用意周到
不死族という種族の特性から嫌がらせの才能を感じた大河は、珍しくも不死族であることを隠していたレイアに説教をしてしまった。
とはいえ大河は説教を終え冷静になった頭で自身の発言を振り返り、かなり無神経な物言いであったと反省していた。
「少し、いやかなり言い過ぎました」
「ううん。大丈夫」
「別にこれまでのレイアさんの活躍に不満がある訳では無かったですし、言わなかったって事はレイアさん的には不死族であることを隠したかったんですもんね。それを責めて……ああ」
「嫌がらせの事になるとタイガは夢中になっちゃうのは知ってるから。気にしてな……やっぱり気にしてるかも、良い意味で」
「いや、この場面で良い意味で気にすることなんて無いでしょう……本当にすみません」
そんな大河とは裏腹にレイアは悪い気はしていなかった。熱くなって説教をしたということは、説教をする前の発言もレイアを気遣っての言葉ではなく本音であったということであり、レイアとしてはそちらの方が嬉しい。
そういったレイアの複雑な心境を大河は察することができず頭を下げるのであった。
謝り倒す大河と嬉しそうに微笑むレイア。
そんな2人のやり取りは見ていて面白いのだが、このままだと話が進まないためイージスが2人の間に割って入ってくる。
「そろそろ話を宗教改革に戻すぞ。そんなに時間が有り余っている訳ではないしな」
「うん。だってタイガ」
「……分かりました」
作戦の性質上、大河としては、魔神陣営がウルザ陣営が混乱しているという情報を掴み行動を始める前に宗教改革はスタートしたいと考えている。
そのためイージスの言葉で気を取り直した大河たちは話を本題に戻す。
「えーと、レイアさんが協力者に不死族を挙げたということは、レイアさんがモンスターを信者化した要領で不死族も信者化できるということですよね?」
「うん、そう」
「……レイア、貴方と不死族たちとの関係は私も詳しくは知らないが、魔族領の付近の魔獣たちの生存圏での作戦行動に協力者してくれるのか? それに不死族がシーラ様の信者となってくれるかもだ」
「……まあ最悪、魔神の信者でさえなければ作戦は成功しますが、今後の事を考えるのであれば魔獣たちはシーラ様の信者にしたい所ではありますね」
今回の作戦の事だけを考えれば、魔神陣営の情報網に穴を空け、精神的な揺さぶりを掛ける事が目的のため、魔獣たちをどの神の信者にしても問題はない。とはいえ今後に繋げるという意味ではやはりシーラの信者にする方が望ましい。
そうなると勧誘役として不死族が協力してくれるのならば、不死族もシーラの信者にする必要があるのだ。
「魔獣の生存圏での作戦行動に同意してくれるかについては大丈夫。魔獣の生存圏は『ネクロ』の狩り場の1つだから」
「……そういえば不死族の街があるとされている場所は魔族領ともさほど離れていなかったな」
「うん。あと、シーラ様の信者になるかどうかという話なら問題ない。この作戦を大河から聞いてから直ぐに不死族の現族長と話をつけておいたから、今頃『ネクロ』はシーラ様の支配領域になっている筈」
[はい]
「えっ! いつの間に? というかそんなに簡単に?」
「相変わらず……手回しが」
しかし、そんな大河たちの心配は杞憂に終わる。既に宗教改革を行うための準備のおおよそはレイアの手によって終了していた。
その用意周到さに大河とイージスは思わず舌を巻くのであった。




