不死の呪い
シーラたちから『神々の聖戦』について、そして女神ウルザとの因縁について説明を受けた大河は、自身がかなり危うい立場にいることを自覚する。
「てことは俺が死んだ場合も蘇生されずにそのままにされる可能性が高いという事ですね」
[タイガさんが仮に今生で他神の勇者を倒すなどの功績を挙げるなどをすれば蘇生される可能性はあります。しかしその場合、貴方は敵を『自爆』で殺すだけの人間爆弾として使われる事となります]
「……そう言えば捨てられる時にそんなような事を言われた気がします。魔族の1人でも巻き込めればって」
『自爆』により消費するポイントと蘇生に必要なポイントを差し引いてプラスになるのであれば、次の生もあるのかもしれない。しかしそれはあの女神の尖兵として役に立つという屈辱的な栄誉の先にある生である。
大河自身の恨みも当然あるが、シーラやレイアの仇である女の役に立ってまで生にしがみつきたいとは思えない。
「となると『自爆』をせずにどうにか…ああでも、俺が何かをすればするほどあの女のポイントになるのか。微々たるポイントだろうけどそれも癪だな」
かといって女神ウルザの勇者である限り、自分の行いが彼女の役に立ってしまう。大河は八方塞がりな気分になる。
それに対してシーラが光栄な提案をしてくれる。
[…でしたら改宗するのはどうでしょうか]
「改宗、つまりシーラ様の勇者になるという事ですね」
[はい。タイガさんはレイアとも仲良く出来そうですし。どうでしょうか?]
シーラの勇者になる。自分の事だけを考えるのであれば悩む事すら烏滸がましいレベルの提案である。
出会ってから少ししか経っていないものの、シーラがどれだけ人格者なのかは肌で感じている。もしこの提案を受け入れれば、仮に大河がポイントを浪費するだけの役立たずな存在であろうと、シーラは蘇生してくれるだろう。
しかしそれでは大河の方が申し訳ない。
「…すみません。聞けば聞くほど俺は不良債権です。無計画にシーラ様のお世話になることはできません」
[そんな事私は気にしません。レイアもそうですよね]
「……シーラ様の決定には従います。ですが、正直今の我々にタイガを勇者として受け入れられる余裕はありません」
[レイア!]
「いえ、レイアさんの言う通りだと思います。お二人に迷惑は掛けたくありませんので」
そう言って大河は頭を下げる。しかし、そんな大河を見つめながらレイアは更に言葉を続ける。
「ただ…シーラ様の御力を使えば改宗はせずともタイガを強化する事は可能です。それくらいであれば可能かと」
[レイア!]
「俺としてはありがたいですけど……いいんですか?」
[もちろんです。とはいっても大量のポイントが必要な強力なスキルはお渡しできませんが]
「いやいや、そんなこと!」
そう恥ずかしそうに呟くシーラに対して、大河は取れそうになるほど首を横に振るのであった。
シーラが提示してくれた授けられるポイント範囲内のスキル一覧を大河は眺めていた。勇者として大先輩に当たるレイアのおすすめのスキルなどを見てみたが、勇者としてのアイデンティティーであるユニークスキルを補えるようなものは残念ながら無い。
「はぁー。強くなるっていう観点よりも、死ににくいとかに目を向けて…ってこれは!」
そのため強さではなく生存能力を高めるという視点でスキル一覧を見ていると、目につく名前のモノがあった。
「レイアさん、この『不死の呪い』ってどういうモノでしょうか?」
「『不死の呪い』? それ、強化じゃなくて敵勇者への罠とかの欄」
「え? あ、本当だ…不死って書いてあるから俺にぴったりだと思ったんですが」
「勇者はポイントさえあれば不死だから。それは……いいかも」
「え? どういう事ですか?」
大河が見つけたスキル『不死の呪い』は、強化スキルではなく、敵対勇者に付与するデバフスキルであった。
そのためレイアは呆れながら『不死の呪い』のデメリットについて説明しようとする。しかしその瞬間、彼女は今の大河に必要なスキルこそこの『不死の呪い』ではないかと閃く。
「本来、死亡した勇者は主神の元に行きリセットしたステータスを強化して再度転生される。でも『不死の呪い』は主神の元に行かず弱い状態で強制的に転生させられるっていうデバフ」
「なるほど!」
『不死の呪い』は、付与された状態で死亡すると弱い状態で再度転生させられるため、他の勇者たちにいわゆるリスポーンキルをされやすくなってしまうというデバフである。
しかし主神の元に行けば、ほぼ確定で蘇生されずに放置されるであろう大河にとってそのデバフはバフとなり得る。
そのため大河は興奮気味に叫ぶ。
「すごいですね!」
「うん。これならタイガの場合、1つ命が増える」
「あ、いえ。それもそうなんですが、『不死の呪い』と俺の不良債権スキル『自爆』を使えば、あの女のポイント、めちゃくちゃ浪費させられませんか?」
「……え? 本気?」
ただその興奮は命が繋がった喜びからでは無かった事にレイアは戸惑うのであった。




