デメリットスキルの活用
イージスを仲間に引き入れる事に成功した大河は胸を撫で下ろしていた。
「いやー、よかったです。勧誘が成功したこともですが、しっかりと『賠償者』が発動してくれて」
「そうだね。蘇生できて良かった。スキルのレベルは一部戻らなかったけど」
これまでの作戦もそうであったが、今回もかなり不確定要素の多い作戦であった。現に本来ならば完全に被害回復させるつもりが、一部のスキルはレベルが下がっていたりなどしている。
そのため肝心のイージスの蘇生と勧誘は上手くいったことに大河は安堵しているのであった。
「そうですね。レイアさんが体力を削っていたからなのか、俺も『自爆』で死んでるからなのか……なんにしろ『賠償者』の検証はもう少しした方が良いですね」
「そうだね」
大河の想定では『賠償者』による被害回復は完全に行われる筈であったが、レイアがギリギリまで体力を削っていたり、イージスを死亡させる攻撃で大河自身も死亡していたりなどの理由により過失相殺がなされた可能性はある。
『賠償者』は今回の作戦のために獲得したスキルではあるが、今後活用していくためにも検証は必要であろう。
「……それにしても『賠償者』なんてスキルがあるんだな。知らなかった」
「基本的に持ってても良いことは無いデメリットスキルですからね……」
「相手にも賠償させられるなら兎も角、一方的に賠償するだけのスキル。なんのためにあるのか不明」
「そうだな」
「……まあ呪いとかと同じで敵対関係の勇者に付与して行動を縛る事はできますね。それをやることで得られるメリットと釣り合っているかは微妙ですが」
基本的に自身の勇者にデメリットスキルを授けるような愚かな神はいない。そのためデメリットスキルは他神の勇者を捕縛した際などに付与する事になる。
しかし他神の勇者にスキルを授けるためには、支配領域内の祭壇などの限られた空間までその者を連れて来なければならないなど手間もリスクも掛かる。その上でポイントを消費してスキルを授けるとなると、わざわざデメリットスキルを活用しようなどと思う者は少ないだろう。
自身の安全よりも主神への嫌がらせを優先させている大河と、他神の勇者を自身の領域内に招き入れ直接接触するシーラという異端な2人が揃ったからこそ活用できていると言える。
「他神に祭壇の位置が露呈するのは相当なリスク。ウルザとかルフェルみたいな大神はそんなリスク取らない」
「そうだな。それにポイントが乏しい神々はそんな事をやっている場合じゃないしな」
「呪いなど比較的他神の勇者に付与するのが容易なモノなら警戒する必要もあり周知されていますが、授けるのが大変なデメリットスキルは知られていないのだと思います」
逆に言えば、他神の勇者に付与する事が困難であるため、蘇生時にデメリットを引き継ぐ『弱き転生』や相手を撃破すると逆にポイントを失ってしまう『賠償者』など、デメリットスキルは、呪いなどよりもデメリット効果が著しいとも考えられる。
「確かに『賠償者』とかを簡単に付与できたら強い」
「はい。ただ俺の場合は味方の足を引っ張ってるだけですが、所有するユニークスキルとの組み合わせなどで、デメリットスキルを活用してくる勇者が現れないとも限らないので、知っておくのは良いかもしれませんね」
「そうだね。特にイージスが仲間になったとはいえ、戦力がギリギリな事に変わりはない。1手のミスで崩壊しかねない」
「ですね」
今は大河という主神に逆らう裏切り者勇者という異端な存在を使った初見殺しでウルザ側に対抗しているとはいえ、戦力差は凄まじいことに変わりはない。
デメリットスキルの活用が自分たちだけの特権だと勘違いすれば一瞬で足を掬われかねないだろう。
「掬われるのはウルザだけで十分です」
「そうだね。ウルザも、1人の勇者を捨てただけでこうなるとは思ってなかっただろうけど」
「……この様な考え方をする者など見たことがないからな。凄まじいな」
「イージスもそう思う?」
レイアやイージス。『神々の聖戦』を長年経験している2人すら、今まで考えてもいなかった方法でウルザを追い詰めながら、驕らず冷静に今後について考えている大河を見て、2人は感心するのであった。




