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呪癒

 レイアは通用しないと理解しつつも本気の斬撃をイージスに向かって放つ。案の定、それらは『無敵要塞』の完全防御によって防がれる。


「……何度試そうと、貴方の攻撃は通用しない!」

「……そうだね。でも『鈍痺の枷』」

「ぐっ!」


 攻撃を受け止めたイージスはそのままカウンターを放とうとする。しかし、その瞬間、レイアは行動阻害系スキルをイージスに向かって放つ。するとイージスの身体は一瞬動かなくなり、その間にレイアはイージスの元から離れてしまう。


「ダメージを伴わない拘束系の状態異常なら効果はあるね」

「……だからなんだ。消耗が激しい行動阻害系スキルを使ってまで、やるのは離脱だけ。今の隙に『無敵要塞』を貫く攻撃が繰り出せなかった時点で貴方に勝ちはない!」

 

 『無敵要塞』による完全防御はダメージの伴う攻撃を防ぐ効果であるため、麻痺や『鈍足の呪い』など、単に行動阻害させる類いの状態異常は通用するようである。

 とはいえイージスの言う通り、行動阻害が通用したからといって意味は薄い。こういったスキルは効果が絶大であるからこそ、効果時間は短く、消費コストなどは多く設定されている。

 行動を阻害した後の動きで大ダメージを与えられるなら兎も角、現状『無敵要塞』に成す術のないレイアでは戦闘時間を長引かせるだけの悪あがきでしかない。


「仮に貴方が完全防御を越えるほどの攻撃を隠し持っていたとしても、その一撃で私の体力を削れなければ、意味はない! だからもう撤退しろレイア!」


 しかも『無敵要塞』を除いたとしてもイージスは強力な勇者である。切り札によって『無敵要塞』を突破できたとしても、普通の防御系スキルなどを獲得しているイージスを一撃で葬り去るのは厳しい。そして一撃で仕留め切れなければ自動回復スキルなどでどんどんと回復されてしまう。

 つまり『無敵要塞』でてこずっているようでは、イージスを倒すことは叶わないのだ。


 そのためイージスとしては、レイアが自身に勝つことは不可能であると考えている。

 ただ『リュートの遺跡』を奪う敵対者として来たとはいえ、旧知の仲であるレイアをむざむざと殺したくは無いのであろう。祈るような声で撤退するように叫ぶ。

 しかし、依然としてレイアの表情は変わらない。


「……確かに私の攻撃でイージスの『無敵要塞』は突破できない。突破できたとして大したダメージは与えられない」

「なら!」

「でも正攻法じゃないなら可能。今のやり取りでおおよそ『無敵要塞』の仕様は確認できた。改宗を願い出るならここが最後」

「強がりを……くどい!」

「そっか。なら殺すね。『呪癒(カースヒール)』」


 追い詰められている側のレイアからの最後通告を強がりとしか思えなかったイージスは、再度突っぱねる。

 それを見届けたレイアは不敵な笑みから冷酷な表情に変え、スキルを放つ。


「『呪癒』? また呪いか?」

「そう。言うならばアンチヒール系のスキル」

「アンチ……ああ、不死族(アンデット)たちの、それなら『無敵要塞』の対象にっ……な」

「ならない」


 レイアからアンチヒールという言葉を聞き問題ないと判断した瞬間、イージスは自身にダメージが入った事に気がつき動揺する。


「なんで。前に『不死の治癒ヒールアンデット』を食らった時は……」

「『不死の治癒』とかと『呪癒』は根本的に違うスキルだから」

「どういう…ことだ!」

「『無敵要塞』の判定的に『不死の治療』はダメージを与える攻撃だけど、『呪癒』は回復ってこと」


 レイアは先程までの攻防で調べていた『無敵要塞』の仕様とは完全防御される対象の範囲についてであった。

 掛けるだけであれば呪いや状態異常も問題ない。ダメージの伴わない状態異常や呪いは効果まで発揮する。そして、イージスが自動回復スキルを保有していることから『無敵要塞』の判定に回復は含まれないなど、幾つかの事が判明した。

 とはいえ死者を回復し生者にはダメージを与える『不死の治癒』などは、『無敵要塞』の判定的には回復とは判定されないようであるが。


「『呪癒』は対象者に掛かる回復を反転しダメージを与える呪い。今はイージスの自動回復スキルを反転している」

「そんな事で…ダメージを受けるモノであれば『無敵要塞』の効果範囲内な……」

「仕様の理解は大切。どのタイミングで『無敵要塞』の完全防御の判定が来るのかを把握できたからこれをやったんだよ」

「なっ!」


 対象者に掛かる回復効果を反転する呪い『呪癒』であれば、攻撃ではなく回復として『無敵要塞』を突破できるのでは無いかと考えていたレイアである。

 ただ自動回復が『無敵要塞』の判定をすり抜けたとして、『呪癒』で反転された後にもう一度『無敵要塞』の判定が来るのかどうかという問題があった。

 そのため、『異常感染』やその他の状態異常系スキルなどを使いながら、完全防御がどのタイミングで判定をするのかについて念入りに確認していたのだ。


「自動回復の回復量がどの程度か知らないけど、あとどのくらいの命かな」

「…………ならその前に貴方を殺す!」

「強い言葉を放つのは、一度でも私に触れられてからにして!」


 圧倒的優位の立場から一気に危機的状況に追い込まれたイージスであるが、即座に頭を切り替え、レイアに向かって攻撃を開始するのであった。

 

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