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閑話 魔神ルフェルⅡ

 ルフェルは、自身の筆頭勇者であるデウスから至急の連絡を受けその連絡の内容に驚いていた。


[……ウルザ陣営の信者や勇者を率いたシンドウ・クレアがこちらに進攻してきているだと?]

「はい。現在は魔獣の生存圏で魔界兵団に足止めをさせていますが……戦況は芳しくありません」

[シンドウ・クレアだからな。対策をすればどうとでもなるが、奇襲を受ければいくら魔界兵団でも厳しいだろう。だが確かシンドウ・クレアは『ネクロ』近郊で活動していたんじゃ無いのか?]


 クレアが転生したばかりの頃はよく前線に出てきて暴れまわっていた。『精神傀儡』が万能ではなく、特に命令による精神操作は比較的に防ぎやすいという解析が出回り、狙われる対象となって以降は前線には出てこなかった。それでも奇襲性能はピカイチなため、できる限り監視を行い居場所を把握するように努めていた筈であった。

 

「……昨晩のうちに監視のため派遣させていた魔獣たちは排除されておりました。そして前回の件で空いた監視網の穴をすり抜けてここまで攻め込んで来たようです」

[……なるほどな]


 しかしデウスの『絶対君主』での監視網も万能ではない。ルフェルの信者となると膨大な数いるため、常にどの視点を見るかなどを取捨選択せねばならない。

 しかも現在はウルザ陣営の罠を警戒し監視網の穴をわざと空けている状況のため余計にである。


「大変申し訳ございません。私のミスです」

[いやいい。そもそも魔獣による監視が安定しないのは仕方がないし、監視網の穴をそのままにしたのも俺の指示だ。それにお前の事だ。既に対処の一手を打ってんだろ?]

「はい。既に『護耳(イヤープロテクト)』を付与したカーミラ部隊が援軍に向かっております」


 そのためルフェルは頭を下げるデウスを感情から叱責する事もしなかった。それに、長年の信頼からデウスがミスをそのまま放置するような男ではないということをルフェルは知っているのだ。


[……それなら問題ないか。カーミラ部隊が到着したら無事な魔界兵団は撤退させろ]

「分かりました。伏兵などがいたときの事を考え……な!」

[どうした、早速伏兵か!]


 そんなルフェルとデウスによる建設的な話し合いの最中、デウスの監視網が新たな侵入者の存在を関知する。


「伏兵といいますか……本隊といいますか」

[どういうことだ? シンドウ・クレアよりも大物が?]

「イージスです」

[はぁ?]

「『無敵要塞』のイージスが魔獣の生存圏内に現れました!」

[『無敵要塞』だど!? なんで天神アマタの置き土産がここに!?]


 デウスの『絶対君主』やクレアの『精神傀儡』といった応用性に優れたユニークスキルたちと純粋な戦闘能力だけで同格扱いを受けるユニークスキル『無敵要塞』を持つ勇者イージス。

 そんな彼女が攻め込んで来ているとの報告にシンドウ・クレアの名を聞いたとき以上に焦った声を出すルフェル。しかし報告はまだ続く

 

「それだけではありません。不死族の姫レイアにライカロープ陣営のフォルティスとベリハス、エルフィード陣営のオリーバなど著名な勇者たちも同時に現れました!」

[『ネクロ』につい先日までいたレイアは兎も角……ライカんとこの次席三席に、エルフィードんとこの筆頭だと!? おいおい、こりゃやべーぞ]

「はい」


 百獣ノ騎獅団の団長、副団長。エルフィードの筆頭勇者が魔族領へ近郊まで攻めてきている。これは単に敵勢力が増えたという問題ではない。

 亜人族たちの領域はウルザ陣営を挟んで反対側にある。それにも関わらずライカロープたちは戦力を、それも飛びっきりの戦力を派遣したのだ。単なる共闘関係などではあり得ない。そもそもあのウルザがルフェルを倒すためといえど他神と対等な立場に甘んじることを受け入れるとは思えない。


 つまりこれは、ライカロープたちは完全にウルザ陣営に下った事を意味するのだ。


[特にイージスがヤバイが、どいつもこいつも大物じゃねーか。取り敢えずカーミラ以外の四魔卿も出す。采配はミーチェをここに呼び常にお前と情報を共有させながらやらせろ。お前は他に伏兵がいないかの監視及び魔獣どもの指揮を担当しろ]

「分かりました」

[……たく、突然の危機到来だなまったくよぉ]

「……監視網を強化しても最後まで暴けなかったウルザ陣営の謎はこれだったのでしょうか? この奇襲を成功させるための」

[可能性はあるが……本当に奇襲を成功させたかったのなら順番がおかしい気もする。]


 クレアの周りを固める勇者や信者たちも弱くは無い。しかしイージスやレイア、フォルティスと比べると2段3段と落ちるのは確かである。

 奇襲性能がもっとも高いクレアを有効活用していない状況が少しルフェルには気になった。


[……今回の件は何かを隠すための囮か?]

「これほどの戦力を揃えてですか?」

[わからん。いや、取り敢えず今は目の前の危機を脱するぞ。ごちゃごちゃ考えるのはその後にする]

「はっ! 了解しました!」


 しかしルフェルはそんな疑問を頭の隅に追いやり、迫るイージスたちの対処に全力を尽くすことにするのであった。

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