お釣りが来る
『イグドラシル』近郊で自爆を終えた大河は、ウルザ陣営の反応を確認しつつ次の作戦場所である獣国『ベスティア』の近郊に存在する『牙の森』にやってきていた。
既に『牙の森』には数名の獣人族が大河たちを待っていた。そして、その中の1人である白髪と大きな獅子の耳が特徴的な女性が大河たちの到着に気が付く。
その女性は大河に同行していたレイアやオリーバと知り合いである様子であり、先程までの凛々しい表情を崩しながらこちらに近付いてくる。
「レイア、オリーバ、久しいな」
「久しぶりフォル」
「フォルティス様、お久しぶりでございます」
そして、知り合いとの挨拶を終えたフォルティスは、視線を大河の方に向けながら訊ねる。
「……そしてこちらの方が例のウルザへの嫌がらせついでに『イグドラシル』を救い、『ベスティア』からウルザ陣営を退けてくれたという?」
「そう」
「いや別にそこまで大層な者ではありませんが……オリガミタイガと申します。本日はよろしくお願いいたします」
「フォルティスだ。こちらこそよろしく頼む」
そう言いながらフォルティスが大河に向けて深々とお辞儀をする。そうすると後ろで様子を伺っていた獣人たちも慌てた様子で頭を下げる。
今回、ライカロープ陣営から『自爆』に巻き込まれる役として派遣されたのは、ライカロープの勇者であり、百獣ノ騎獅団団長も務める白獅子の獣人フォルティスと、彼女自身が選定した5名の勇者たちであった。
「今回の作戦内容について知っているのは私やレグルス様で選別した信頼できる者たちだけだ。この五人も含めて作戦を共有した者に内通者はいない」
「内通者に対する偽の情報漏洩は?」
「そちらも、ベリハスが指揮する部隊から完了したと報告が入っている。なので1度内通者を発生させてしまった我々の防諜能力を信じてくれるのであれば問題はない筈だ」
「そう……タイガ?」
フォルティスから現在の状況を聞いたレイアは、作戦の総責任者である大河に伺いを立てる。
『ベスティア』内に内通者がいると判明した時点でレグルスたちの方で疑わしい者たちを選別してくれていたようだ。その選別を元に今回偽の情報を流したのだ。
とはいえ内通者に漏れはあるかもしれない。仮にレグルスが正しい作戦を共有した者たちの中に内通者がいれば、今回の作戦は全て台無しとなってしまうだろう。
とはいえ大河はそれならそれでも構わないと考えていた。
「レグルス様たちが目星もつけられないレベルの末端の内通者なら、今回の作戦でウルザ陣営からの『ベスティア』の内通者の情報精度の信用が落ちれば自ずと廃業となります」
「確かに」
「そして仮に、今回の作戦を共有されるほど信頼されている人たちの中に内通者が紛れているなら、むしろウルザへの嫌がらせ1回分で判明するならお釣りが来ますよ」
「……そうか」
これまでの作戦の多くは、エルフィードを救ったり、イージスを仲間にするという別の作戦を行うついでにウルザに嫌がらせをしていた。
しかし今回の『どの神が爆弾を持ってるでしょう作戦』は、純粋なるウルザに対する嫌がらせである。つまりこれまでの作戦と異なり失敗したとしても大河が残念に思う以外の損失は無い。
「というか『イグドラシル』と今から行う『自爆』で100万を軽く越えるポイントを賠償させられるから、むしろプラスですね」
「……本当にウルザにとって誰よりも脅威な存在なのだなタイガ殿は」
軽い口調で常識外れな発言をする大河に対して、フォルティスは呆れと敬意が混じった視線を送るのであった。




