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完全防御

 『リュートの遺跡』の入り口前には1人の女性が寂しそうに佇んでいた。彼女の名前はイージス。彼女は主神を失ったことで目的を失い、ただ主神との思い出が詰まったこの『リュートの遺跡』を手に入れようとする者たちを撃退するだけの日々を過ごす死兵と化していた。


「はぁ、いつまでもこんな事、続けるのだろうな……」


 イージスとしても、主神であった天神アマタが望んでいるとは思っていない。しかし、まんまと女神ウルザの罠に嵌まり、主神の領域に敵対者が攻め込んできているその場にいることすらできなかった後悔が彼女にこの行動をさせ続けていた。


 とはいえイージスが敵対者を撃退し続けた結果、噂が広まり最近ではここ『リュートの遺跡』にやって来る者は殆んどいなくなっている。最後にこの場所にやって来た者は、イージスの事など知らずただ『リュートの遺跡』を見に来た一般人であった。


「まあいい。今日もいつも通り、外周から……?」


 ただそんな状況でもイージスは警戒心を緩めない。今日もいつも通りのルーティンで周囲の警戒を続けていた。そのため、気配を殺して近付いてくる者の存在にいち早く察知する事ができた。


「……誰だ!」

「流石はイージス。直ぐにバレた」

「……レイア。貴方がここに来るとは」


 イージスに存在を感知された相手は姿を表す。その者をイージスは知っていた。イージスの主神がまだ存命なときに交流を多くしていた神の勇者レイアである。


 レイアたちのように前々から仲良くしていた陣営からも改宗の提案などでこの地を訪れる者たちはいた。しかしこれまでレイアがここにやって来た事はなかった。イージスは勝手にだがレイアが自分の心情を理解した上で尊重してくれていると思っていた。

 しかし、そんな彼女がついにこの場所にやって来てしまった。そのためイージスは落胆したような視線でレイアを睨む。


「……残念だ、本当に」

「状況が変わった。……聞いても無駄だろうけど、改宗して一緒に女神ウルザと戦う気はない?」 

「当然、ない」

「だよね。知ってた」


 レイアは腰に携えた剣を抜きつつイージスに勧誘を試みてみる。当然イージスはその勧誘を突っぱねる。


「改宗する気になったらいつでも言って。死ぬ直前までなら受け付ける」

「……レイア、貴方は私に勝てると思っているの?」

「勝てるとは思っていない。殺せると思っているだけ」

「そう、なら手加減はしない!」


 レイアの挑発にイージスが乗る形で戦いが始まる。

 イージスがレイアに向かって突撃する。その突撃を真正面から受け止める選択を取ったレイアは腰から抜いた剣を両手に持ち、迫り来るイージスに向かって全力で斬り付ける。


「『王華の剣』!」

「止められるとは思っていなかったが……やはり『無敵要塞』は貫けないな!」


 レイアの攻撃でイージスの突撃を止めることはできた。

 しかし、肝心なレイアの剣は何かに妨げられ、イージスの身体に触れることすらできなかった。


「相変わらず硬い」

「その程度の攻撃で『無敵要塞』は貫けない」


 『無敵要塞』は幾つかの効果が合わさっている複合型のユニークスキルなのだが、その中の1つに一定以下の攻撃の完全防御という効果が存在する。

 普通ならばこういったスキルが発動する閾値はもっと低く設定されている。しかし『無敵要塞』の場合、一定以下の範囲にレイアの全力の剣撃すら含んでしまうという壊れた性能をしているのである。


 とはいえ『無敵要塞』の壊れ具合は承知の上なレイアは特に動揺する事なく次の一手を打つ。


「ふむ。なら……『異常感染(パンデミック)』」

「剣は諦めて状態異常? ……毒や呪いでチマチマ削る気?」

「さあ?」


 『異常感染』、あらゆる状態異常に陥らせる凶悪なスキルであった。

 しかしイージスには通用しない。


「……前に言わなかったか? 『無敵要塞』の完全防御には毒や呪いの継続ダメージも含まれると」


 通常攻撃で倒せないならば状態異常などの搦め手で、というのは誰しもが考えると手段である。

 しかしその安易な策を『無敵要塞』は許さない。

 ダメージが無い攻撃であれば『無敵要塞』をすり抜けることが可能なようであり状態異常にする事自体はできた。しかしその状態異常によって負う筈の継続ダメージは『無敵要塞』の完全防御の発動範囲内のなってしまうため、それにより徐々に体力を削るような真似は不可能であった。


「そうだった?」

「ああ。剣も駄目、搦め手も駄目だったが……どうする? ここに二度と立ち入らないのなら旧知のよしみで逃がしてやるぞ?」

「……まだまだこれから」

「そうか、残念だ」


 普通の者であれば、ここら辺で『無敵要塞』の恐ろしさを再認識し、撤退を考え出すのだが、レイアはまだ不敵な笑みを崩していないのであった。

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