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確認に次ぐ確認

「『私の言うことに従いなさい』」


 『ネクロ』からほど近い魔境『ノワール墓地』、現在は魔獣やモンスターたちはシーラの信者に改宗済みであるが、そこに大挙をなして攻め込んで来た人族たちは、その言葉を聞いた瞬間、意識を失ってしまう。


「……上手くいった。耳栓、オフしていい」

「……ああ。上手くいったのか。まあこんな場所にクレアがいるとは思えないだろうからな。当然だな」

「うん……クレア、貴方は今来た者たちに念入りに『精神傀儡』を掛けて回って」

「……はい。分かりました」

 

 そんな罠に引っ掛かった者たちの姿を隠れて監視していたレイアたちは、クレアにより『精神傀儡』を行使し確実に操り人形にするように指示を出す。


「それにしても早かったな。まだライカロープ様方が情報を流してから数日だぞ」

「……それだけウルザ陣営の状況が悪いんだと思う。早くタイガを見つけないと取り返しがつかなくなるくらい」

「もう取り返しはつかないだろうけどな」

「うん」


 ライカロープたちは、寝返ってきたウルザの従属神たちに対して、

[貴方と同じく元従属神の1柱が人族領からほど近い場所でタイガを匿っていたが、捜索が厳しくなる一方でどんどんと辺境に追いやられていってるそうなので、もし助けを求められたら協力してあげて欲しい]

などのでたらめを言い、偽の大河の居場所を伝えていった。

 ライカロープもエルフィードもあまり嘘をつくのが得意な方ではないため、本人たちは上手く騙せたか心配そうにしていたが、見事に『精神傀儡』の罠に引っ掛かった者たちを見るに、問題なさそうである。


「さてと、取り敢えずコイツらは不死族の人たちに任せて次のポイントに行くんだよな?」

「うん。本当は偽ウルザ陣営で一纏めにしておきたいけど、流石にこの人数だと無理。私が同時に掛けられる『孤独の呪い』にも限度があるから」

「まあ、『孤独の呪い』の欠点は、不死族が編み出した場所単位で神からの干渉を防ぐ結界術で補完できるからな。動かせないって欠点はあるが」


 錆びた街『スチル』でクレアを拐ったときにも活用した『孤独の呪い』の効果を付与した結界。魔法に秀でた不死族数人が必要があるなど設置は大変であるが、その結界内にいさえすれば人数は関係なしに主人からの干渉を封じられる優れた性能を誇る。

 現在ここ『ノワール墓地』の一部区画もその結界が張られており、来るべき偽りのウルザ陣営が立ち上がるときまで、結界の維持管理を務める不死族の者たちの監視下で、今回操り人形となった者たちは待機する事となる。


 そのためレイアたちは不死族たちに後の事は任せて、クレアを連れライカロープたちが従属神たちに伝えた次の場所に向かおうとする。

 その時、レイアは大河から出発前に頼まれていた事を思い出す。


「じゃあそろそろ……あ、そうだ、忘れてた」

「何をだ?」

「1つタイガから実験を頼まれてた」

「実験?」

「うん。『精神傀儡』を使って主神を騙すことはできるのかの実験」

「『精神傀儡』で主神を騙す? また変な事を考えるな」


 神ならばこれまでいくらでも騙してきたが、スキルを使ってというのが想像がつかないイージス。


「……領域内、ましてや『神域』内にいる神様にスキルを食らわせる手段はない。そもそも神様は私たち勇者なんかより上位存在だからスキルの効果が薄い」

「そうだな。滅ぼされた神々もいるから無効化するって訳じゃないがな。それで?」

「でもタイガは一度『神域』内にいるウルザにスキルを使って攻撃を食らわせている」

「ウルザに……ああ。視覚共有させて『自爆』の閃光を見せるってやつか。確かに……」

「つまり視覚共有をさせればこちら側からも神々へ干渉できる証明。だからタイガは視覚共有の詳細な仕様を調べたいみたい。ついでに『精神傀儡』の仕様も」


 ウルザのその後の反応から視覚共有で『自爆』の閃光を見せるという嫌がらせは上手くいったのだろう。 

 そのため次の段階として視覚共有の細かい仕様を知ることが重要だと大河は考えた。そのついでに『精神傀儡』も。


「仕様?」

「えーと、『精神傀儡』で偽タイガを本物のタイガだと思い込むようされた勇者に主神が視覚共有した場合、主神はどう見えると思う?」

「どうって……」

「『鑑定眼』とかでステータス確認した場合は? 他の視覚系スキルだと? みたいな事を実験するために、今回用意した偽タイガと、偽タイガを本物だと思い込んだ勇者を一人、帰す」

「……仮に視覚共有越しの神すら騙せるのか、即座に見破られるのかを確認するってことか。仕様確認は大事ってやつだな」

「そういうこと。だからイージスはクレアを連れて先に行ってて。私も実験が終わり次第向かう」

「了解だ」


 この実験の結果によってはまた新たな嫌がらせが生み出されるだろう事を予感しつつ、レイアたちは次の行動に移っていくのであった。


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