善良な神
連れてこられる最中、女性の大河に対する態度は軟化し、名前など簡単な質問には答えてくれた。
これが『自爆』を授かったことによる同情効果だとすると頬を伝うものがあるが、頼れる者がいない中で現在唯一意志疎通が取れる者とは友好的な関係を築いておきたい所であるため結果オーライだろう。
それなりに長時間歩き、話題も尽きた大河は、前を歩く女性レイアに質問をする
「レイアさん、まだ目的地には着きませんか?」
「ううん。今、到着した」
「到着? えーとレイアさん、何もありませんけど…」
レイアに到着を告げられた大河は戸惑う。先程まで歩いてきた森の中と変わらない空間であった。当然大河をここに呼んだレイアの主の姿も見えない。
しかしそんな大河の反応などレイアは折り込み済みな様子であった。
「結界が張られているの。でも私と一緒に入れば大丈夫だから」
「結界。そんなのもあるんですね」
「ついてきて」
「は、はい」
レイアと一緒に結界を通過すると結果内は先程までの森の中とは全く雰囲気が異なる空間が広がっていた。言うなれば女神ウルザがいた真っ白な部屋に似ている気もする。
そしてその空間には1人の女性が待ち構えていた。
「綺麗だ…」
「粗相!」
「あ! す、すいません」
その女性に見惚れてしまった大河は思わず本音が漏れてしまう。容姿という点ではレイアも相当優れているのだが、表現に迷うがその存在自体が綺麗だと大河は感じたのだ。
しかし初対面で褒め言葉とはいえ不躾な振る舞いをしたことに変わりはない。そのためレイアに即刻注意され、大河はすぐに頭を下げる。
[ふふ。いえ、いいのですレイア。タイガさんも頭を上げてください]
「で、ですがシーラ様」
[レイア?]
「はい。…タイガ」
「あ、はい、ありがとうございます!」
レイアからシーラと呼ばれたその女性は、そんな失礼な大河を許してくれる。
[この短い時間で仲良くなったようですねレイア]
「違います」
[そうですか。ふふ、まあいいでしょう。さてタイガさん]
「あ、はい!」
嬉しそうにレイアを見つめていたシーラが大河に視線を移す。ここからが大河をこの場所に連れてきた本題のようだ。
[ご足労いただきありがとうございます。私はレイアの主であるシーラと申します]
「あ、織上大河です!」
[はい。貴方の事はレイア越しにある程度は聞いていました。女神ウルザに振り回されて…大変でしたね]
「え、はい…えーとレイアさんもそうだったんですが、シーラ様?も、あの女のことご存知なんですか? この世界だとそんなに女神って存在は有名なんでしょうか?」
この世界については何も知らないに等しい大河としては、この世界に来てから出会った意志疎通できる人たち全員が全員女神を知っている事が普通なのか珍しいのか分からなかった。
[そうですね。私やレイアほど神について知っている者は珍しいです。しかし女神ウルザは人族や亜人族の主神として有名ですので、名前を知っている人自体は多くいます]
「そうなんですね。あの女が…」
あの傲慢で慈悲の欠片も無いような女が人類の神の代表だと思うと、大河はこの世界に希望が見いだせない気がしてしまう。
しかし仮にも女神ウルザの勇者として転生した
者にあるまじき不敬な様子を見ても、訂正する者はいない。レイアに至っては大河の悪態に大きく頷いている。
そんな明らかに女神ウルザの本性を知っていそうな態度に大河は二人の正体が分かった気がする。
「シーラ様やレイアさんが他の人たちより詳しいのはもしかして…」
[はい。タイガさんの今、想像している通り、私も女神ウルザと同様の女神であり、レイアは私の勇者です。まあウルザとは異なり勇者もレイアしかいない零細神ですが]
その大河の推察は正しいのであった。そうであれば大河の感想は1つであった。
「レイアさん!」
「なに?」
「ズルいです!」
「いいでしょ」
[あの、だから零細神なんですよー]




