高望み
不死族の現族長であるレヴェトの家にやって来た大河は、まず大河が『ネクロ』に到着する直前に発生したトラブルについて聞かされていた。
「そうですか。『ネクロ』に魔獣が」
「はい。普段ここに魔獣たちが近づいてくる事はありませんが、少数とはいえ魔獣が接近してきました。間違いなく魔神の手の者だと判断しましたので、レイア様に対応していただきました」
普段ならば不死族たちが住む街になど近づこうともしてこない魔獣たちが、宗教改革を完了させたこのタイミンクで接近してきたらしい。
そのため魔神陣営からの指令を受け魔獣たちがやって来たのだと判断したレヴェトは、レイアをその場に派遣したのだ。
「対応した。偵察部隊って感じだったから、事前の取り決め通りに大袈裟に警備隊を引き連れて討伐に赴いたけど良かった?」
「完璧です。『ネクロ』側が魔神陣営からのアクションに対して準備している事を見せることが重要ですので」
「なら、よかった」
今、魔神陣営に一番起こして欲しくないアクションは、何も考えずに『ネクロ』に攻め込んで来ることである。
それをされてもどうにかするつもりで作戦は立てているが、『ネクロ』を攻め込んだタイミングに合わせてウルザ陣営が全く動かないことで、宗教改革の裏にウルザがいない事がバレてしまうだろう。そうなると宗教改革の効果がかなり薄れてしまう。
そのため、偵察部隊に対しての対応としては、過剰なほどの対応をして、魔神陣営から攻め込まれることを想定しているのだと見せつける必要がある。レイアは大河から事前に言われていた通りの動きをしてくれたのだ。
「『魔王』のユニークスキルの詳細が把握できないのでここら辺は予想になってしまいますが……わざわざ魔獣を動かしてきた所を見ると、魔神陣営はウルザを相当警戒しているようですね」
「そうだね。信者とポイントをそれなりに消費するのを覚悟で情報収集させてる」
「そこまで警戒してくれたら、ウルザが俺を探しているって情報を手に入れても真の情報か疑ってくれたり……それは流石に高望みですね」
神が勇者に干渉するという権能を模倣するようなユニークスキルが、ノーリスクな筈が無いと大河たちは予想している。少なくともスキル使用に主神のポイントが必要なタイプのスキルだろう。
つまり魔獣だけでなく貴重なポイントを惜しみなく使い魔神陣営は情報収集を行っている。それだけウルザを警戒していると大河たちは考えていた。
そうであるならば、大河が『自爆』の勇者であり、ウルザのポイントを不正利用しているためウルザ陣営から捜索されていると知ったとしても、裏があるのではと考えてくれれば最高なのだがそれは虫が良すぎるだろう。
そう考えた大河であるが、レイアたちの意見は異なるようだ。
「そうかな? レヴェトはどう思う?」
「失礼を覚悟で申し上げるならば、たかが勇者1人がウルザを追い詰めていると考えるよりも、その勇者と結託して動揺しているふりをして何かを狙っていると考える方が普通かと」
「……なるほど。では中望みくらいはしておきますか」
ウルザからは警戒されてしまった大河であるが、ルフェルには大河の嫌がらせ性能は露呈していない。そのため正しい情報でも疑ってしまう可能性は大河の想像よりも高いかもしれない。
「さてと、じゃあそろそろ、今後についての話し合いをしましょうか」
「うん。不死族の特性を活かした嫌がらせについてだよね?」
「はい」
とはいえ、流石に希望的観測を重ねすぎているためそれを信じて行動する訳にはいかない。シーラ陣営の作戦の主軸はあくまでも嫌がらせなのだから。




