新生シーラ陣営
シーラを最高神にする。口で言うのは簡単であるが実際に目指すとなると難しい。一時的にとはいえ人族と獣人族を除く亜人族の主神であったウルザと魔族や魔獣の主神であるルフェルがその座を争う中、2柱を差し置いて最高神になると言うには、シーラ陣営もそれ相応の勢力となる必要がある。
そのためにまず必要であると大河が考えたのは、ライカロープのエルフィードによる全面的なバックアップであった。
とはいえどちらも多くの信者を抱える大所帯。最高神の座を諦めて一番勢力的には小規模なシーラ陣営に加わって欲しいと頼んでも、そう易々と首を縦には振らないだろう。
そう大河は考えていた。
[……それで構わない。ライカロープ及び獣国『ベスティア』はシーラ陣営に加わろう。エルフィードはどうする?]
[フィーは元からそのつもりだよ! 『イグドラシル』を救ってくれた分、たーくさんお返しするよ!]
「本当ですか……」
激昂される可能性すらある考慮して提案した協力要請であったが、ライカロープたちはあっさりとその要請を受け入れた。
あまりの呆気なさに提案した側の大河が驚いてしまう。
[意外そうだな……断られると思っていたのか?]
「はい。少なくとも難色は示されるだろうと。ですのでどうやって説得しようかと考えていました」
[……まあそうだろうな。ただ全員が全員、最高神の座を欲している訳ではない。最高神という言葉の重みだけで、声も出せずに震えてしまっているシーラなどが良い例だろう]
そう言われればと大河を神通話に参加させて以降、大河の隣で一言も喋らずうずくまり、ぷるぷると震えているシーラに視線を送る大河。
確かに、この小動物のようなシーラが誰かを押し退けて最高神になろうと動いている姿はあまり想像できない。
[アタシもそうだ。私が精力的に『神々の聖戦』に参加していたのは、ウルザやルフェルの振る舞いを見て2柱だけは最高神にしてはならないと思ったからだ。元々、信者たちの安全さえ確保できれば誰が最高神になろうと気にはしない]
[フィーも、フィーも! 最高神なんてなっちゃったら忙しすぎて干からびちゃうよ]
[ふぇっ]
「……なるほど」
ルフェルについては話でしか聞いたことが無いため分からないが、ウルザが最高神になれば、『神々の聖戦』で争っていた神々の信者たちに不当な扱いをすることは想像に難くない。
そのためライカロープたちは自身が最高神になれる可能性が高くない事を理解しながら、ウルザたちに対抗していたのだ。
[それに、勢力としては小規模かもしれないが、今回のウルザ陣営の崩壊具合だけを見ても、シーラ陣営に加わる事に異を唱える者はいないだろう。少なくとも『ベスティア』単独でウルザ陣営に彼処までの被害は出せない]
[最高神を目指すならウルザを倒さなきゃだめ! ウルザ打倒の鍵はタイガさん! だからその鍵を持っているシーがトップだよ!]
[まあ、要約すると……そういうことだ]
「分かりました。ありがとうございます」
しかし、今回の『どの神が爆弾を持ってるでしょう作戦』によるウルザ陣営の被害を目の当たりにすれば、本当にウルザとルフェルの2柱だけは最高神にさせないという目的達成の希望が見えてくる。
そのためライカロープたちとしては、その希望を見せてくれる大河たちへの協力を惜しむつもりは無いのであった。
そんなこんなで爆誕した新生シーラ陣営。本来は説得に費やそうと思っていた時間がまるまる空いたため、早速だが今後の作戦について会議をする事になった
「取り敢えず、今ウルザ陣営が完全崩壊されるとルフェル陣営を止める者がいなくなるので、一旦放置で」
[ウルザ陣営が内側でゴタゴタしている間に内政に注力しろということだな]
[おおー!]
「よろしくお願いします」
これまでは大河という特殊な存在を利用した突飛な作戦ばかり行ってきたが、これからルフェルなど大河という存在が通用しない強陣営とも戦うためには、純粋な力も必要となってくる。
ウルザが攻めてこない今こそ勢力強化に精を出すべきである。
[……タイガたちはその間は何をするんだ? もし手が空いてるなら勇者に授けるスキルなどで相談にのって欲しいのだが]
[あ、フィーも!]
「中々に恐れ多いですが、自分に出来る範囲でしたら……あ、ですが、一応やろうと思っている作戦があるのでそれが済んでからで大丈夫ですか?」
[作戦? ウルザではないよな。となるとルフェルに対してのか?]
「はい。魔族領、厳密には魔獣たちの生存圏でですが。ちょっと魔獣たち相手に宗教改革を始めようかと」
[はぁ?]
大河の口から出てきた聞き慣れない言葉の羅列にライカロープは首を傾げるのであった。




