神々の聖戦
シーラという善良な神の勇者となっているレイアに羨望の眼差しを向ける大河。零細神だと自虐するシーラであるが、仮に有名で偉い女神だったとしてもあの女神ウルザなどとは比べ物にならないと思ってしまう。
その考えはレイアも同じようで大河からの眼差しを気持ち良さそうに浴びている。しかしシーラはそれを嗜める。
[こほん。この世界について分かっていないタイガさんは兎も角、レイアまで便乗しないでください]
「すみません」
「この世界の事ですか?」
[はい。タイガさんは説明を受けずに転生なされたのですよね。でしたらまずは、現在この世界で起こっている『神々の聖戦』について説明させていただきます]
そう言ってシーラは、現在この世界で行われている神々による争いについて説明し出した。
この世界に数多いる神々の長を務める最高神が突如として最高神の座を降り次代に譲ると言い出したことにより、最高神の座を奪い合う争いが始まった。
とはいえ神々が直接争えばこの世界自体が崩壊してしまいかねない。そのため定められたルールが自身の代理として『勇者』を定め競い合うというものであった。
[各々の勇者同士を戦わせ、ポイントを奪い合う。これが『神々の聖戦』です]
「ポイント…あの女もそんなこと言ってました」
[はい。ポイントは貯めるだけではなく使う事もできます。我々はそのポイントで勇者の抽選を行ったり、選ばれた勇者の強化をしたりします]
ポイントは他の神に選ばれた勇者を倒す以外にも自身を信仰する信者を繁栄させたりと、様々な方法で獲得する事ができる。
そのため人族や亜人族の主神である女神ウルザなどは潤沢なポイントを保有している事になる。そのポイントを優秀な勇者に投資する事で更に他神からポイントを奪う。基本的にこの争いはポイントを貯め勇者を強くしていくというのを繰り返すものであるようだ。
「えーと、シーラ様」
[はい、なんでしょうか?]
「その仮に勇者が殺されたとしたら復活とかって…」
[もちろんポイントを使用する事で蘇生させることは可能です。ですが…死亡してしまうとその時点までに得ているユニークスキル以外のステータスは失われてしまいます。タイガさんの場合は、『自爆』以外のスキルですね]
「え!」
[それと…ユニークスキルには使用するだけで主神のポイントを使用してしまう系統のスキルがありまして…『自爆』もそれに該当します]
「はい!?」
つまりシーラの話を要約すると、大河を勇者として運用するためには最低限ポイントを使って強化しなければならない。
しかし大河が『自爆』を使用した瞬間にその強化に使用したポイントごと吹き飛んでしまう。更に『自爆』を使用するだけでポイントが消費されるだけでなく、その都度蘇生のためのポイントも必要となる。
「え、『自爆』って本当に絶望的じゃ」
「可哀想だね」
「レイアさん…」
この争いのルールを教えられた大河は、ゴミスキルだと言われる理由をようやく理解しそのまま崩れ落ちてしまうのであった。
とはいえ元々『自爆』に関しては期待などしていなかった事もあり大河はすぐに元気を取り戻す。
「ふう。大体この世界に関しては理解できました」
「立ち直り早い」
「ぐずぐずしてても仕方がないですから。それよりも話を続けましょう。シーラ様は勇者がレイアさんしかいないのですよね? このルールだと多少ポイントを使ってでも勇者を揃えた方が有利な気がするのですか?」
[はい。勇者が持つユニークスキルはそれぞれ凄まじい性能を誇ります。勇者は多ければ多いほど良いというのはその通りでしょう]
「……ではなぜ?」
勇者1人を特化して強化しているとその勇者が亡くなった際の損失は大きい。
勇者の抽選にはそれなりのポイントが掛かるが、抽選された勇者は確定で1つユニークスキルを持って選ばれる。死亡時に消失しないユニークスキルをポイントで渡すという手段もあるが、それを行うには勇者の抽選などとは比べ物にならないポイントが必要となる。
そのため、この『神々の聖戦』の基本戦略は勇者を揃える事にある。それはこういった詳しいポイントなどのルールを知らない大河ですら思う事である。シーラやレイアが思い付かない筈もない。
大河の問い掛けに言い淀むシーラの変わりにレイアが発言する。
「かつてシーラ様の勇者はそれなりに存在した。皆精鋭たちだった」
「その方たちはどこに?」
「…女神ウルザに騙され改宗させられた上で殺された」
「改宗ですか?」
「ポイントを消費することで主神を変える事ができる。本来なら勇者の同意がなければ出来ない行為だけど、シーラ様の勇者たちは騙されて改宗させられてしまった」
「それで殺されたと…でも勇者は蘇生できるのですよね。でしたら蘇生してきたところを」
「……蘇生するかどうかはその勇者の主神が決定できる。あの最低最悪の女神が敵に寝返ることが確定している者にポイントを使う筈がない」
『自爆』だと判明した瞬間、ポイントも時間ももったいないと、ゴミを見る目で自分を捨てた女神ウルザならばそうするだろう
また、そんな仕打ちをされていたのであれば、自分が女神ウルザの勇者であると知った瞬間にレイアが斬り掛かってきた事にも納得ができる大河なのであった。




