルフェル陣営だけに味わわせるのは不公平ですからね」
そういう大河の表情はとても悪い顔をしているのであった。




