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ゴミのように捨てられた先で

 不意の事故でこの世を去り、女神の手によって勇者として転生を果たした織上大河は現在、魔獣たちがひしめく森を逃げ惑っていた。

 勇者特典として授かったスキル『自爆』が女神のお気に召さなかった事で、大河は危険な魔獣が住み着くこの森にゴミのように捨てられたのだ。

 

「女神、てかあのくそ女! マジでふざけんなよ!」

 

 大河の脳裏には未だに女神の蔑む視線がこびりついていた。そのため女神に悪態をつきながら魔獣との鬼ごっこを続けていた。

 

「はぁ、はぁ。こんな最悪の状態だってのに向こうの世界よりも身体能力が上がってるのがムカつく」


 転生する前、つまり日本で普通に高校生していた頃の大河は得に運動に優れた生徒ではなく、授業の長距離走でへとへとになっていた程度の体力しかなく、どう足掻いても森の中で走り回り続ける事などできなかった。

 しかし転生して勇者となった事で多少なりとも身体能力が向上したようであり、なんとか逃走を続けられていた。


 であれば向上した身体能力で魔獣たちを撃退したいところなのだが、武道の経験もない一般高校生には襲い掛かってくる魔獣の相手は流石に荷が重い。

 せめてまともなスキルがあれば立ち向かう勇気も沸いてくるが、唯一のスキルが『自爆』では立ち向かうのは自殺行為と変わらない。

 

「とはいえ贅沢も言ってられないな。体力が尽きる前になんとか森を抜け出したい。まずはそれからだ!」


 そのためどうにか無事この森から脱出することを切実に願いつつ大河は足を動かすのであった。



 どれだけ走っただろうか。

 森の中の適した走り方など知らない大河はただ魔獣の鳴き声が聞こえない方、聞こえない方へ移動してきた。そのため今、森の外へ向かっているのか奥に向かっているのかも不明であった。

 しかし進めば進むほど追い掛けてくる魔獣たちの数が減っていく。


「…ふぅ。こっちの方向に行けば魔獣が追ってこなくなるな。よく分からないがありがたいことだ」


 それを大河は呑気に幸運だと喜んでいた。いきなり危険な森に捨てられ命懸けの追い駆けっこを繰り広げていた彼には、なぜ魔獣たちが此方の方向に進めば追ってこなくなるかという理由を深く考えるほど頭が回らない。


「魔獣が追って来る前に先を進むか、休憩するかだけど……うん?」


 そんな彼がこれからについて考えていると、魔獣の鳴き声ではない誰かの話し声のような音が聞こえた気がした。


「……すが、……者な……しょう…」

「人の声だ! こんな森に人の声がする!」


 そのため大河は全神経を聴覚に集中させる。すると微かにだが、人が会話している声が聞こえてくる。

 この森に自分以外の人がいる。その事実に歓喜した大河は衝動的にその声がする方向に走り出す。

 

 声の主は直ぐに見つかった。その者は大河と同い年か少し年上くらいの見た目をした、こんな危険な森にいるには場違いな女性であった。

 大河が女性に声を掛けようとするとが、彼女の方も大河の接近に気が付いていたのかそれよりも先に声を掛けてくる。


「貴方、勇者?」

「え? なんで…」


 予想外の問い掛けに大河は驚く。しかしその大河の反応を見た女性は1人で納得し出す。


「その反応を見るに転生初回。それで転生先がここ? 初期スキルが優秀?」


 そして1人考察を進める女性の大河を見る目はどんどん怪しいものを見る目になっていってしまう。

 折角会えた自分以外の人に怪しまれては堪らないと大河は必死になって弁明する。


「ち、違います! 俺、スキルが外れだからって捨てられるようにここに」

「……そんな勇者を捨て駒扱い? 怪しい」

「本当です! 信じてください」

「……なら、貴方の主神を教えて」

「しゅじ…主神ですか? あ、えーと、俺を転生させた女神なら確かウルザって名乗ってました!」

「女神ウルザ!?」


 大河がウルザという名前を出した瞬間、女性の目が見開かれる。女性もあの女神の事を知っている様子であった。


「なるほど。あの女神なら勇者を捨て駒扱いしてても納得」

「信じてくれましたか!」

「信じる」

「よかった!」 


 女性の怪しいものを見る目が解消された事に大河は安堵する。しかし、それは少し早かった。


「でも、だからこそ殺すね」

「え、ちょっと」

「あの女神の勇者を生かしておく事はできないから。ごめん」


 そう言い放った女性は腰に携えていた剣を抜き、その剣を勇者となり向上した大河の動体視力ですら捉えられない程の速度で振り下ろすのであった。

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