魔獣とモンスター
無事イージスの勧誘に成功した大河たちは、早速『リュートの遺跡』にシーラの領域を設置する事にした。
「そういえばここって魔境だったと思うけど、魔獣やモンスターの気配がしない?」
「ここをアマタ様の領域とした際にモンスターは片付けた。魔獣たちも私がここを守っているのに、のこのことやってくる事も無いから、ここら辺ではもう魔獣たちは見かけないな」
「なるほど。じゃあ自然発生的なモンスター以外はここにはいないんだ。それは助かる」
作り手の魔力や建てられた土地の魔力などによって魔境化する建造物が存在する。『リュートの遺跡』もその1つである。
魔境化すると建造物自体が魔力を保有するようになる。そして、その魔力によりモンスターたちが自然発生し、魔力に惹き寄せられた魔獣が住み着くようになる。
ただ現在それらに関しては既にイージスが掃討済みであった。
「魔獣がいないと何で助かるんですか?」
「魔獣は魔神の信者の場合が多いから。今の状況でタイガの情報を魔神に握られるのは避けたい」
「なるほど、そういうこと……あれ、主神って勇者だけではなく信者にも干渉できるんでしたっけ?」
大河たちは魔神の下に行く気は無いが、大河の噂を聞き付けた魔神が大河を手に入れようとする可能性はある。その際に、大河たちが『リュートの遺跡』を拠点としているという情報を握られるのはリスクである。
とそこまでレイアの言うことを咀嚼していた大河であったが、ふと疑問が沸く。主神が干渉できるのは勇者だけではないかと。
「……普通の神は信者の視覚までは共有できない。けど魔神は別。というか魔神の筆頭勇者が特殊」
「特殊ですか?」
「うん。魔神の筆頭勇者、『魔王』は神々が自身の勇者にやっているような事を自身の配下にも行えるの」
「……神々が行っていることというと、ポイントを使って強化したりもですか?」
「うん」
勇者が主神の代行ができる。このメリットは計り知れない。大河の嫌がらせが成立しているのもシーラが地上にいるためである事からも分かる通り、状況に応じて主神のサポートが受けられる利点は凄まじいものがある。
しかし、主神が滅ぼされれば終わりの『神々の聖戦』で『神域』という絶対領域を放棄する神はいない。
しかし勇者がそれ役割をこなせるのであれば、ノーリスクで恩恵だけを受け取る事ができるのだ。
「それは凄いですね。……流石に精々百程度の勇者と違っては配下となると全部を見きれないとは思いますが……これまで常駐していた魔獣たちが一掃されたら目立ちますからね。万が一はありますね」
「そう。だからイージスを褒めた」
「褒めた? まあ、魔獣を警戒するのは聖戦の基本だからな」
「なるほど……モンスターは平気なんですか?」
「モンスターは大丈夫。テイムされたり誰かの魔力から生まれた場合なんかを除けば、基本的にモンスターは誰の信者でもない」
「魔力から生まれるモンスターと異なり、魔獣は生物だからな。言うなれば親が魔神陣営だからその子も魔神陣営に入るって認識だな」
確かに転生した瞬間に主神が決まる勇者と異なり、生まれた瞬間から誰かの信者である訳はない。親や周囲の者たちの影響によって徐々に信者となっていくのは、魔獣も同様のようだ。
魔獣とモンスターの違いを曖昧なまま認識していた大河であったが、レイアとイージスから教わり理解する。それと同時に話を聞いていて1つ思い付いた事があった。
「……と言うことは『リュートの遺跡』内のモンスターをシーラ様の信者にすれば、今後生まれてくるモンスターたちも先輩モンスターたちの影響でシーラ様の信者となるんですかね?」
「……どうだろ?」
「考えた事も無いが……理論上は可能なのか?」
「情勢が動くまでは俺はここで待機ですし、やってみてもいいかもしれませんね」
大河は魔獣が環境要因で信者となるならば、モンスターをシーラの信者とする事も可能なのではないかと考えた。そのため折角、新しい領域に引っ越すのであれば、これを機に信者不足というシーラの唯一と言ってもよい欠点を解消しようと目論むのであった。




