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死ぬ勇気など

 『ユグド』での大河の役割は終了した。勇者たちに『自爆』と『誘爆の呪い』のコンボの恐ろしさを植え付けられ、しかもウルザの元に還さず逃がす事ができた。

 そのため大河は転移を利用してシーラの元まで戻って来ていた。


「すみません。俺がシーラ様の勇者じゃ無いばかりに二度手間させてしまい」

[いえ、大丈夫ですよ。フィーにポイントを譲渡して転移を使って貰っただけですから。フィーも気にしないでっていってますので]

「エルフィード様にも感謝を伝えてください」


 自分の勇者であれば領域外にいようとも対象に取ることが可能であるため、転移なども出来るのだが、残念なことに大河はシーラの勇者では無い。そのため『ユグド』の持ち主であるエルフィードにお願いして転移をして貰ったのである。


[それにしても勇者たちを逃がして良かったのですか?]

「はい。レイアさんたちは既に『イグドラシル』に入られたのですよね? それなら問題ありません。ステータスがリセットされて移動速度も下がった彼らが『イグドラシル』に到着する頃には、ウルザ陣営の掃討は完了している筈です」

[ですが、ステータスリセットされたとはいえ、『イグドラシル』に勇者10人が攻め込めばかなりの被害に……いえ、タイガさんを攻めている訳では無いのですが]

 

 シーラがとても申し訳なさそうに質問をしてくる。彼女の疑問は当然である。『ユグド』から逃走した勇者たちは、当然『イグドラシル』を目指す事となる。

 ステータスがリセットされたことで諸々弱体化したとはいえ、勇者が勇者足らしめる要因であるユニークスキルは健在であり、そんな集団がレイアがいる『イグドラシル』に向かっていると聞かされれば不安にならない方がおかしいだろう。

 だがそれに関しても大河は解答を用意してある。


「今、ウルザの勇者たちは絶対に死ぬ訳にはいきません。ですのでウルザ陣営が掃討されたと分かれば退く筈です」

[え、なぜですか?]

「俺の罠に引っ掛かり勇者百人分の蘇生ポイントを消費した挙げ句、『ユグド』を滅ぼすという命令を達成できず逃走した彼らが、何もできないまま死亡した場合、ウルザが許すと思いますか?」

[それは……]

「実際、状況が状況なので許すかもしれませんが、自分が勇者の立場であった場合、ウルザが許してくれると考え死地に飛び込む勇気がありますか? 俺はありません」


 大河が思う勇者の一番厄介な点は、倒したとしてもポイントを消費することである程度の強化された状態で再出撃が可能なところである。しかも主神の支配領域であれば自由な場所に。

 『ユグド』にいた勇者とエルフたちが『イグドラシル』に避難中であり、『イグドラシル』ではレイアたちがウルザ陣営の者たちを討伐中の今なら尚更。


 そのため現在逃走中の勇者たちがすべき最善策はウルザを信じて自殺をし、強化を受けた状態で『イグドラシル』から程近い城塞都市『コンボ』あたりから再出撃することだろう。

 しかし大河には断言できる。ウルザの勇者にそんな事ができる者はいないと。


「ですのでレイアさんなら分かっていると思いますが、一応伝えておいて下さい。勇者たちが『イグドラシル』に何もせず逃走を選択した場合は追撃しないようにと。しばらくの間は死を恐れた勇者っていうボーナス状態を解除するのも惜しいので」

[はい、分かりました!]


 そんな大河の説明に納得してくれたシーラは、レイアに神託を送りに行ってくれる。

 すると、先程から大河とシーラの会話を遠巻きに見ていた者たちが大河に近づいてくる。彼らはエルフィードの元勇者たちであった。


「……タイガ様、この度はエルフィード様をお助けいただきありがとうございます。なんとお礼を申し上げればよろしいか」

「いえ、皆さんもここまでシーラ様を守っていてくださりありがとうございます」 


 もっと早い段階で大河やレイアが今回の件に関与されているとバレた場合、手薄のシーラの元に戦力が送られる可能性もあったため、投獄によりボロボロの身体に鞭を打って『コンボ』からここまで来てくれていたのだ。

 

「そして申し訳ありませんが、皆さんにはここからのもう少し働いてもらうことになりますが、よろしいですか?」

「勿論です。何でもお申し付けください!」


 そんな状態の者たちに更に仕事を頼むのは気が引ける大河だが、ここからの作戦にはエルフィードの勇者として名が広まっている彼らの力が必要である。

 幸いは彼らはやる気に満ち溢れていたため、大河はこれからの作戦の詳細を伝えるのであった。

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