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特大の飴

 結局、ルフェル陣営もウルザ陣営も『ネクロ』に攻め込んで来ることはなく、ただ大河が悪い顔を晒しただけとなった。

 爆発の規模とその威力を目の当たりにしたルフェルと高額な自爆代を叩き付けられたウルザ。やはりどちらの陣営も大河の規格外の新型『自爆』を警戒したのかもしれない。


「タイガ、可哀想。ウルザ陣営を新型『自爆』の餌食にできなかったからあんなに悲しそうな表情を浮かべてる」

「そんなになのか?」


 そんなに新型『自爆』の御披露目をしたかったのかとイージスが驚いていると、話が聞こえていた大河は慌てて否定する。


「……別に新型『自爆』をウルザ陣営にお見舞いできなかったから悲しんでいる訳ではありませんよ。その事について考えてはいましたが」

「ウルザが攻めて来なかったこと?」

「……まあ、これまでの事で流石のウルザも私たちを侮るのを止めたという事だろう。そう考えると警戒しなきゃならん気もするな」

「それもあると思います。ただ、事態はもっと深刻なのかなと」


 これまでのウルザは、大河のポイントの不正使用については警戒しつつも、大河たちの強さなどについてはまったくの無警戒であった。

 見付ければ簡単に捕まえられる存在程度に思われていた。しかし、今回ウルザ陣営は動いて来なかった。本当に大河が『ネクロ』にいるかどうかは半信半疑だったとしても、クレアと行動を共にしていたとの噂が流れている不死族の街『ネクロ』を襲う口実はあった筈なのにだ。

 それをイージスはウルザがシーラ陣営を侮るのを止めたのではないかと考えた。それは一部正しいだろう。しかし大河はもっと深刻な問題として捉えていた。


「どういう事?」

「これまでのウルザであれば、十中八九罠だったとしても俺を捕まえられる可能性があるのならば来ていた筈です。自分の懐が痛まない従属神の勇者や信者を使って」

「……それはそうかもしれないな。そしてウルザの勇者が含まれていなければ遠隔『自爆』はできないな。そう考えると少し危なかったのか?」

「まあそうなった場合は『賠償者』などを使って更なる経済的負担をウルザに……っとそれは置いておいて、ですが今回、従属神の勇者すら派遣してきませんでした。つまり、ウルザ陣営内でウルザの発言力が想定以上に下落している可能性があるのかもしれません」


 『誘爆の呪い』のコンボもあるため、ウルザの勇者が入っていない編成で『ネクロ』に攻め込まれる場合も想定していた大河であったが、それすら起きなかった。これまでならば考えられない事態である。


「発言力が低下って言ってもあのウルザがか? まあ確かにライカロープ様の下に寝返りを申し出た者すらいたからな。そういう事は無くはないんだろうけど、流石にウルザから直接命令されたら聞かざるを得ないんじゃないか?」

「はい。そうだと思います。なので実際の所はウルザが命令することを躊躇しているんだと思います」

「躊躇?」

「今回の件でクレアが裏切り、従属神たちの勇者たちが操り人形にされました。加えて不死族の街の周辺に俺がいるという情報を得たことで、俺は最初からシーラ陣営から離れていなかった可能性も出てきています」


 クレアを探すため多くのリソースを使い、結局クレアは裏切っており、多くの従属神たちの戦力が失われた。

 そして何より、一斉粛清など多くの損害を出しつつ敢行し続けた大河を匿っている従属神探しが、今回得た情報によるとまったく見当違いであった可能性まで浮上して来ている。いうならばウルザの命令によって行われたあらゆる事柄が全て裏目に出ている現状なのだ。


「……だがあのウルザだぞ? あれが自身の失敗程度で従属神の扱いを改めるような奴には思えないが」

「私もそう思う」

「だからこそ深刻なのかなと思っているんです」


 それでもこれまでのウルザであれば、悪びれもせず、むしろ従属神の誰かに責任を押し付け憂さ晴らしにもっと悪辣な命令を従属神に課していただろう。

 しかし今回はそうでは無かった。つまり失敗を恐れてしまったのか、自分の行いを反省しているのか、従属神に悪いと思っているのか。何が要因かは分からないが、ウルザの心境に変化があった可能性が高い。


「ウルザ陣営が脆くなるのは良いことじゃないのか?」

「ウルザ陣営が内部分裂を起こしかけている今、ウルザの発言力が低下すれば内部分裂は更に加速します。そしてウルザ陣営が崩壊すれば、ルフェル陣営を止める勢力が無くなってしまいます」

「私たちの勢力が拡大するまではウルザ陣営は盾になって貰わないと困る?」

「はい」

「……つまり盾になって貰わないと困るウルザ陣営を、手癖でついつい嫌がらせしすぎたら、思いの外ボロボロになり過ぎてしまったと」

「その通りです」


 『偽りのウルザ陣営作戦』の前ですら数柱の裏切り神が出たくらいだ。もし今、裏切りたい従属神たちを募ればもっと増える事だろう。

 そしてその状態を知ったとしてもウルザは止められないかもしれない。そこまで追い詰められるとは嫌がらせしていた大河自身も考えていなかったのだ。

 となると今後もルフェル陣営の壁役としてこき使うためにも、ウルザにはこれまで通り調子に乗っていて貰わないといけない。


「それで、どうするの?」

「これまで嫌がらせばかりしていたので、ここら辺で飴を与えようかなと」

「飴?」

「はい。シーラ様方に検証をお願いして出来そうだったらですが……ウルザに俺を殺させようかと思います」

「え!?」

「はぁ?」 


 そのために大河が用意しようとしている特大の飴に、レイアたちは大変驚くのであった。


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