作戦開始
レイアたちが戻ってきた。どうやらレグルスは、大河が提案した内通者を利用する作戦を受け入れてくれたようであった。
「レグルスもタイガを褒めてた」
「そうですか。そこまでの作戦……いえ、そうですね。受け入れてくれたのなら、成功するように全力で頑張ります」
「うん。私も」
例に漏れず今回の作戦でも大河は、各地で『自爆』を繰り返すだけであり、負担を他の人たちに被せている自覚がある。そのためこれまでは作戦を褒められてもどこか反応に困る様子であった。
しかしそれは、これまでの経験からリスクを承知で自身の作戦を受け入れてくれた者たちを軽んじる行為だと思い直した大河は、作戦成功に向けてやる気を見せるのだった。
そんな事をレイアと話していると、先ほどレイアの言いつけを守り耳を塞いでいたため、状況を理解できていないシーラが訊ねてくる。
[ライカが私たちに協力してくれるって事ですよね? どんな作戦になったのですか?]
「あ、えーとですね……」
シーラからの質問に言い淀むレイア。
ライカロープの意向で獣国にウルザ陣営への内通者がいる事実はシーラに伝えられないため、今回の作戦変更やなぜライカロープたちが拒否から一転して協力してくれる事になったのかの説明に窮したのだ。
そんなレイアの代わりに大河が言葉を紡ぐ。
「ああ、『どの神が爆弾を持ってるでしょう作戦』に変更はありません。ただライカロープ様たちが進めていた作戦と併せて行った方が効果的だと提案させていただいた所良いお返事をいただきまして」
[ライカの作戦ですか? えーと、どのようなって聞いてもいいんですか?]
「詳しくはお話できませんが、概要としては情報戦ですね」
[情報戦……おお、流石はライカです!]
実際には獣国が情報戦を仕掛けられていた側ではあるが、今回の作戦が成功すれば獣国内にいる内通者たちは、誤情報を流しウルザ陣営に大ダメージを与えたいわゆる二重スパイ的な役割を果たすことになるため、強ち間違ってはいない。
シーラから見たライカロープのイメージが頼れるお姉さんであった事も助けとなり、大河からの説明にシーラは納得する。
「はい。という訳で協力者が揃いましたので早速、準備を始めていきましょう。爆発する場所や巻き込む勇者たちの相談は、シーラ様に協力していただいて俺が行います」
[はい!]
「ウルザ陣営に俺の噂を流すのはレイアさんにお願いします。獣国の作戦が始まった段階で多少なりとも他の神々の耳に入っており行動を開始しているくらいが理想ですが、難しいようなら……」
「大丈夫。問題ない」
「はい」
大河は各々に役割を振り分けていく。協力者への作戦説明を大河が、そのフォローをシーラが担当し、前準備としての噂の流布はレイアが行う。
「イージスさんは『リュートの遺跡』の守護をお願いしますね」
「……つまり待機か。まあ仕方がないな」
「イージスさんがここにいてくださるだけで、シーラ様が晒されるリスクが大幅に軽減されますからね。お願いします」
「分かった」
唯一作戦に関わらず普段通りでいることを頼まれたのはイージスである。
イージスがシーラの領域があるここ『リュートの遺跡』を守るという事は、イージスの防衛力以上にシーラを守ることができる。
敵の侵略どころか勧誘なども拒絶し続けていたイージスの後ろにシーラの領域などあるとは思わないだろう。
「イージスはまだ無宗教のままだしね。外で作戦行動を取るのはちょっと不安」
「……そこまで弱くはないつもりだが」
「それは分かっている。でも初見殺しがあるのがユニークスキルだから」
「そうですね……安全面だけを考えれば改宗して欲しい所ですが」
「『鑑定』スキルなんかで改宗がバレたらシーラ様がここにいると丸分かりだからな。しばらくはするつもりはないな」
「ほんと頑固者」
天神アマタの復活という目標ができたイージスは、既に無宗教の執着を捨てている。それでも未だにイージスが無宗教な理由は、もしウルザ陣営にイージスがシーラの勇者となったことがバレれば芋づる式にシーラが『リュートの遺跡』にいることもバレかねないからである。
それを言われると大河たちも反論が難しいためイージスの改宗は保留のままとなっている
「この陣営は全員が何かしらのリスクを背負っているからな。私も背負っているだけだ」
「まあ……それも今回の作戦が成功すれば多少は改善されると思いますからね。頑張りましょう」
「うん」
[はい!]
こうして正式『どの神が爆弾を持ってるでしょう作戦』は開始される事となるのであった。




