値踏みの視線
渋るレイアを説得し『ネクロ』に領域を設置してもらった大河は、早速不死族の人々に挨拶をするべく転移で『ネクロ』に来ていた。
イージスはいつも通りシーラ及び『リュートの遺跡』の守護のため残り、シーラもライカロープやエルフィードに魔獣たちへの宗教改革の成功を伝えてもらう役割があるため、今回は大河1人でやって来た。
生憎、大河が『ネクロ』に行くというタイミングで、魔神陣営に動きがあったためレイアたちはそちらの対応をして出迎えてはくれなかったが、大河が来ること自体はレイアから『ネクロ』の住人たちにも伝わっていたようで、到着すると目の前に案内役として警備隊に所属するゾンとストが立っていた。
「大した問題では無かったようなのでレイア様は直ぐに戻ってこられると思います。なのでタイガ様にはレヴェト族長の家でお待ちいただければと」
「分かりました。あ、あと、敬称も敬語も必要ありませんよ」
「いえ、レイア様の……いえ、タイガ様と呼ばせて下さい」
「……そ、そうですか? えれなら無理にとはいいませんが。それで、えーとストさんは、何かをご用でしょうか?」
街中で待っていても仕方がないため、大河は族長の家でレイアたちの帰還を待つことになった
しかしその道中、大河は困惑していた。なぜか自分に畏まった態度を取るゾンにもだが、なにより、品定めするかのような視線を大河に向けてくるストに対して。
「いや、こんな感じなのかと思って見てただけだ」
「それは、どういう」
「……おい馬鹿やめろ。タイガ様にそんな態度を取るな!」
「……分かってる!」
大河が困惑の表情を浮かべていた事に気が付いたゾンが注意をしてくれたお陰で不躾な視線は向けられなくなる。
するとゾンは大河に向き直り再度頭を下げてくる。
「すみません、タイガ様。ストが失礼な態度を」
「い、いえ。こちらこそ、ストさんに何か失礼な態度をしたのでしょうか?」
「そんなことはありません。ただレイア様からタイガ様のお話を聞いていましたので……ストも気になったのでしょう」
「レイアさんから?」
「はい。私やストも、あんな表情で他人の事を話されるレイア様を見たことなかったですから。あんな愛お……」
「ゾン」
ゾンが大河についてレイアから聞かされた時の事を話そうとした瞬間、その話を遮るようにゾンの名前が呼ばれる。
ゾンが慌てて呼ばれた方向に振り返ると、そこには目が笑っていないレイアが立っていた。
「れ、レイア様」
「レイアさん。問題は解決したんですか?」
「……うん。頑張ってすぐ終わらせた。だからゾンとストはここまででいい、よ?」
「はい。勿論です。レイア様がいらっしゃるなら私たちはここまでで! 戻るぞスト」
「えぇ、折角だから俺らも」
「戻るぞ!」
「え、お、おう。分かったよ」
普段口では厳しく言いつつも、何だかんだ自分に甘いゾンが必死の形相で訴え掛けてくるため、ストは素直に引き返す事にした。
ゾンとストが持ち場に戻っていき、レイアと2人きりとなった大河は首を傾げる。
「なんかゾンさん、震えてませんでした?」
「そう? 気のせいだと思う」
「そうですか? あ、というか俺の事、どんな風にゾンさんたちに紹介したんですか? ゾンさんには敬われましたし、ストさんには、何だか値踏みされている感じがしたのですが」
「うーん、凄く褒めた?」
「褒めたくらいで? ……まあ皆さんにとってレイアさんからのお褒めの言葉はそれだけ重いということなのでしょうか?」
それだけで、あそこまでの反応をされた事に若干腑に落ちない感じもするが、不死族にとってレイアの存在は大きいのだと納得する大河なのであった。




