不死族の活用
不死族の特性を活かした嫌がらせと言われてレイアやレヴェトが、思い付いたのは、ウルザがレイアを使って行っていたような、不死性の高さを活かして敵勢力を引き付ける囮役である。
この囮に大河の『自爆』や『誘爆の呪い』を組み合わせて運用すれば主にウルザ陣営相手に大きな損失を与えられるだろう。
「我々でしたらタイガ様の『自爆』に巻き込まれても生存することが可能でしょう。そういう観点でも囮役は適当かと」
「うん。ウルザ陣営に損害を与えられるなら嫌って言う人はいないと思うし」
「……不死性の利用は兎も角、囮作戦はあまり効果は無いと思います」
しかし、大河はその案には消極的な姿勢を見せた。しかし、レイアを捨て駒扱いしたウルザを肯定するようで悔しいが不死族の囮性能は破格であることはレイアが魔神陣営に与えた損害が証明している。その上で大河が消極的になっていることにレヴェトは疑問を持ち質問する。
「効果がないとタイガ様が考える理由は何なのでしょうか?」
「……囮作戦は、囮を放置したら看過できない損害が生じると相手に思わせる必要があります。言うなればウルザ陣営の一部を率いたレイアさんであるからこそ、敵も囮かもしれないと考えつつも手を出さざるを得なかったのです」
「……つまり今の我々では、囮役すら務まらないということですか?」
「いえ、そういう訳ではありません。不死族の皆さんは十分な脅威でしょう。ですが、今のウルザ陣営にとっては不死族の皆さんが引き起こす損害よりも、俺1人を確保する方が重要なんです」
優先順位の問題である。こちら視点では大量の信者や勇者たちを倒せ、ポイントも多く消費できたとしても、それよりも相手側が大河の情報を得られた事に喜ぶようでは嫌がらせとは言えない。
戦略的にもこちらの方がプラスだったとしても、ウルザの精神状態が改善してしまえばそれ以上の価値を相手に与える事になりかねない。
「まあつまり、不死族の皆さんの囮性能は高いですが、ウルザ相手の時に限り俺の方が囮に向いているって話です」
「……なるほど。ウルザ相手には」
囮作戦を使うのであれば、大河の情報を餌にウルザ陣営を釣り出す方が効果が大きいだろう。
その大河の意見にはレヴェトも納得する。
「じゃあ、タイガが考える嫌がらせはなに?」
「1つ考えているのは不死族の皆さんの不死性を利用して、俺の『自爆』の使用料をもっと増やせないかなと」
「『自爆』の使用料?」
「はい。主神のポイントを使用して発動する類いのユニークスキルは、その効果範囲や威力などに応じてポイント消費も増減しますが『自爆』も変わりません」
「うん。そうだね。タイガがレベルアップしたりスキルを獲得したりすれば『自爆』の威力や効果範囲を上限も上がって、よりポイントを消費できるような『自爆』が起こせるって言ってた」
『自爆』は自身の命と引き換えに爆発を引き起こすスキルであり、発動した場合、どんなに弱い爆発であろうと死亡判定を食らってしまう。しかし弱い爆発であればその分、主神が支払う自爆代も少なくできるというメリットがある。
当然、大河はウルザにできる限り高い自爆代を支払わせたいので最大威力での『自爆』しか使用していないが、大切なのは威力などによって支払わせるポイントに上下がある事である。
「……レベルアップやスキル獲得は一回『自爆』を使用すればリセットされてしまいます。ですので、リセットされない方法での『自爆』の強化案として不死族の不死性を使えないかなと」
「不死族の皆から力を分けてもらって『自爆』するってこと?」
「はい。本当は俺自身が不死性を獲得できるのが一番何ですが、まあそれは無理なので」
「…………うん」
不死族の身体は、祖先である吸血鬼の不死身の肉体ほどではないにしろ、普通の人族などとは比べ物にならないほどの生命力を有している。その力を分け与えられた上で『自爆』を発動できれば無駄に大規模な、しかしとんでもなくポイント消費の激しい『自爆』が放てるだろう。
欲を言うのであれば大河自身が不死族になれるのがベストではあるが、それは難しいだろう
「まあ我々の中には体力が有り余ってる者も多いので、それに関しては可能だと思います。ただ力を分け与える魔法なりスキルに関して調整しなければなりませんが」
「ですよね」
「はい。ただ『生命吸収』などのアンチヒール系のスキルを覚えている不死族は多いですので、その反対を使える適正がある者は多いと思います」
「助かります」
本来自身の肉体の許容量を越える力を取り入れれば、肉体自身が耐えられなくなり崩壊する危険がある。それ故に不死族など一部の種族やモンスターでなければアンチヒール系のスキルや魔法の習得が憚られるのだが、大河はどうせ『自爆』で死亡するためそれらの問題は無い。
後は本当にそれが可能なのかだが、それはやってみる他無いだろう。
「じゃあ取り敢えずその準備が整うまではウルザ、ルフェル両陣営の動きを警戒しながら待機?」
「もう1つ考えているものがあります」
「やっぱり。なに?」
不死族の協力を得て『自爆』の威力を上げる。面白い発想ではあるが、大河にしては嫌がらせ度が少ない作戦だなとは内心レイアも感じていた。
そのため大河的にはもう1つの方が本命なのだろう。
「……不快に感じたら申し訳ないのですが、世間からの不死族の評判は悪いんですよね?」
「うん。前に話した通り悪い。よねレヴェト?」
「はい。ウルザによる情報操作などもあり、特に人族の間では、我々とモンスターのアンデッドは同族のように扱われています」
「……その評判をひっくり返しつつ、ウルザの勇者数人を葬り去りたいんですよね」
「評判の方も気になるけど、葬り去りたいって?」
地に落とされた不死族の評判を覆すというか大河の言葉よりも更に気になるのが勇者を葬り去るという言葉である。
信者などであれば死亡させれば基本的に復活する手段はない。一方で勇者はどんなに苦労して殺したとしても主神の力によって復活されてしまう。それを避ける方法として『不死の呪い』などもあるが、葬り去るという説明とは繋がらない。
「……もしかしてウルザがやったように改宗させた上で蘇生させないなんて事をするつもり? それはシーラ様が許さないと思う」
「敵であったとしても改宗させた時点でシーラ様の勇者ですからね……シーラ様の手を汚すような作戦は使いませんよ」
ウルザがやって来た手法をシーラがやり返す。これも立派な嫌がらせではあるが、そんな外道な行為をシーラにやらせようとは大河は考えてはいなかった。
「なら」
「手はウルザ自身に汚してもらいます。それでこの作戦を行う上で1つ聞いておきたい事があるのですが、えーと、ウルザの勇者で精神系のユニークスキルを持ってる奴がいましたよね」
「うん。シンドウ・クレアの『精神傀儡』?」
「それです。その『精神傀儡』で俺が精神を操られた状態で死亡した場合、その精神操作は他の呪い同様に『誘爆の呪い』の対象になると思いますか?」
死亡する際に最後に受けた攻撃を仲間にも与えてしまう『誘爆の呪い』。これは最後に受けた攻撃が複数であった場合、その全てが仲間に誘爆してしまう仕様がある。
そして、ウルザ陣営の中でも指折りに厄介なスキルである『精神傀儡』による精神操作はその誘爆の対象になるのかについて大河はレイアに質問するのであった。




