一般的な感性
獣人族、エルフやドワーフなどと同じく亜人族に属しており、名前の通り獣と人族の特徴を身体に併せ持った種族である。獣由来の恵まれた身体能力からなる肉弾戦の強さは全種族でもずば抜けている。
そんな獣人族を束ねる主神こそが獣神ライカロープ。亜人族の主神の中で今尚ウルザからの侵攻に抗い続けている唯一の神である。
[ライカなら支配領域や勇者を失ったとしても女神ウルザに屈する事はありません。勇者や信者想いですが、聡明な神ですのでしっかりと『自爆』や『賠償者』の有用性を伝えれば協力してくれると思います]
虚実を織り混ぜた噂を流すだけで済むウルザ陣営に下った神とは異なり、協力者となる神には、大河に関する全能力を開示する必要がある。そのため協力者として選ぶにしては、厳しめな条件が定められている。
その条件を知った上でシーラは、獣神ライカロープならば協力者として信頼できると推薦してくれた。
「ライカロープ様なら信頼できる。立地的にも獣国『ベスティア』はここからそこまで遠くはないし良いと思う」
「確かに……勇者たちを撤退させた場所に即座に俺が送られたとなれば、ますます味方側の裏切りを疑う思考に誘導できそうですしね。流石はシーラ様です」
[ふぇっ!?]
シーラは大河から突然嫌がらせの主犯を擦り付けられそうになり驚きの声を上げる。シーラとしてはそこまで考えての推薦では無いため当然である。
「嫌がらせ思考をシーラ様に押し付けない」
「すみません。でも実際、ウルザ陣営の中の誰かが俺を使うって考えると、エルフの街『イグドラシル』と獣国『ベスティア』近郊は思い付きやすい場所な気もしますし」
「ウルザ陣営の支配領域は基本的に人族の生存圏だからな」
シーラを揶揄う気はありつつも、大河としては純粋に今回の作戦の立地としてはベストであると考えていた。
ウルザが犯した最大の失敗とは、大河を自身の支配領域ではなく、魔族や魔獣の生存圏に転生させたことである。そして、それを犯した際のウルザの思考回路は、『自爆』によって死ぬ際に自身の支配領域や勇者たちが巻き添えになる事を嫌っての事であった。
その思考はウルザの従神も同様に備わっている。少なくともウルザはそう考えるだろう。そうなると人族の生存圏を避け、亜人族の生存圏で『自爆』させたとなると、少なからずウルザの疑いの目は内側に向かう。
「なのでライカロープ様に協力していただけるならとてもありがたいです」
[はい! でしたら少し連絡を取ってみます]
神友であるライカロープが大河たちの審査を通過したことに嬉しそうな様子のシーラは、軽い足取りでライカロープに連絡を取るため離席した。
しばらくしてシーラは戻ってきた。しかし先ほどの晴れやかな雰囲気は鳴りを潜め、明らかにガッカリとした様子である。
そこから色々と察しはつくがライカロープからの返答を聞かないわけにはいかないので、代表してレイアが訊ねる。
「えーとシーラ様。ライカロープ様からの返答はどうでしたか?」
[はい。ライカ自身は協力したいけど、勇者や信者が納得しないから難しいと]
「納得ですか。『自爆』や『賠償者』の仕組みでしたらしっかりと説明すれば理解してくださるのでは? もしライカロープ様が説明できないのであれば私が直接行くことも……」
確かに『自爆』や『賠償者』というデメリットスキルでウルザを追い詰めるられるなんて言われても直ぐには信じられないだろう、とレイアは考え、それならば今までのように自分が直接説得に向かおうとする。
しかし、ライカロープが納得しないと言った部分はそこではなかった。シーラは小さく首を振り言葉に詰まりながら説明する。
[……先ほどまで女神ウルザの勇者や信者たちに侵攻をされていた獣人族たちに、ウルザの勇者であるタイガに全てを任せたような作戦を受け入れさせるのは難しいって]
「なるほど……それは、盲点でしたね」
普通の勇者は誰の勇者かで、敵味方を判断するのだという当たり前の事実を失念していた大河は、シーラから伝えられた断りの内容を聞いて思わず唸ってしまうのであった。




