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勇者と信者

 ライカロープたちとの通話を終えた大河は、今回の話し合いで決定した事をレイアとイージスにも伝達していた。


「基本的には予定通り、『ベスティア』と『イグドラシル』は戦力拡大に力を入れる方針ですが、それと並行して各国の近くにある魔境などに集まってくる魔獣相手に宗教改革を行ってくれるそうです」

「そう、それが成功すれば少なくとも亜人族の生存圏では魔獣を間引く必要は無くなる」


 魔境などの魔獣が多く生息している場所を放置しておくと、魔神側の勇者が自由に行き来できる前哨基地となってしまう。

 そのため人族や亜人族は、勇者を派遣したり、冒険者と呼ばれる職業の者たちを雇ったりして定期的に魔獣の間引きを行っている。

 しかし宗教改革が成功し魔獣がライカロープやエルフィードの信者となれば、それらをする必要性は薄まるだろう


「まあ、ただ人族同士なら兎も角、人と魔獣ってなると難しい部分はあるんじゃないか? いくら同じ主人を崇める信者同士は親近感を抱きやすいとはいえ」

「……そこら辺も含めて宗教改革ですよ。それに俺がシーラ様信者のモンスターたちと仲良くなることが出来たんですから、信仰を深めて行けば、魔獣とでも大丈夫だと思いますよ」

「それはそう……既にタイガとモンスターたちは私たちよりも仲が良いから」

「それはそれでおかしいと思うがな。一応タイガはウルザの勇者なんだから」

「ウルザの勇者である前にシーラ様の信者であるという事です」


 魔獣は人を襲う危険な生物として認識されているが、同じく危険な生物であるモンスターと大河は、シーラの良いところ語り合う程度には仲良くなっている。

 そのため大河は魔獣であろうとも、信仰が深まれば友好関係を築けるだろうと考えている。


 そしてウルザの勇者である大河がシーラの信者であるモンスターたちと友好関係を築けたということは、勇者と信者は全く別の存在であることを意味している。

 つまり勇者にした瞬間に信者になる訳では無く、勇者であっても宗教の自由は保障されているのだ。


「まあそう考えると、主神同士が仲良くしていると信者間も仲良くなるのはそういう理屈なんだと思いますよ」

「……私やイージスも、少なからずエルフィード様やライカロープ様の信者だってこと?」

「そこまで厳密に定義されるかは分かりませんが、有り体に言えば」

「なるほどな」


 敬虔深い信者たちにこんな話をすれば激昂される可能性があるが、ステータスに表示される勇者などと異なり、信者というのはかなり曖昧な概念なのだろう。

 だからこそ今回の作戦で魔獣たちの信仰を魔神から奪えると判断したのだが。


「まあ、なので魔獣を信者化すれば基本的には大丈夫だと思います。取り敢えず、ライカロープ様たちの動きとしてはそんな感じです」

「うん。ありがとう。じゃあ次は私たちの方」

「はい。とはいえ話していた計画に特に変更はありませんでしたが……基本的に宗教改革を行う場所は、魔族領と人族領の間にある大規模な魔獣の生存圏を予定しています」

「そこが一番魔神陣営にプレッシャーを掛けられるからな」

「はい。それで魔獣たちへの宗教勧誘役はレイアさんと……あと手伝ってくれる人たちに心当たりがあるんですよね?」


 今回の作戦である宗教改革の要である勧誘役は、当然ながらレイアが務める事となる。

 今回の一件でウルザだけでなく他の神々からも注目を集めた大河を敵地の真ん中に送る事は出来ない。『イグドラシル』や『ベスティア』であればライカロープたちに頼み転移で送ってもらうなどという緊急手段が取れるが、魔獣の生存圏ではそれができないためだ。

 イージスも、もうしばらくの間は『リュートの遺跡』を守ってもらい、ウルザ陣営への目眩まし役を務めてもらう必要がある。

 そうなるとレイアしか残らない。


 いくらレイアと言えど、当初この作戦を大河が立案した際に、1人での勧誘活動を続けるのは大変なのではないかという事で廃案になり掛けた。

 しかしレイア自身が協力者に心当たりがあると言ったため、今回、宗教改革を行う事となったのだ。

 ただ協力者の詳細については大河はまだ知らなかった。そのため大河はレイアに問い掛ける。


「うん……多分協力してくれると思う」

「ウルザどころか魔神ルフェルにすら喧嘩を売ろうとしている俺たちに協力してくれる人たちなんて、誰なんですか?」

「私の故郷だった場所。そこの住民たち」

「故郷だった場所?」

「そう、勇者として転生する前の故郷『ネクロ』。人族でも魔族でも魔獣でもない者たちである不死族(アンデッド)が暮らす街」

「不死族ですか!?」 


 そしてレイアからされた回答に驚いてしまうのであった。 

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