偽りのウルザ陣営
ライカロープたちに偽大河の情報を得ても裏切らなかった神たちについての報告を終えたシーラが戻ってきたので、話は次に行う『偽りのウルザ陣営作戦』に移る。
「操り人形にしたウルザ陣営の人たちは、『ネクロ』周辺で待機しているんですよね?」
「うん。実験のために放った偽タイガ役とそれを連れ帰る勇者以外は『ネクロ』周辺に張った『孤独結界』の中で待機してる」
「……既に偽タイガについては気付かれているんですもんね。となるとさっさと次の行動に移した方が良さそうですね」
『精神傀儡』を受けた勇者を視覚共有した神は騙せても、『精神傀儡』を受けていない勇者の視覚から見たり、神が直接視たりした場合は騙せないようだ。そのため偽タイガを連れた勇者は自分の主神の支配領域に意気揚々と入っていき、少し経った後に偽タイガであることが判明し、他の勇者たちによって殺されていた。
相手方が、掛かっていた状態異常が『精神傀儡』であったことまで把握できているかは分からないが、偽タイガを捕らえるべく派遣した部隊は戻ってこず、何らかの精神操作系スキルによって操られた勇者たちだけが戻って来たのだ。部隊の者たちも操られどこかに連れていかれたと察するだろう。
となると、そんな彼ら次に起こす行動は部隊を救出しに来るか、ミイラ取りがミイラになることを恐れ静観するかの2択であろう。
「静観するならいいが、精神系スキルの対策をされて臨まれると中々に厄介だからな」
「だね。『精神傀儡』で楽に倒せてるけど勇者複数人に信者って相当の戦力。もし今回被害に遭った神々で協力されたらより厄介」
「そもそも『精神傀儡』で操らないなら戦う理由もありませんしね。なので救出部隊が派遣される前にとっとと作戦を始めちゃいましょう」
救出部隊も操り人形にして偽りのウルザ陣営を更に増やす事も少しだけ考えた大河であるが、欲をかきすぎてクレアが作戦開始前に死亡するなんて事態だけは防がなくてはいけない。
そのためリスクリターンが釣り合わないものは無視して大河たちは、作戦を始める事にする。
「それで……かき集めた偽ウルザ陣営はどこにぶつけるんだ? ウルザ陣営にぶつけて混乱を誘うのか?」
「いえ、偽ウルザ陣営は魔神ルフェル陣営にぶつけます。現在、予想よりもウルザ陣営がボロボロなようなのでこれ以上やると後々に響きそうですし」
「……今回集めた戦力はそこそこ多い。けど、そこまでルフェル陣営に被害を与えられるかといえば微妙。私とイージス2人の方が被害を与えられると思う」
レイアが言いたいことは理解している大河。偽ウルザ陣営をウルザ陣営にぶつけるのであれば、戦闘による被害以上に仲間であった筈の者たちと戦うことによる混乱を相手に与えることができる。
一方で対象をルフェル陣営にしてしまえば、戦闘による被害以外を相手に与える事が出来ないためもったいなく無いかというながレイアの意見であった。
「そうですね。ただ今回の作戦は、次に繋げる作戦という側面が強いので」
「次に?」
「ええ。ウルザ陣営でも確固たる地位を保持している勇者クレアが率いる部隊と連動してレイアさんやイージスさんが作戦行動を執ることで、魔神ルフェルからの認識を、シーラ様がウルザの軍門に下っているで確定させます」
「……疑惑を確信にさせる訳か」
「はい。そうすれば魔神視点では、今後こちらの全ての行動の後ろにウルザの影がちらつく事になります。相当邪魔ですよね」
「邪魔」
宗教改革の際などもウルザの関与を匂わせた結果、魔神陣営は『ネクロ』に攻め込んで来れなかったように、ウルザは本当に邪魔な存在なのだ。
そんなウルザ陣営とシーラ陣営が繋がっているという、様々な工作によってルフェル視点ではある程度確定的になっているであろう疑惑を、今回の作戦で確定させる。
「一応、ライカロープ様やエルフィード様にも応援をお願いしましたので、それも含めて魔神ルフェルには、本当よりもウルザ陣営を壮大なものと勘違いしてもらいます」
「お二人方も!?」
[そうなの! 協力してくれるの!]
「つまり、魔神ルフェルの視点だとウルザ陣営のみならず、他陣営としているが実は裏で繋がっていた陣営たちが協力して攻撃を仕掛けて来たと言うことになる訳か」
「はい」
レイアやイージスだけでもそれなりの被害が出せるだろうし、クレアの『精神傀儡』が通用すればそれ以上の被害を与えることができる。しかしそれは作戦の本筋ではない。
『偽りのウルザ陣営作戦』は、その名前の通り、魔神ルフェルの中で偽りのウルザ陣営を確定させ、今後、偽りのウルザ陣営前提で行動させるように思考を縛るための作戦なのであった。




