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閑話 女神ウルザⅦ

 クレアの消息が分からなくなった街『スチル』を中心に調査を行ったが、一向にクレアは見つからない。それどころかクレアの悪い噂ばかりがウルザの耳に入ってくる。


[どうなってるの。クレアが、あのクレアが私を裏切ったっていうの!?]


 クレアとよく似た人物が不死族の街『ネクロ』に出入りしている姿を見ただとか、クレアがウルザの従属神の勇者や信者を『精神傀儡』で操り人形にしただとか。そういった聞きたくもない情報ばかりが入ってくる。

 

[分かりません。ただ情報を元に不死族の街『ネクロ』近辺調査しに行った者の殆どは戻らず……その何人かは操り人形として]

[もういい! お前たちが勝手な行動を取ったせいだって事はよく分かったわ! クレアどころの話ではない、あのゴミ勇者の情報を得ていたのに私に共有すらしなかったなんてね!]

[勝手……申し訳ありません]


 その噂を耳にしたウルザは即座に従属神たちに確認を取った。ウルザは否定して欲しかったが帰って来た答えは肯定であった。

 何でもクレアとは別に織上大河の情報を得た複数の従属神が彼を捕らえるために勇者たちを派遣したところその殆どが戻らず、戻ってきた数人も操り人形になってしまっていたとの事であった。

 それとクレアが『ネクロ』を出入りしているとの情報を合わせると、クレアの仕業であることが濃厚になる。


 その報告を受けたウルザは怒り狂った。タイガの情報を得たというのになぜ自分に報告しないのかと。

 自分をしっかりと省みれば、従属神たちがなぜ報告しなかったかなど明白であるというのに。


[……ただ、オリガミ・タイガが『ネクロ』近郊にいるのだとすれば、オリガミ・タイガはシーラ陣営から離れていないという事になるのでは無いでしょうか?]

[……離れていない?]

[は、はい。シーラ陣営唯一の勇者はあの不死族の姫レイアではありませんか。つまりオリガミ・タイガが『ネクロ』近郊]にいるのであれば……]

[つまり、お前は私がこれまで騙されることしかできない落ちぶれ神ごときの陳腐な策謀にまんまと踊らされていたと言いたいのかしら?]

[え、いえそういう訳では]

[……裏切り者がいると思わされて粛清までした私を愚かだとそう言いたいのね。もういいわ、下がりなさい……下がれ!]

[は、はい]


 建設的な意見を言った従属神であっても都合が悪ければ直ぐにヒステリックに怒鳴りつける。そんな彼女に良い報告なら兎も角、途中報告など怖くてできないだろう。


 ウルザは、1人残った『神域』内で先ほどの従属神の発言を思い返していた。


[……私たちの陣営に裏切り者はいない? それなら私がこれまでやってきたことは……いや、でも従属神たちは騙された結果操り人形にされた訳だし、あのゴミ勇者の情報が確かな訳では]


 薄々従属神の考えが正しいのではないかと思い始めているウルザであるが、そうなると自分は、相手の情報操作に踊らされて失態をさらし続けた事になる。それを素直に認める事が彼女にはできない。

 そのため、ウルザは臭い物に蓋をして別の事を考えることにした。


[……そうだ。今はあのゴミ勇者よりもクレアよ。『ネクロ』にクレアがいるとなると今、一番『ネクロ』に近い勇者に……うん? 魔獣の生存圏に、え!?]


 クレアがいるという情報がある『ネクロ』に向かわせる勇者を選定するため位置情報を確認したウルザの目に飛び込んでくるのは、魔獣の生存圏と魔族領の境界線上にいるクレアの位置情報であった。


[え、クレア、なぜそんな……あ、死亡した]


 そして、その位置情報はウルザが呆気に取られている間に儚く消滅した。位置的に魔獣か魔族に殺されたのだろう。


[え、どういうこと? 何でクレアがあんな所に……いや、今はクレアの被害がこれ以上広がらなかった事を喜ぶべきかしら? 従属神たちは知らないけれど、ポイント収支も……まさか]


 状況が分からず混乱しつつも安堵していたウルザであったが、背筋に寒気が生じるのを感じる。クレアは『ネクロ』に出入りしており、その『ネクロ』には大河もいるのではないかと言われている。

 つまり今回の件の損失は単にクレア1人が死亡しただけに留まらないのではないか賠償代がトラウマとなっているウルザはそう考えた。


 そのため慌ててポイント収支を確認するウルザ。しかし、危惧していた賠償代は今回、請求されていなかった。


[あ、よかった。まあ今回も自爆代はあるけどそれだけならぜんぜ、ん……ほぇ、自爆代10万]


 その代わり法外なまでの自爆代請求にウルザは目を見開き驚くのであった。


[え、な、値上がり!?]

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