レイアのため
レイアはクレアの現在地などを探るべく人族領に向かい、不死族たちはレイアのバックアップ者たちと、大河の『自爆』を強化する方法を開発する者たちに分かれ動き出した。
その間に大河は『リュートの遺跡』に戻り今後の予定についてシーラとイージスに説明していた。
「もしシンドウ・クレアの『精神傀儡』が『誘爆の呪い』の対象内なのであれば、それでシンドウ・クレアを操り不死族の評判を回復させる。というのが今回の作戦の概要ですね。その後、シンドウ・クレアが死亡した際、裏切った彼女をウルザが蘇生させないかどうかは、ウルザに猜疑心次第ではありますが」
「毎度毎度……確かにシンドウ・クレアは今のウルザにとっては諸刃の剣だからな。裏切られたと感じれば蘇生させないだろう。とはいえわざと『精神傀儡』を受けるか」
「安全性は最大限確保するつもりですよ」
クレアの『精神傀儡』の悪名は多くの陣営に轟いている。
流石にノータイムで相手の精神を操るほど壊れたスキルではないため戦闘において強いかと問われれば難しい所ではあるが、『無敵要塞』を持ち幾人もの勇者を退けてきたイージスでさえ、クレアを上手く運用されれば操り人形にされてしまう可能性がある。
それ故に、イージスは大河の作戦を聞き逆に『精神傀儡』を利用しようとする発想に驚き、それと同時に感心するのであった。
大河もイージスであればこの作戦に納得してくれるだろうと思っていた。問題はシーラがそれを許してくれるかである。
『精神傀儡』を利用した作戦によって多くの勇者を改宗させられてしまった過去を持つシーラへの説得は難航する。そう考えていた大河は、渋るシーラを説得する用意はしてきた。
[……分かりました。タイガさんとレイアが安全性を確保すると言っているのであれば、私は信じます]
「え、良いのですか?」
[……はい]
しかしその心配は杞憂に終わる。シーラは、大河からの説得を受ける前に、今回の作戦を承諾したのだ。
予想外の展開に喜ぶよりも先に困惑してしまう大河にイージスがツッコミを入れる。
「タイガが提案しているのに、通って困惑するのはおかしくないか? 気持ちは分かるが」
「……いや、シーラ様がまさか作戦説明だけで許可してくださるとは思いませんでした」
[私としてもできれば危険な作戦は避けてくださると嬉しいです。ですが……タイガさんがレイアのために考えてくださった作戦で、レイアが納得しているなら私が止める権利はありません]
「権利がないなんて、そんなことはありませんが……」
[レイアは不死族であるということを長い間女神ウルザに利用されてしまった事に気を病んで。それに加えてシンドウ・クレアによって私の勇者が改宗させられた事の責任も感じてました。それをタイガさんの作戦で晴らしてくださるならという思いです……心配はありますが]
反対する気持ちがない訳ではない。しかし、この作戦は、不死族を救う、もっと言うならばレイアの過去のわだかまりを少しでも解消するのが目的であろう。
その大河の思いを感じたシーラは説得されるまでもなく納得する。
「……タイガの言う通り、どれだけウルザ陣営を追い詰めてもクレアの『精神傀儡』は怖いからな。それならウルザが疑心暗鬼になっている今、処理できるに越したことはないからな」
「はい。そうですね。とはいえシンドウ・クレアの現在地によってはこの作戦自体……」
[あ、レイアからです]
クレアから『精神傀儡』を受けるリスク過ぎるとレイアが判断した場合、問答無用で今回の作戦は中止となる。
そう大河がシーラたちに伝えようとした瞬間、シーラの元にレイアから連絡が入る。
[うん、うん。分かった。伝える……タイガさん。レイアからの伝言です。「クレアを発見した。『ネクロ』からもそれなりに近い街において少人数で行動中。作戦決行するので至急『ネクロ』に戻って欲しい」だそうです]
「分かりました!」
幸い、クレアはレイアが作戦を決行する程度の場所にいたらしく、その報告を聞いた大河は『ネクロ』にとんぼ返りすることになるのであった。




