信者拡大スキーム
『リュートの遺跡』の最奥にシーラの領域を設置した大河たちは、早速モンスターたちをシーラの信者にするという大河の思い付きを実行してみることにした。
ただこの場にいる4人の内、2人は他所属の勇者である。そして流石に主神であるシーラが自らモンスターの元に行き勧誘活動をする訳にはいかない。そのため、レイアが勧誘役を務めることとなった。
「勧誘してきた。ついでに魔力溜まりの調節もしてきたから直ぐに次のモンスターが発生する」
「ありがとうございます。流石はレイアさん、何でもできるんですね!」
「別に……普通」
レイアは、魔法的な事に疎い大河には説明されても理解できなかった、テイム的な手法を用いてモンスターをシーラの信者とした。
それだけに留まらず魔境からモンスターが発生する原因である魔力溜まりの調節までこなしてきたと言うのだ。
レイアが優れていることは知っているつもりであるが、まだまだ大河には見せていない才能がある様子であった。
そんな大河の素直な称賛にレイアが照れ隠しをしていると、シーラが大きな声を上げる。
[あ、信者が増えました。えーと……先程、誕生したモンスターさんたちが信者になってくれていますね]
「おお!」
どうやら新たに自然発生したモンスターが無事信者となったようである。
これにより、今後『リュートの遺跡』内で生まれてくるモンスターたちを芋づる式に信者にしていくという事が可能である事が実証された。
「やりましたねシーラ様!」
[はい! ありがとうございますタイガさん]
新たな信者拡大スキームの誕生にシーラと大河は喜ぶ。その隣でレイアとイージスは詳しい話し合いをしていた。
「今、信者化したのは……スライム。やっぱりスライムは早い」
「……魔獣などに近い知能を持つモンスターよりも、スライムみたいなモンスターの方が環境要因での信者化が早いのか?」
「そうみたい。打算的な思考が無いからかな?」
「……まあ、そう考えると人族も、成熟するよりも幼児期の方が簡単に信者になるからな」
なんとなくスライムのようなモンスターに信者という概念自体が理解できないため、テイムなどの直接的な方法で信者化させるなら兎も角、周りの影響によっての信者化は難しそうだと思っていた一同。しかしそれは違っていた。
むしろ色々と思考を巡らせる存在よりも、原始的な思考や感情しか持ち合わせていない存在の方が、余計な思考のプロセスが無い分信者化は早く進行するようであった。
新たな知見を得た二人であったが、そんな二人の話にひとしきり喜び終わった大河が加わってくる。
「……そこら辺の信者化の仕組みを使えば、ちょっとした嫌がらせならできそうですよね」
「……タイガはすぐ思考がそっちに流れる」
「流石に今はやりませんよ。目の行き届かない味方を増やしても無意味どころか害にしかなりませんからね」
「貴方が言うと説得力が違うな」
主神の足を引っ張る事に関しては右に出る者がいない大河の言葉を某女神が聞けば怒り狂いそうであるが、それ故に言葉には重みがあった。
この信者拡大スキームを応用すれば至る所にシーラの信者を誕生させる事は出来るだろう。しかし制御が効かない味方が増えた所でリスクしか生み出さないのである。
「それに、次にやろうと思っている嫌がらせはもう決まってますから」
「……流石だね、本当に」
「ありがとうございます」
今はやらないという言葉で油断していたレイアたちは、既に次の嫌がらせ案が決定していた事に唖然としてしまうのであった。




