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捨て駒扱いの理由

 レイアがレヴェトに宗教改革について説明している頃、『リュート遺跡』に残っている大河たちは、宗教改革が終了した後の動き方について話し合っていた。


「取り敢えず魔神や魔王が今回の作戦による精神的な揺さぶりに対してどんな反応を見せてくるのか。それによって今後の動きは変わって来ますね」

「そうだな。とはいえ魔神の反応は想像がつかないな。大河の作戦が優秀だったとはいえ、前までは、ウルザにあれほど精神攻撃が通用するとは想像もしていなかったからな……」

「まあ過大評価しすぎて功を逃すのも損ですが、過小評価して取り返しのつかない失敗をするよりかはマシですからね」


 これまで魔王のユニークスキルのお陰で絶大なる情報収集能力を誇っていた魔神たちが、魔獣の信仰を奪われて、自身の支配領域付近に何が行われているか知ることの出来ない領域が設置される。

 大河としては、魔神たちもそれなりに大きなリアクションをしてくれる事を期待している。とはいえ相手は神である。ウルザに精神攻撃が絶大な効果を及ぼした事で神全体を過小評価してしまいそうになるが、そんな神ばかりでは無いだろう。

 魔神が宗教改革での揺さぶりに動じなかった場合の事も考えておかなければならない。


「魔神ルフェルについて、シーラ様は何かを知っていますか?」

[ごめんなさい。私は『神々の聖戦』が始まる前も後も殆ど魔神ルフェルとは関わりが無いので、前に伝えた程度の事しか]

「いえ、気にしないで……いや、少し待ってください」


 シーラは魔神ルフェルとこれまで関わりが無かったようであり、大河が現在知っている以上の事は何も知らない様子であった。

 申し訳なさそうにその事を伝えてくるシーラを大河は励まそうとするが、ふと過去にレイアとした会話が思い起こされる。


「えーとシーラ様。昔、レイアさんがウルザの勇者として活動している頃、捨て駒のような扱いを受けていたみたいな話を本人から聞いたんですが、知っていますか?」

[えーと、はい、知っていますよ。それを見過ごせなかった私の勇者がレイアを連れて来ましたから]

「その理由、聞いたときはスキルが弱かったからって話だったんですが、それだけじゃなくてレイアさんの種族が不死族(アンデッド)な事も関係していますか?」

[……はい。どちらかと言えばそちらの理由の方が大きかったと思います]

「不死族の撃破されづらさっていう戦略的な理由と、差別的な理由。どちらも合わさって捨て駒扱いされていたのだろうな。その当時は有名だったな。殺しても死なない勇者がいるって。」


 かつてレイアはウルザの勇者であったが、スキルが弱かったから捨て駒として登用されていたが、シーラの勇者に拾われて改宗したと聞いていた。

 しかし今回レイアの種族が判明した事で捨て駒扱いされる理由に不死族であるからという理由もあることが分かった。


[えーと、それが何か関係あるのですか?]

「シーラ様、イージスさん。客観的な意見をください……ウルザ陣営の捨て駒、囮役である不死族の勇者が他神陣営に所属した。その後その他神陣営は勇者と信者のほぼ全てを失いました」

「……内情を知らない者から見たら、その勇者はウルザから送り込まれた刺客に見えるな」

「そんな勇者と信者を失った神は魔獣がひしめく魔境『シイアの大森林』の真ん中に領域を設置する。そこには更にウルザの勇者が現れ、爆発を繰り返した結果、魔獣がいなくなる」

[タイガさんもウルザから送り込まれた人みたく見えてきます!]

「そして今度、囮役の勇者が同族たちを連れて、魔族領付近の魔獣たちの生存圏内に支配領域を幾つも作ろうとしている。魔神から見て宗教改革はどう見えますか?」

「……矢面にレイアや不死族、そして何よりシーラ様を立たせてはいるが、その裏にウルザがいるように見えるな」


 手段は違えど魔獣の生存圏に魔神陣営でも干渉不可能な領域を作るという結果は、シーラたちが『シイアの大森林』に行った事と、これから行う宗教改革は同じである。しかも大河という改宗をしない異端な存在がより事態をややこしくしている。

 ウルザ陣営の現在の状況や、シーラとレイア、大河などの関係性を知っていれば、ウルザとシーラが繋がっているなどとは思う筈も無いが、魔獣などを通じて表面的な情報だけを見ている者などは、そう勘違いするかもしれない。

 

「……シーラ様。レイアさんに神託で伝えて欲しいのですが、できる限り作戦行動を魔神陣営に悟らせないようする予定でしたが、隠密ではなくスピード重視でという指示を出してください」

[え、ですが、不死族が協力したとバレたら危険だと言っていませんでしたか?]

「はい。魔神陣営が攻め込んでくる可能性があるだろうと考えていました。ですが、囮役の勇者が見せつけるように作戦行動をしていたとしたらどうですか?」

「……罠を疑うな。『ネクロ』にわざと攻め込ませようとしているだろうかと。なるほど、つまり大河は、今回の宗教改革の首謀者をウルザに押し付けようとしているって訳か」

「はい。そのつもりです」


 宗教改革での揺さぶりが通用するならばそれで良いが、魔神がそんな単純な相手ではなく、冷静に宗教改革について分析してくる相手であるならば、存在しない裏を読ませようと考える大河なのであった。


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