日課の嫌がらせ
今日も危険な魔獣たちが大量に住み着いていた森において壮絶な爆発音が響き渡る。なぜ住み着いていたと過去形なのかと言えば、数日前から始まった定期的な爆発に恐れをなした魔獣たちが軒並み逃げ出したからである。
しかしそれも仕方がない。大気を震わす轟音に加え、目が眩むような激しい閃光としっかりと根が張っている大樹すら吹き飛ばしかねない爆風が定期的に襲い掛かってくる場所に住み続けることなど不可能であろう。
この爆発を引き起こしているのは、大河の『自爆』であった。威力だけならばユニークスキルの中でも最高クラスのスキルである『自爆』は、この森を瞬く間にクレーターだらけ更地に変えていく。
「ふぅ」
「…復活した」
「今回の爆発は…クレーターを見るにまあまあかな?」
「タイガ、爆発批評してるとこ悪いけど呪うからこっち来て」
「あ、レイアさん、ありがとうございます!」
本来であれば自身の命を犠牲にして放たれる『自爆』を大河は毎日の日課のように使用できているのは、『不死の呪い』の効果を悪用しての事であった。
「はい、『不死の呪い』掛けたよ」
「えーと、はい。助かります」
「それにしても…よくこんな方法思い付いたね」
「何がですか?」
「『不死の呪い』の死亡しても主神の元に行かずに強制的に転生させられるってデバフと使用するだけでポイントを浪費する上、死亡してしまうっていう『自爆』のデメリットを組み合わせるこの方法」
「いや、だって…1回の死亡と『自爆』でポイント浪費したって嫌がらせにもならないでしょ?」
大河は『自爆』のデメリットを説明された時からこれを使って女神ウルザに嫌がらせが出来ないものかと考えていた。
ただ1度の死亡と『自爆』による消費ポイント程度ではため息1つで終わってしまうだろう。かといって主神に歯向かおうとしている大河が死亡してきたとなれば蘇生などされる訳もない。
その点『不死の呪い』があれば何度でも強制的に転生し『自爆』を繰り返す事ができるのだ。
「まあ、死亡時のステータスリセットに『不死の呪い』も含まれちゃうのが残念ですけど」
「本来は喜ぶところ。でも私が掛けてあげられるから」
「それは本当にありがたいです。貴重なポイントを使って『呪術師』まで獲得してくださって」
「……ありがたいのは私たちの方。呪いを掛けたのが攻撃判定のお陰で貴方の撃破ポイントがシーラ様に加算されてるから。『呪術師』獲得できたのもそのお陰だし」
これは嬉しい誤算であったのだが、勇者を倒した場合に加算される撃破ポイントは、『自爆』を使用した場合、使用前までで最も有効な攻撃を与えた者の主神に加算される判定のようであった。
そしてその攻撃に『不死の呪い』も含まれるため大河が『自爆』する度にシーラにポイントが加算されていくのだ。
その加算されたポイントでレイアが新たに獲得したスキルが『呪術師』。『不死の呪い』などを含む様々な呪いを自身の魔力を消費することで掛けられるようになるスキルである。
最初は『自爆』したらシーラの元に行き『不死の呪い』を掛けて貰うというのを繰り返していたが、『不死の呪い』ではない状態で死亡したら即アウトな大河の安全面に配慮した結果、レイアに『呪術師』を授け、『不死の呪い』で復活したら即座に掛ける今の方式が確立した。
尚、大河の『自爆』頻度はシーラたちの予想を遥かに上回るほどハイペースであったため、ポイント消費の面を考えても『呪術師』を授けた方が圧倒的に節約になっているのである。
「毎回ポイント消費した上で呪いを掛け直してもらうのは心苦しかったので良かったです」
「…ただ毎回私が掛け直せる訳じゃ無いから、『不死の呪い』のユニークスキル『不死の呪縛』やデバフや呪いのみを死んでも引き継げる『弱き転生』みたいなユニークスキルが取らないと」
とはいえ、現在は魔獣も逃げ出した森の中であるため危険はないが、ここまでハイペースに『自爆』を繰り返していれば、そろそろ女神ウルザも異変に気が付く頃であろう。
そうなれば大河を回収すべく刺客を送ってくるなどの対応をしてくるだろう。そのため、大河としても安全策を講じなくてはならない。その策の1つが死亡時のステータスリセットで『不死の呪い』が消えないようにする事であった。
「そうですね。蘇生と『自爆』の消費ポイントを考えると勇者100回分くらいは倒された計算になりますもんね。となると流石にあの女でも気が付きますよね」
「うん。もうそんなになる」
「でもデバフとはいえユニークスキルってお高いんですよね……まあ『弱き転生』なら、俺が今の倍くらい『自爆』すれば買えますかね?」
「今の…倍?」
「え、はい」
「えーと、今日はちょっと魔力が厳しいから休も?」
「あ、そうですか! すみません気が利かなくて」
「ううん」
単純計算あと50回ほど『自爆』すると平然と言ってのける大河に、歴戦の勇者であるレイアも心配となり自身の魔力切れを盾に休ませる事にするのであった。




