一石二鳥
「……誘爆の対象になる可能性は高いと思う」
シンドウ・クレアが持つユニークスキル『精神傀儡』は、『誘爆の呪い』の誘爆対象となるか否か。大河からの問いにレイアは言葉を詰まらせながら返答する。
呪いが常に攻撃を受け続けている判定となり誘爆の対象となるのであれば、『精神傀儡』も常に精神を攻撃され続けているという判定となっても不思議では無いだろう。
そんなレイアからの返答を受け、大河は嬉しそうに頷く。
「俺も同じ意見です。ということで、レイアさんなら俺が何をやろうとしているか分かりますよね」
「分かる。でもそれは駄目」
「かなりリスクのある行為だということは分かっています。ですがそれはシンドウ・クレアを放置していても起こり得るリスクです」
「それは……そうだけど」
先ほどまでの発言を総合すれば大河が何をやりたいのかレイアは理解できる。つまり『精神傀儡』を受けた状態で大河が死亡する事で逆にクレアを操り人形にしてしまおうという作戦なのだろう。
その作戦の危険度はかなり高い。失敗すれば『精神傀儡』状態となった大河がウルザ陣営の手中に落ち、全ての呪いを解呪された状態で殺され蘇生される事のないまま魂だけウルザの元で彷徨い続ける事となるだろう。
しかしそのリスクは作戦を行わなくとも、クレアがいる限り起こり得る事である。であればこそ今作戦を行うべきというのが大河の意見であった。
「だからこそ今なんです。今ならシンドウ・クレアを葬り去れる可能性が最も高いんです」
「……どういうこと?」
「今のウルザは、俺を自身の従属神が匿っているのではないかという事で、裏切りに敏感になっている筈です」
「うん」
「そんな状況でシンドウ・クレアが、ユニークスキルを使って裏切り行為をしていたとなればどうなると思いますか?」
「……いくら『精神傀儡』が優秀でも、それが反転してウルザの脅威になるなら……蘇生させない?」
「はい」
これが単に戦闘力が高いだけの勇者の裏切りであればウルザも許すという選択肢を取れたかもしれない。しかしクレアの持つ『精神傀儡』は味方であればこの上なく頼もしいが一転して敵に持たれると厄介この上ないスキルである。
裏切れば2度と蘇生しないぞというウルザお得意の脅し文句も、改宗という手段があるため必殺とは言えない。
自分の勇者ですら信頼することの出来ないウルザは、クレアが自陣営をめちゃくちゃにするリスクを嫌い、蘇生させないだろう。
「宗教改革のお陰もあって、魔神陣営も活発に動き出しましたので、ウルザの疑心暗鬼もしばらくは継続されるでしょう。その間にやりたいと思っています」
「……そっか。でもやるなら安全を確保しなきゃ駄目。そうじゃないと私もシーラ様も許可できない」
「分かっています。そもそもシンドウ・クレアの現在地などの状況によってはこの作戦は実行できませんので」
「うん」
城塞都市『コンボ』でレイアがクレアを倒して以降、彼女がどこにいるのかは把握していない大河たち。
仮にウルザがクレアを重要視して人族領の奥地に匿っていたりすれば、大河に『精神傀儡』を掛けさせるなんて作戦は許可できない。一方で『精神傀儡』を使って大河を匿っている裏切り者を探そうと辺境の地に少人数でいる場合は最悪クレアだけを拉致してしまえば良い。
つまりは作戦を行えるかどうかは状況次第であるのだ。
「……もしシンドウ・クレアを操れたら何をさせるの?」
「……ウルザの印象操作によって地に落とされた人族内での不死族の評判を多少でもいいので好転させたいですよね」
「不死族の評判を?」
「はい。ウルザはレイアさんが不死族ってこと知ってるんですよね? ならそれをさせれば不死族のイメージが向上する上に、ウルザにシンドウ・クレアがレイアさんと繋がっていると気付かせられるかなと」
大河としては今回の作戦で、クレアという危険を排除すると同時に、不死族の評判を回復させたいと考えていた。
レイアが不死族であることを利用していたウルザであれば、クレアが不死族のために尽力している事を知れば、レイアとの内通を疑ってくれるため、一石二鳥であろう。
「どうでしょうか?」
「……分かった」
「不死族としては願ってもない話ではあります。タイガ様の危険をできる限り取り除けるよう尽力いたします」
「ありがとうございます。ということで、取り敢えずこれからやることはシンドウ・クレアの居場所や現在の状況の把握。不死族の皆さんにはレイアさんに協力する方々と生命力を分け与える術やスキルの開発をする方々に分かれていただいて……」
「タイガは今回の作戦に私以上に反対しそうなシーラ様の説得」
「はい……はぁ」
愛情深い神シーラの説得。それが一番難しそうだと大河は思いため息をつくのであった。




